巷では糖質OFFダイエットブーム。ご飯の摂取量を減らすことばかり強調されて、ご飯好きが寂しい思いを噛み締めている今日この頃ですが、日本食の基本はやっぱりお米。ふっくら炊きたてご飯の本当の美味しさを味わいたいときに、“to go”リストのトップに挙げたいお店を見つけました。


そのお店は、神楽坂の「むらむすび」。代表の佐藤 喬(さとう たかし)さんは米どころ秋田県出身で、子供の頃からおいしい「あきたこまち」を食べて育った…と自負していたのに、数年前、県南部の東成瀬村産「あきたこまち」のあまりの美味しさに衝撃を受けたといいます。

「それまで食べていた米はなんだったのか…とさえ思いました。それで、あまり知られていない村にこんなにすごい産物があることや、その美味しさをひとりでも多くの人に…」と、2017年4月にお店をオープンしました。

「村のお米の美味しさをストレートに味わっていただけるおむすびをメインにお出ししたかったこと、他の村の産物や食材・料理も発掘して提供・販売することで村と村を結んで発信できたら…そんな思いを店名に込めています」。

というわけで、佐藤さんのこの日のオススメ「夜の村役場定食」の中から「副村長定食」をチョイス。メニューには食材やお酒の産出村名が記されていて、待っている間に全く知らなかった村々の風景や暮らしに思いを馳せたり、知っている村や食材の話題で盛り上がったり…。


小ぶりの羽釜で炊き上げたホカホカのご飯に、東成瀬村民の方の自家製味噌と新潟県粟島浦村のわかめの味噌汁。メインディッシュは東成瀬村の赤ベコのローストビーフにたっぷりの生野菜。小鉢2品も東成瀬村で普通に食べられている、じんわり懐かしい味の郷土料理。目でも舌でもハートでも、しみじみ日本の豊かさと奥深さを実感する味わいです。

佐藤さんは大学院生時代に、スーパーカブで沖縄以外の日本全国を旅した経験があり「均質化されて便利すぎる都市部よりも、人の暮らしや営みが感じられて土地の食文化が受け継がれているような地域にとても魅力を感じている自分に気がついた」そうです。

「日本にはいま183村ありますが、どこも過疎や高齢化問題を抱えています。地元の個性ある産物や食材を紹介することで、小さなコミュニティが都市化するのではなく、元気な地域になってほしい…」と、「むらむすび」では、毎月1村にフォーカスしてスタッフが現地で厳選してきた「今月の村の~」を提供しています。毎月1村づつ、おいしくゆっくり身近に感じていくというのも、いい感じです。

そんな佐藤さんには、いずれ映画製作に携わりたいという夢があります。「監督か製作か原作か、まだ具体的ではないけれど、暮らしや人々の繋がりなどを織り交ぜた作品作りをしたいですね」。
あくまで日本の村を思う佐藤さん。オーダーしたメニューの食材のことを尋ねれば、帰りには自分の中にも村への小さな思いが芽生えているかもしれません。
あくまで日本の村を思う佐藤さん。オーダーしたメニューの食材のことを尋ねれば、帰りには自分の中にも村への小さな思いが芽生えているかもしれません。


(文:牧野雅枝)
(写真:大塚秀樹)
(写真:大塚秀樹)