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ツタの緑を分け入れば、安らぐ人と眠る猫と。「マンヂウカフェ ムギマル2」

good mornings

公開日 2018年5月14日

「隠れ家」と言いつつ実際にはさほど隠れてもいないお店も多い昨今ですが、世の中広いもので、植栽が伸びに伸びて、のっとるように建物自体を覆い隠してしまった、そんなお店だってあるのです。

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もりもり生い茂るツタの緑にすっかり覆い尽くされた、二階建ての建物。遠くから見ると放置物件かと思ってしまいそうですが、近づくにつれ、そこはれっきとしたお店であることがわかってきます。
ドアを開けたその先がどんなことになっているのか、外からは様子も伺えず入るべきかまごついている人を見かけたら、「ここ、穴場ですよ」と耳うちして教えてあげたいものです。

「マンヂウカフェ ムギマル2」。神楽坂の街のただ中で、ぽつんとここだけ独自の小世界が、それも、奇抜なようで実はとても憩いが得られる空間なのですが、広がっています。
ほどよく抑えられた明かりのもとであたりを見回すと、その雑多さに一瞬うろたえてしまいそうな店内。でもアーティスティックなオブジェや写真など目を楽しませるものも色々で、空間全体としてはむしろ優しい雰囲気に満ちていることにほどなくして気がつくのです。

神楽坂然としたイメージとは異なり、澄ました都会というよりは親しみやすい田舎のような、ともあれホッとした気分がこみ上げてきます。

ここで過ごす憩いのひとときは、店名にも出てくる「マンヂウ」(まんじゅう)とともに。
お店を手がける岩崎早苗さんお手製のマンヂウは、白地/よもぎ地といった皮の種類も、つぶあん/チーズといった中身の種類もいろいろ。それをチャイなどのドリンクと一緒にいただくのがこのお店の喫茶スタイルです。
お手製マンヂウの味わい、チーズとあんこの相性のよさなんかも発見しつつ、チャイを、カルダモンやシナモンの存在を探るようにすすってひと息入れる、静かな時間。

お店のあたたかな居心地は、ここを訪れた人なら誰もが認めるところですが、それを証明するような、深い眠りにつく猫の姿に出会えることも。肉球が無防備でよろしいです。
大半の時間をすやすやと眠りこけて過ごす、ただそれだけで、このお店が嘘偽りなくホッとできる場所であることを示してみせる、というかむしろなごみ度を倍増してみせる猫の寸(すん)ちゃん、これ以上なく効率の良いその愛嬌商売ぶりに、私たちヒトも何か学ぶものがあるような気が…!

ちなみに彼女の母親・マツ子さんは、生前、その姿が優美すぎるあまり猫専門雑誌の表紙を飾ったり、キャットフードのパッケージのモデルを務めた経歴も持つ、相当な美人さんでした。
「私はいま、猫とツタに食べさせてもらってるようなものよ、なんてね」と岩崎さんが冗談めかして言うくらい、この安心空間で安らぐ猫の姿、それに先輩猫も含めたエピソードも、このお店ならではの特徴。女性の二人連れはもちろん、それに男性が一人で入ってくることも多いというのもよくわかります。
ちなみに外壁のツタ植物も、元は小さな植木鉢サイズに過ぎなかったもの。お店を始めた12年前に近所で買って窓際に置いておいたのち、東南の角地の良好な日当たりも影響したのでしょう、ツタがもりもりと生い茂り、今では2階の窓にも全面的に侵食するまでになっています。
おそるべき、いのちのちからです。

これほどまでにあえてツタの生命力を生かし続けるのも、お店の内装を多国籍のアーティスト仲間と一緒して手がけたり、造形作家の兄の手による流木アート作品も置いていたりする岩崎さんの志向性があってこそ。
今、この空間で目につくもののそれぞれが、これまでのお店の歩みに少なからずひもづいていることを知るにつけ、流木などの有機的なモノ、オーガニックなもの、さらにはちょっとしたチラシや本についてすら、魂のこもった存在であるように感じられて、「(モノを)めったに捨てないんですよね、私」という彼女の一言にも、何かとてもシンパシーを感じてしまいます。

馴染みのお客さんが置いていったギターも何も、すべて、お店の血となり肉となっていくような印象です。
惜しむらくは、このお店、外に出てすぐの大久保通りの拡張工事にともない、おそらくこれから数年ほどの間にあえなく閉じてしまう運命にあるということ。だからいっそう、この光景をしかと目に焼き付けておきたくなるのです。
(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

ムギマル2 (mugimaru2)

住所
東京都新宿区神楽坂5-20
電話番号
03-5228-6393
営業時間
12:00~21:00
定休日
水曜日
平均予算
~¥999
最終更新日:2018.2.6
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。

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