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素朴でピュアな自転車愛が宿る空間「じてんしゃ雑貨店 千輪(ちりん)」

昔なつかしい街並みの墨田区・向島で、約90年もの歴史を重ねてきた「鳩の街通り商店街」。その中ほどに店を構える「じてんしゃ雑貨店 千輪」にはいつも、自転車への愛情を胸に日々目の前の一台一台に向き合う、とある人の姿があります。

公開日 2017年9月18日

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曳舟駅
ライター
good mornings
素朴でピュアな自転車愛が宿る空間「じてんしゃ雑貨店 千輪(ちりん)」
店の軒下の木の看板、それにいろんな柄のサドルカバーがぶらり吊り下げられている様子が、ちょっとした昭和感。お店全体のDIY感から商品のラインナップに至るまで「じてんしゃ雑貨 千輪(ちりん)」には、心温まるものを感じずにはいられません。
「自転車店」ではなく「じてんしゃ雑貨店」。また「千輪」と書いて「ちりん」と読ませるあたり、ママチャリのベル音が今にも聞こえてきそうな実にシャレたネーミングです。
可愛いベルのコレクションやハンドルカバーその他、自転車シーンを彩る部品や雑貨、ヘルメット、小物、さらには絵本に至るまで、「自転車的なモノ」がいっぱい並んだ店内。

でも不思議なことに自転車の本体は(売り物としては)ないのです。
 
「千輪は、自転車を売らないお店なんです」と笑顔で話す店主の長谷川勝之(かつゆき)さん。
その一見不思議な方針には、これまでの彼の歩みが深く関わっています。

小さい頃から大の自転車好き。大学時代には大阪から石川県の実家までママチャリで帰省したこともあるほど。「その時はもうずっと立ち漕ぎで(笑)。でも、細い道や好きなところを漕ぎ進めて走るのが楽しかったです」。
大学卒業後、当初は別業界の企業に入社するも、3ヶ月後には大手の自転車販売会社に転職。自転車を販売する毎日がとても楽しく充実していたといいます。

そしてあるとき、会社が中国に進出することになってその準備で現地へ赴いた時のこと、長谷川さんは気持ちを大きく動かされる発見をします。

「中国の自転車工場では、多くの人の手作業を経て作られた自転車を、大切に貯めたお金で購入し、古くなっても大切に乗る、そういう文化が残っているのを目の当たりにしたんです」。
「振り返って日本では、ほとんどの場合は、安価だし気軽に買い替えちゃいますよね。新車を売れば売るほど、それと引き換えに、機能的にはまだまだ十分使える車が廃車扱いとしてバックヤードに山積みになっていく、その光景にとても心が痛む思いがしました」。

エコな乗り物として自転車を見直す動きが既に起きていた一方で、「世界の発展途上国に回されてそこでまた使われるのだから、自分が廃車にすることには特に問題がない」という思考で、短期間で使い捨ててしまうのもやはり違和感があったといいます。
「日本では、ちょっとでも自転車の調子が悪くなると、それをきっかけにもう使わなくなってしまうなんて、もったいない…そんな思いから、あえて新車を売らずに、手元にある一台を修理・整備してあげることで長く乗ってもらう、あるいはかわいい小物でカスタマイズした『自分だけの一台』に愛着を持ってもらう、そんなお店を開こうと決心したんです」。

自転車安全整備士と自転車組立整備士の資格を持ち、どんな種類の自転車でも整備・修理できる長谷川さん。出店場所として商店街を選んだのは、世代やライフスタイルを超えてよりたくさんの人が普段使いするシティサイクルに対応するためでした。
「墨田区は地形が平坦で、自転車人口も多い。この商店街には長く自転車屋さんがなかったので、地域のあらゆる人に役立つ存在になれるのではと思いました」。

「空気が抜けちゃいました」とか「後でパンク修理をお願い!」とか「スポークが折れたけど直りますか?」等々、多くの客が来店する日々。空気入れ\0、ブレーキ調整\300という料金体系は、商売上の利益を多少犠牲にしてでも、もっと自転車を大切にする世の中になってほしいという強い思いがあってこそ。
「修理のお客様は少しずつ増えていますが、大きく利益が出る商売ではありません。仮に経営が厳しくなっても、他の仕事で生活をしながら、営業日を減らしてでも千輪は続けていくつもりです」。そう語る長谷川さんからは、少年のような純粋さと自転車への愛情、そして強い使命感が感じられます。
今手元にあるその一台を、もっとファッショナブルに、もっとキュートに。調子が悪くなったらメンテに持って行って、末長く乗り続ける。楽しくて愛情のこもった自転車生活を始めたくなる何かが、千輪にはあります。

(文:牧野雅枝)
(撮影:大塚秀樹)

千輪(chirin)

住所
東京都墨田区向島5-50-3 鈴木荘1F
定休日
火曜日
最終更新日:2017.9.14
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。

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