ちくわ。 おでかけ情報

良質な画材を100年以上提供し続ける、日本画家のパートナーのような存在。

good mornings

公開日 2018年2月17日

ワテラスをはじめ、開発が進む神田淡路町2丁目エリア。靖国通りと外堀通りの交差点すぐ近くに、色とりどりの瓶が壁を覆い尽くしているお店があります。それは、明治17年創業、日本画の画材を扱って100年以上になる「得應軒本店」。瓶には日本画専用の絵具が保管され、その種類は1000種類以上。あまりの多さに並び切らないほどです。四代目の宮内隆弘さんと息子さんで五代目の忠志さんにお店の歴史や日本画の知られざる世界について、伺いました。

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元々は江戸末期に、初代が大阪で筆屋を興したのが始まりでした。「場所が遊郭のそばだったらしく、もっと環境のよい場所で子どもを育てたいと、神田に移ってきたと聞いています」と、四代目の隆弘さん。
当時は中国から輸入していましたが、明治2年生まれの2代目が、日本の材料でもっと安い筆を、と国産に切り替えたそうです。その腕が称えられ、“動物の毛で筆を作り始めた人物の後身である”という意味の書が、店の正面に掲げられていました。関東大震災の時には、隆弘さんの祖父がこの書を丸めて持って逃げたほど代々大切に受け継がれているそうです。江戸、明治、大正が少し前の時代と錯覚してしまうほど、ここには歴史が着実に積み重ねられているのを感じました。
筆屋から描くための絹や和紙、そして絵具を扱う画材店となったのは、明治末期のこと。日本画家はもちろん、画家を志す学生や教室に通い始めた人などが来店しています。取材中、趣味で能面を作るという方が筆と絵具を買い求めに来ていました。

しかしなぜ、絵具が1,000種類以上もあるのでしょうか。「日本画用の絵具は、天然の鉱物を砕いた顔料で、にかわと混ぜて使い、固着させます。鉱物の粒子の大きさで色味が変わり、細かいものは薄く、荒いものは濃い色合いに。同色でも10段階のバリエーションあるので、数が必然的に多くなってしまうんです」と隆弘さん。ちなみにここで最も高価なのは、ラピスラズリ。5gで価格は1万円もします。
絵具には、このような天然の鉱物から作られるもののほかに、人工的に作られたものがあることなど詳しく教えて頂きました。「昔は銅山から鉱物が出ていて、群青は量が少ないから金よりも高いと言われたほど。砕いて絵具を作るのに手間もかかるから、昔はお抱え師しか天然のものを使うことができなかったんですよ」。
鉱物から作られた顔料を使う日本画は、まさに宝石で描かれた作品。日本人でありながら知らなかった日本画の世界に、どんどんと引き込まれていきました。
息子の忠志さんは、大学卒業と同時に店を手伝うようになったそうです。父隆弘さんが53歳の時に病に倒れたのがきっかけでした。「古いお店なので、潰したくないという思いは元々ありましたね。日本画を見るのは好きですが、描くのは苦手です(笑)。今でもお客さんの方が詳しいので、いろいろと教わりながら店に立っています」。と謙遜するものの、お父さんの説明に合わせていくつもの引き出しから適切な筆を選んでサッとお客さんに差し出す見事な連携プレーで、お店を切り盛りしています。
夫に頼まれて水墨画用の筆や墨を買いに山梨県から来たというお客さんも、「直接お話ができてよかったです」と納得の表情で帰っていきました。日本画に興味のある方、挑戦してみたい方はぜひ、得應軒を訪ねてみてはいかがでしょうか。

(文:久保田真理)
(撮影:石原敦志)

得應軒本店

住所
東京都千代田区神田淡路町2-1
電話番号
03-3251-0303
営業時間
9:30~18:30(土曜~18:00)
定休日
日曜・祝祭日
最終更新日:2018.3.6
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。