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珈琲専門店に継承される名物カツサンドを求めて

good mornings

公開日 2018年6月4日

その昔、都内で随一の繁華街、文化の集積エリアだった浅草には、今なお語り継がれ、人々から愛される名物料理が数多くあります。今回、ご紹介するのは喫茶軽食の代表的なメニューである「カツサンド」の名店。喫茶店の料理だからといって侮るなかれ。名だたる一流シェフも惚れ込んだ、かつて経験したことのない“カツサンド体験”があなたを待っています。

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浅草に世のグルメ通や一流シェフらも虜にする名物カツサンドがあるらしい。
しかも、そのカツサンドを提供しているのは老舗の珈琲専門店らしい。

そんな好奇心が大いに刺激される耳寄りな情報を入手し、実際に行ってみることにしました。

地下鉄浅草駅から浅草寺を横切り、アーケード商店街を抜けること10分。元靴屋だった店舗の2Fに年季の入った看板を掲げ、どっしりと鎮座するのが、1963年に開店した珈琲専門店「銀座 ブラジル」です。
浅草にありながら、銀座でブラジル。見るもの全てを混乱させる摩訶不思議な店名ですが、経緯を聞けば、それも納得。銀座という名前が付くのは、創業者が戦後まもない1948年に銀座2丁目でブラジルコーヒーの輸入店を開業し、その2号店として浅草にも店舗を構えたから。現在では、銀座の本店は閉業し、残されたのが浅草店のみになってしまったということです。
店内に足を踏み入れると、そこは昭和ノスタルジー全開の懐かしい雰囲気。小ぶりなテーブルセットに歴史の風合いを感じさせるソファーのレザークッション。壁には往年のハリウッドスターの白黒ポートレイト写真が飾られ、カウンター上のランプシェイドがどことなく哀愁を誘います。開店当時から一度も改装せず、そのまま引き継がれている、その店内に佇んでいると、外の喧騒から隔離され、それこそ1960年代にタイムスリップしたかのような錯覚に浸ります。実際に、テレビドラマや映画のロケ地として使用したいというオファーが殺到しているというのも頷けます(でも、全部断っているそう)。
コーヒーや紅茶、ジュース、ビールなどの喫茶メニューを中心に軽食も充実。トーストの他に自家製サンドイッチは9種類。ミートソーススパゲティなども頼めます。

さっそくお目当ての「元祖ロースカツサンド」を注文。料理は全て、注文を受けてから作るのがお店の決まり。作り置きは一切なし。ガラス越しに調理場を覗くと、職人気質のシェフが黙々と具材を裁き、その手際よく丁寧な所作にうっとりと見とれてしまいます。
待つこと10分ほど。テーブルに出来立てのカツサンドが運ばれてきました。
こんがり焼けたパンを綺麗に4等分した美しい断面に否が応でも期待が高まります。ロースカツは脂身の多いトロリとした部位と肉身の多いジューシーな部位とを敢えて2重にして挟むという手の込みよう。
嬉々として口に運ぶと、まず感動するのが、カツの周りを囲む千切りキャベツの食感。一般的なカツの付け合わせに登場するシャキシャキと水々しい千切りキャベツとは違って、繊維を細かく断ち切りパンの食感の延長線上にあるようなフワッと柔らかい口当たりが印象的で、主役であるロースカツに労せずに行き着きます。トロリとした味わいと嚼めば嚼むほど染み渡る肉々しさが秘伝の甘辛いタレと混ざり合って、極上のハーモニーが舌の上で奏でられます。これは確かに経験したことのない美味しさ。

「特に、何か特別なことをしているわけではないんだよ。ただ、まじめにきちんとカツサンドを作っているだけ。野菜は新鮮なまま、カツは揚げたて、パンをこんがり焼いて、ソースを付けて挟む。それをお客さんが食べやすいように、美味しく食べられるように少し工夫しているだけ。丁寧に美味しいものを作っていれば、必ずお客さんにそれは伝わるの」とお店を切り盛りしている梶冨美子さんがその美味しさの理由を教えてくれました。

妥協しないその姿勢は、どんなにお店が混雑しても一緒。ピーク時にはカツサンドを提供するまでに注文を受けてから1時間かかることも珍しくないとか。それでもこのカツサンドに魅了されるお客さんは後を絶たず、古い常連さんだとその2代目、3代目までカツサンドを浅草にまで食べに来てくれるそうです。

「こっちも美味しいから是非食べていって」と梶さんにおすすめされたのが、コンビーフと卵と野菜の3種類のサンドイッチ盛り合わせ「ミックスサンド」。
こちらもカツサンドに負けず劣らずの完成度の高さに舌を巻きます。卵サンドは、一般的な、ゆで卵をマヨネーズであえたスタイルではなく、半熟状態の黄身を潰した目玉焼き。途中から塩を振って食べると、一気に味が引き締まりよいアクセントに。コンビーフは臭みがなく、肉の旨味がジワジワと口に広がります。ボリューム満点の野菜サンドも食感がさわやかでよい口休めに。何よりも、焼きたての卵サンドに常温のコンビーフサンド、冷蔵庫から出したばかりのひんやりとした野菜サンドの絶妙な温度のグラデーションに病み付きになります。独自のブレンドでほんのり酸味が効いた当店オリジナルのコーヒーと一緒に味わうと、より一層サンドイッチの美味しさが引き立ちます。

「創業の時から何も変わっていないんだよ。よそでは屋号は一緒だけど経営者が変わって味も変わってしまうところもあるけども。うちは、創業からのやり方を何も変えたくない。いい加減なことはしたくない。いい加減にやればお客さんだって分かるでしょ。まじめにきちんとやるだけ、それを守り続けたい」
開店してから50年以上、当時と変わらないものは店内の装飾や雰囲気だけでなく、見栄えはシンプルでも手を抜かずきちんと料理をして、美味しいものを提供するという心構えも同じ。

時空を越えて愛される名物カツサンド。誰が食べても納得のカツサンド。
浅草を訪れる際には、必食です。

(文:上田太一)
(撮影:河田真司)

銀座ブラジル 浅草支店

住所
東京都台東区浅草1-28-2 2F
電話番号
03-3841-1473
営業時間
9:30~17:30
定休日
水曜
平均予算
¥1,000~¥1,999
最終更新日:2018.5.14
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。

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