
名店が立ち並ぶ神田須田町に、2014年10月に誕生した「神田連雀亭」。神田の街に下町らしい活気を取り戻すべく「寄席を作ろう!」と立ち上がったのは、噺家の古今亭志ん輔さんだ。「このビルのオーナーが30年来の友人で、どうも夕方になると神田の街がさみしいと言うんです。ビジネス街として栄えたのはいいけれど、子供が走り回ったり、昔ながらの風景が無くなった。何か出来ないかと相談されてふっと閃いたのが、“二ツ目専門の寄席”だったんですよ」。

「神田って、まず響きがいいよねぇ」と志ん輔さん
「二ツ目」とは、噺家修業の過程で3段階目にあたるステージ。噺家は見習い、前座、二ツ目を経て、師匠と呼ばれる真打へ上がるというステップを踏むのだ。都内にはいくつかの寄席があるが、二ツ目が経験を積める場所は少ない。街ににぎわいを生み、若手噺家の鍛錬にもなる。そんな場として連雀亭は始まった。

実力派の柳家緑君(ろっくん)は「権助魚」を熱演。しなやかなおかみさん、とぼけた権助の演じ分けがお見事!

ビルの2階に上がると、一気に寄席の雰囲気が漂う。席は38席なので、高座までの距離がかなり近い。公演は1日3回。昼は¥500の「ワンコイン寄席」と4名の噺家が出演する「きゃたぴら寄席」、貸席のない日の夜は「日替り寄席」と、一日中なにか催し物がある。ところで、二ツ目ならではの落語の楽しみ方は?「噺家を育てること。二ツ目の頃から贔屓を見つけて成長を楽しむんです。逆に真打になると興味がなくなったりね(笑)。二ツ目は若くて気さくだから、落語初心者にも親しみやすいんじゃないかな。女性のお客さんも多いですよ」。

"連雀亭"の名前になぞらえて高座には雀の紋が
二ツ目といえどもプロの噺家。マクラと言われる世間話が終わり本題に入った途端、パッと噺家のスイッチが切り替わり、張りのある声と表情豊かな語りでたちまち観客を惹きつける。伝統話芸のすごさを肌で感じる体験だ。飲食物の持ち込みも出来るので、昼はここで「落語ランチ」、なんてのも、粋な楽しみ方かもしれない。

連雀亭が街全体を盛り上げる存在になるべく、志ん輔さんはさまざまなことを構想中。「いまご近所の食べ歩きの地図を作ってる。神田にはいい店がいっぱいあるから、もっと知ってほしいんです。来年からは子供たちに落語を教えたり、お祭りにももっと参加する予定。おかげ様で地域の人がずいぶん支えてくださってるんで、今度はお返しがしたい。ここが毎日満員になって、来てくれたお客さんが神田で遊んで帰ってくれたらうれしいね」。
A神田連雀亭
- 住所
- 東京都千代田区神田須田町1-17 加藤ビル2F
- 電話番号
- 070-6565-8563
- 営業時間
- [毎月1~ 20日]11:30 ~ 12:30、13:30 ~15:00 、19:00~ 20:30 [毎月21日~ 末日までの平日]11:30 ~ 12:30、13:30 ~15:00 ※土日祝は要問合せ
- 定休日
- 無休
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