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音楽とウイスキー。ゆるやかな時間。神田淡路町のバーを満たすのは、店主の「好きなもの」たち。

good mornings

公開日 2018年3月21日

夜は「ウイスキー屋」、昼は「カレー屋」と書かれた看板が出る。扉を開ければ心地のいい音楽が流れている。バー「三日酔」が醸し出す雰囲気は、どこまでもゆるやかだ。初めて訪れた人もなぜか落ち着く店内で、店主の武井さんに話を聞くと、その理由が見えてきた。

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その店名に思わずニヤリとしてしまう人は、無類のお酒好きだろうか。「三日酔」という名のバーは老舗も多い神田・淡路町にある。この店の店主、武井真次さんは、100年以上続いた金物店の息子としてこの町で育ち、高校卒業後の約9年、金物店で働いた。周辺の老舗との取引を主にし、食品以外を扱う品揃えのいいコンビニのような役割だったと振り返る。その店を閉めた後、2012年に始めたのがバー「三日酔」である。
「バーをやろうと意気込んでいたわけではなかったんです。でも、金物店は自分が始めた店じゃなかったので、もともとあまり好きじゃなかったんですよね(笑)。だから好きなことを形にしたらこの店になったという感じです。」
33歳の店主は飄々と語る。好きなものは音楽とウイスキー。だからバーになった。
音楽に目覚めたのは22、3歳の頃。意外にもそれまでは特定のアーティストを好んで聴いたり、熱狂することもなかった。きっかけはブルーハーツ、そこからジャンルを問わず音楽を聴くようになっていく中でブルースに出会った。「自己主張があるけれど、強すぎない、流し続けていても邪魔にならないところが好きですね。ブルースを歌う彼らは、歌いながら酒を飲んだりもしている。それがウイスキーだと知って興味を持ったんです。当時、同世代でウイスキーを飲むやつなんてほとんどいなかったですよ。ウイスキーも音楽も特に勉強したわけではなく、これはどんな音楽だろう、これはどんな味だろうと手を出しているうちに覚えていったというのが本当のところです。もっぱら家飲みだったし。」
店主はあくまでも、ゆるゆると語る。
「お酒にしろタバコにしろ、最初は皆、カッコつけから始まりますよね。初めて飲んだ時は美味しいと思わなかったはずなんです。でもいつからか美味いと思う時がくる。ウイスキーの良いところは酔い方です。ビールも日本酒も飲みますが、あっという間に酔って、あっという間に覚めちゃう気がしていて。それに比べるとウイスキーってゆるやかな感じがするんです。ゆっくり酔ってそれが持続する、一人でも飲めるお酒なんですよね。」
なるほど、ゆっくり酔って持続する……店名の由来はそこから来ているのだろう。改めて聞いてみると、
「実は屋号を決めなくちゃいけない期限の日、私が二日酔いだったんですよ。二日酔じゃああまりにもそのまんますぎるし、ウイスキーを出す店で横文字とか使うのも恥ずかしいので、じゃあ三日酔でいいかと(笑)。聞いた時にちょっと面白い名前がいいなあと思って……」
店を改築し、バーを始めることに決めたときの家族のリアクションも「いいんじゃない」と、ゆるやかだったという。しかし、武井店主の頭の中にある店のイメージだけははっきりしていたそうだ。幼い頃から絵を描いたり、物語を考えたりするのが好きだったといい、改築の際には、店舗イメージを自ら描き設計士に提出したという。ウイスキーの棚、レコードの棚は店の顔だ。棚の高さには徹底的にこだわった。中央には、今かけているレコードのLPジャケットをはめ込む飾り棚も造作してもらった。6席のバーカウンターはゆったりとした造りで、腰を掛けても窮屈すぎないのも店主のこだわりといえそうだ。こだわりといえば、客席側の腰壁には波状の板壁を採用しているが、これは金物店の時代に使用していたものを再利用したという。
バー「三日酔」の昼の顔も紹介しよう。名物はカレーライスだ。もともと夜のみの営業だったが、昼の時間も有効に使おうと、店主自らカレーを作って提供している。スタート時は、インド風でも欧風でもなく、「家庭や給食で出るようなカレー」だったそう。今ではスパイスにもこだわり、名物の「三日酔カレー」は見た目こそ家庭のカレーのようだが、味はなかなかスパイシーでクセになる。そのほかにも、「牛すじカレー」や「キーマカレー」、「クリーミーカレー」などメニューを増やしてきた。一番人気は店名がついた「三日酔カレー」、二種類の味が楽しめる「あいがけカレー」や「ハヤシライス」のファンも多い。
ランチタイムは、ビジネスマンのみならず年齢も性別もさまざまな客が訪れる。夜は男性客が多いというが、最近は20代の若者の来店も少なくない。現在33歳の店主に、自分より年下の来客が増えるのは嬉しいかと尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。
「嬉しいですが、実はちょっと緊張します。ウイスキーを飲むのが初めてだという人もいるので。」
いきなり美味しさがわかるものでもないだろうことは店主自ら体験済みだが、できれば嫌いになって欲しくはないという思いに、オープンから5年が経過したこの店とウイスキーへの愛があふれている。
取材の間も店内には、レコードプレイヤーから心地のよい音楽が程よいボリュームで流れていた。最近はギリアン・ウェルチやイーリン・ジュエルといったシンガーの音楽をよくかけているそう。店主曰く、「根っこにカントリーがある音楽が好きですね。田舎の音楽って風通しがいいというか、頑張って行こうぜ感がない、ゆるい感じがいいでしょ。」
最後はやっぱり、ゆるゆると語ってくれた。
(文:栗原晶子)
(撮影:山崎瑠惟)

三日酔

住所
東京都千代田区神田淡路町2-4
電話番号
03-3525-4450
営業時間
[月~金] 11:30~14:00(L.O.) 19:00~23:00(L.O.) [土] 19:00~23:00(L.O.)
定休日
日曜日・祝日
最終更新日:2017.7.14
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。

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