東京に勤めるフランス人やその家族が多数居住し、フレンチ系のレストランも約40を数えるなど、神楽坂界隈は都内いちフランス文化が身近な街。その中核的な存在と言えるアンスティチュ・フランセ東京(旧東京日仏学院)は、神楽坂下の交差点を市ヶ谷方面に少し歩いた、閑静な坂道の途上にあります。

敷地内のやや急な坂道を登ると左手に姿をあらわす、そのアンスティチュの建物。白と水色の色づかいといい爽やかでスマートな印象ですが、実は二重らせん状の階段なんていうものもあったりと、なかなかユニークな面も備えた建築です。
正面左手にある深緑色が気になって近づくと、そこは鮮やかな原色づかいのカラーリングが目を引く、素敵な本屋さん。
正面左手にある深緑色が気になって近づくと、そこは鮮やかな原色づかいのカラーリングが目を引く、素敵な本屋さん。

この色合い、それに店名「RIVE GAUCHE(リヴ・ゴーシュ)」の書体といい、まるで60年代のゴダールの映画に出てきそうな外観。その素敵さに興奮のあまり、勝手に「東京都 パリ区」認定したくなります(笑)。
このお店はフランス語書籍を専門に取り扱うこと70年の欧明社が展開する、3店のうちのひとつ。メディアの撮影が行われることもしばしばという、ルックス的に一番よく知られた店舗です。
このお店はフランス語書籍を専門に取り扱うこと70年の欧明社が展開する、3店のうちのひとつ。メディアの撮影が行われることもしばしばという、ルックス的に一番よく知られた店舗です。

中に入ると、木造であたたかみの感じられる空間に、フランス語関連の本がずらり。経済誌、本場パリ発のファッション誌やファインアート誌などの雑誌類、また各種書籍類も豊富。フランス語学習者のための参考書類についても、英語学習本ほどのバリエーションは到底見込めない普通の書店とは一線を画す、充実のラインナップです。「こんなの、欲しかった!」と喜ぶ声が今にも聞こえてきそう。

そういった具合にして、合計すると6,000冊ほどにもなる品揃えの店内。ところどころで見栄えする表紙が目立つように立てかけられたディスプレイの仕方も、フランスの書店ではよく見られるスタイルです。
夢中になって本をあれこれ眺めている中、BGMとして聞こえてくるのはフランス語の国際放送「ラジオ・フランス・アンテルナショナル」のニュース番組。キャスターの落ち着いた語り口が心地よいです。
まるでシャワーを浴びるように、目から耳からすうっと入ってくる、フランス語のことばと文化の世界。
夢中になって本をあれこれ眺めている中、BGMとして聞こえてくるのはフランス語の国際放送「ラジオ・フランス・アンテルナショナル」のニュース番組。キャスターの落ち着いた語り口が心地よいです。
まるでシャワーを浴びるように、目から耳からすうっと入ってくる、フランス語のことばと文化の世界。


お店には、この界隈に住む在日フランス人、日仏カップルとその子ども、アンスティチュに通う人ほかフランス語学習者、また東京の中のパリを一目見ておこうとやってくる旅行者まで、いろいろな人が足を運びます。
語学留学の準備のかたわら、いまこのお店を手伝っている、宗近(むねちか)さんも、日々充実した思いでこの仕事に携わっているもよう。
語学留学の準備のかたわら、いまこのお店を手伝っている、宗近(むねちか)さんも、日々充実した思いでこの仕事に携わっているもよう。

「書籍管理カードも手書きだったり、アナログ的な要素をいろいろ残しているところが、親しみやすくて素敵だなと思います。書棚にある昔のスタッフの方が作ったPOPなんかも、愛情のこもったひと工夫があったりしますし」。聞くと社長自らもPOP作りに関わるなど、素敵な店づくりに余念がないようです。

POPだけでなく取り扱いアイテムにもこんなかわいいものが。パラパラめくって眺めるうちにパリの名所に自然と親しめそう。「ポップアップ系のものなど、フランスの出版社が作る絵本には、独特の創造性があると思いますね」。

店の入り口の手前にあるポストカードもまたフランスで作られたものばかり。現地らしいテイストとシンプルでわかりやすいメッセージが、素敵な店構えの店があると聞いてぶらりやってきた人にも好評です。

もとは戦後まもない1947年、モノがない状況下で西洋の知性にアクセスできる書物の数もまたごく限られていた中、文字通り「ヨーロッパ(欧)の明かりをともす」存在として船出した欧明社。
当初は、この施設(当時は「東京日仏学院」)で学ぶ生徒向けに、キヨスクのようなこぢんまりとしたスペースで関連書籍を販売していたことも。その後数十年の月日を経て、30年ほど前に現在のような外観/内観になり、その東京離れした佇まいは次第に多くの人に知られるところとなりました。
当初は、この施設(当時は「東京日仏学院」)で学ぶ生徒向けに、キヨスクのようなこぢんまりとしたスペースで関連書籍を販売していたことも。その後数十年の月日を経て、30年ほど前に現在のような外観/内観になり、その東京離れした佇まいは次第に多くの人に知られるところとなりました。

週末には、アンスティチュ内のレストランで結婚式を挙げたカップルが入り口そばのベンチで記念写真を撮ったりすることも。ここは、絵になる光景が日常の中でさりげなくふと現れる場所なのです。

ちなみにRIVE GAUCHEはパリの「左岸」のことで、セーヌ川が横切るパリの街の、川の南側にある文化的な地区がイメージされたネーミング。パリの都会的な文化がミニマムに詰まったこの空間を象徴する、とてもいい名前ですね。
目に入るものから、はてには吸う空気さえ(!)、その色々が素敵すぎて「英語もまだアレだけど、とりあえずフランス語も始めてみようかな。」とつい口走りたくなる、RIVE GAUCHEです。
目に入るものから、はてには吸う空気さえ(!)、その色々が素敵すぎて「英語もまだアレだけど、とりあえずフランス語も始めてみようかな。」とつい口走りたくなる、RIVE GAUCHEです。

(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)
(写真:小島沙緒理)
A欧明社 リヴ・ゴーシュ店
- 住所
- 東京都新宿区市ヶ谷船河原町15 アンスティチュ・フランセ東京内
- 電話番号
- 03-3267-1280
- 営業時間
- 【月曜】12:00~13:30、14:30~19:30 【火曜-金曜】10:30~13:30、14:30~19:30 【土曜】 10:30~18:00 【日曜】 12:00~18:00
- 定休日
- 祝祭日
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