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売っているのは一週間に一冊だけ! 銀座で本と展示に込められた作家の本気に触れる「森岡書店」

銀座1丁目 新富町駅に近いエリアに、ひっそりと、しかし存在感を放つレトロなビルにある「森岡書店」は、一冊の本だけを売る本屋。なぜ一冊なのか?店を訪れるお客さんに持ち帰ってほしいものは? 書店員の釜屋さんに話を聞いた。

公開日 2018年2月13日

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ライター
good mornings
「森岡書店」は東京都選定歴史的建造物にも選ばれている鈴木ビルの1階にある。数ある銀座の近代建築の中でも、スクラッチタイルや丸窓、円柱のレリーフなど、デザイン性に富んだこのビルは、建築を学ぶ人や、海外の人からも注目を集めている。店内は、カウンターとして利用している使い込まれた什器とシンプルなテーブルがあるだけの約5坪のシンプルな空間だ。ここで扱うのは、一週間に一冊の本だけ。ある週は写真集、次の週はアート作品集、別の週には絵本というように。特徴的なのは、その一冊とともに、関連する作品も販売するということ。なぜ、一冊なのか。書店員の釜屋憲彦さんに聞いた。
「もともと森岡書店は写真集や現代アートなどの古書を専門的に扱う書店として茅場町に2015年まで約10年間オープンしていました。ある時期から、展示スペースを併設するようになりました。書店兼ギャラリーとして本の出版記念展などを行い、会期中は、その展示を見るために来店者が押しかけ、お祭りのような状況になる。それならば、作品や関連本が売れて毎週こうした企画を展開するほうが、作家もお客様も喜ぶのではないか、そんな風に店主が思ったのがきっかけです」
こうした意図ならば狭いスペースでも出来ると考えた店主の森岡督行氏は、銀座の物件をマメに探し続け、鈴木ビルの空き情報を得てここでの出店を決めたという。このビルはかつて「NIPPON」という海外向けグラフ誌を制作していた日本工房(にっぽんこうぼう)が入居していたというのも大きな理由の一つだったという。
では、なぜ一冊の本を売る期間は一週間なのか。
「開催期間を花見と捉えたと森岡は言います。桜の開花はだいたい一週間くらい楽しめますよね。つまりここで毎週花見をするという感覚です。一週間しかないからここでの出会いは貴重な時間と空間になるし、楽しみながら開催して、じゃあ来年またやりましょう!となる。スゴイ考え方ですよね」
店主を素直な言葉でスゴイと言える書店員 釜屋さんは、もともと本やアートに興味を持つ若者だった。「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」にボランティアで参加したことがきっかけで、山形出身の店主 森岡氏との縁がつながったのだという。
これまでさまざまな本を扱ってきた中で、特に印象に残っている作品について聞いてみた。
一冊に絞るのは難しいと少し言いにくそうにしていたのは、どの作品にも作家の思いが詰まっていることを、一番近い場所にいて肌で感じてきたからだろう。
「ある国をテーマにした写真集を扱っていた時のことは印象深いですね。期間中は、毎晩トークイベントが開催されました。写真家の方の話がとにかくおもしろくて、聞いた人たちは、写真集を買わずにはいられなくなった。体験や記憶を持ち帰りたくなるんですよね」
持ち帰ってそれをまた見返して追体験することが出来るという、これこそが森岡書店が一冊を売る本屋である理由で、魅力なのだろう。作者の顔が見える本や作品に触れられるのは、ネットで簡単に本を買うことが当たり前になった今だからこそ、価値があるのだと釜屋さんは続ける。

「あまり検索をせずに訪れるのも小店の一つの楽しみ方だと思います。まっさらな気持ちで一冊の本、作品と向き合えば、きっと新しい時間が広がると思います。何かやってるから森岡書店に行ってみようという感じで寄っていただくと、作家さんの世界にぐっと近づけるのではないでしょうか」
実際、取材に訪れた日は、カラフルな装丁やポップなアートが目を引く展示が行われていたが、この書店は扱う本・作品によってサイズや展示方法、色合いも全く違う空間になるという。これから世に出て行くであろう挑戦的な作品に出会えることがあるかもしれない。

銀座という土地柄か、一部のアート系学生以外、比較的若者の来店は少ないそうだが、作家と交流できる機会も多い場なので、若者にこそおすすめだ。ギャラリーとなると作品を購入しなくてはいけないかもという思い込みがあるのかもしれないが、そうした心配は無用だ。そう、ここは書店なのだから。
学生時代から「生物がどのような世界を体験しているか」に興味があるという釜屋さん。ここ森岡書店でも実は「アーティストの目線」をいきものの目線の一つと捉え、刺激を受けまくっているそうだ。常にアンテナを張り巡らし、人や場所をつなぐ天才である 店主 森岡氏の言動を間近で見ながら、いつかは京都で新しい空間や場を作りたいという野望もこっそり語ってくれた。

新しい体験と記憶を持ち帰ることのできる空間「森岡書店」なら、運命の一冊に出会えるかもしれない。

(文:栗原晶子)
(撮影:山崎瑠惟)

森岡書店 銀座店

住所
東京都中央区銀座1-28-15鈴木ビル1F
電話番号
03-3535-5020
最終更新日:2018.1.26
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※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。

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