神田神保町を歩くと、軒先からお店の奥に至るまで、山積みの古本でいっぱいの古書店を多く見かけます。その数200店近くにもなるという世界有数の「本の街」神保町。毎年11月の古本まつりでは道から溢れんばかりの訪問客で賑わいますが、この神保町でも本屋さんのニューウェーブ、ブックカフェが続々と誕生しています。

今年(2018年)の4月にOPENしたのは、総合出版社「岩波書店」の本だけを扱うという「神保町ブックセンター with Iwanami Books」。神保町駅のA6出口から徒歩1分のところにあり、すぐ近くには映画館の岩波ホールも。「専門書の専門店」として人気を集めた「岩波ブックセンター」の跡地です。外に設えられた丸い窓を覗いてみると、これまでの広辞苑が初版からずらりと大切に展示されていました。

岩波書店のマークとして親しまれている「種まく人」にちなみ、シンボルマークは「本読む人」。可愛らしいイラストが、お店の中にも散りばめられています。本を読んだり、コーヒーで一服しつつ、自分のパソコンを開いてみたり。そんな自由な雰囲気が広がっています。

本棚に並ぶのは岩波書店の本たち。そうそう、この背表紙。本は古書ではなく新品で、もちろん購入することもできますよ。絵本から文庫、新書、辞典など、約9,000冊が揃っており、岩波書店の本がここまで揃うのは全国でここだけなんだとか。

奥のほうに進むと、壁のギャラリーに本が飾られたワークラウンジがありました。通常は各々で作業のできるスペースですが、本にまつわるイベントも開催できるようになっています。この日はオープニング内覧のため、運営を手がけるUDS株式会社 代表取締役社長の中川敬文さんによるプレゼンテーションが行われていました。

日本各地、そして海外で、それぞれの街にあった店やホテル、商業施設を立ち上げてきたUDS。ここ神保町では、「本」をコンセプトの中心に置いた場づくり、機会づくりを進めていくとのこと。「その街ならではのオリジナリティある風景をつくりたい。経済合理化のために全てを均一的なチェーン店で埋めてはいけない。」と語る中川さんの言葉が印象的でした。

壁沿いのデスクでは、もちろん電源も使えます。一人で仕事に集中したいときはカウンター席を。ゆったりモードでランチやお茶をしたいときは、本に囲まれたテーブル席を。外の景色を見ながら座れる席もあったり、何人かで食事を楽しめる席もありました。その日その日の使い方で、色んなことができそうです。

メニューはサンドウィッチやカレーなどのフードから、メロンソーダのフロートやプリンアラモードなどのデザート、そしてお酒もビール、ウイスキーなどを注文できます。コーヒーは本にちなんだネーミングで「四六版ブレンド」と「文庫ブレンド」の2種類から。

今のところ営業時間は平日9:00〜20:00、土日祝10:00〜19:00。トーストセットが食べられるモーニングは9:00〜11:00、ランチは11:00〜15:00、カフェフードは15:00〜ラストで、飲み物とデザートは常にオーダー可能です。メニューブックが岩波書店のデザインになっていて、思わずパラパラと見てしまう可愛らしさ。

お店は1階で、2階の会議室と3階のオフィスは月極めの入居者が利用できるしくみです。それにしても、小さい頃に読んでいた絵本から、学生時代の読書感想文の課題、社会人になってからカバンに入れて持ち歩いた人生の指南書まで、あれもこれも岩波の本だったんだなぁ〜と感慨深く振り返らずには入られません。

創業103年にもなるという老舗出版社、岩波書店。これからの時代を生きるため、世代を超えて「読むにたる本を」と出版を続けてきた崇高な信念と、それぞれの街に合った風景の再編集を行うUDS、そして本を求めて人が集まりつながる神保町というユニークな場所の素敵なコラボレーションを、是非あなたもカウンター席から体験してみてはいかがでしょうか。

(文:平野美奈)
(撮影:河田真司)
(撮影:河田真司)
A神保町ブックセンター
- 住所
- 東京都千代田区神田神保町2-3-1 岩波書店アネックス 1F
- 電話番号
- 03-6268-9064
- 営業時間
- [月~金] 9:00~20:00 [土・日・祝] 10:00~19:00
- 定休日
- 不定休
- 平均予算
- [夜]¥1,000~¥1,999 [昼]¥1,000~¥1,999
データ提供:食べログ
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