ちくわ。 おでかけ情報

まちのよき遊び場「さんさき坂カフェ」で、今宵楽しく

good mornings

公開日 2018年6月12日

谷中の夜は、路地で集会を開く猫たちの鳴き声がニャーンとあたりにこだまする、そんな静けさ。一方で人間の方にも、老いも若きもつどって無邪気に楽しめる場所が、ちゃんとあります。

エリア
谷根千
千駄木駅
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働く人の街というよりは、住む人の町・谷中。坂を登ればお寺ばかりで街灯も少なく、夜になると東京の中心部とは思えないほど、しんとした静けさがあたりを覆います。
駅のある目抜き通りにも通じる、比較的大きな三崎(さんさき)坂。その中腹で、周囲の静寂をよそに、何やらにぎにぎしくて楽しそうにしているこの様子は、ここ「さんさき坂カフェ」ならではの光景といえるでしょう。

特に週末など、ここで迎える夜時間の充実ぶりときたら本当にちょっと他では見当たらない、そんな特別なものがあります。
ここがとても特別なのは、その場にいる者同士、飾らない素の感情で笑い・喜び・一緒に楽しんでいる場所であること。地域の近隣に住む人もそうでない人も、老いも若きも、小さな子どもも。
やがて意気投合した者同士、歌ったり楽器を演奏したり「英語」、「サイクリング」、「手芸」、「サイエンスカフェ」、「蓄音機」、「燻製」など、さまざまなテーマを設けて週イチ・月イチで集まるようになったり。そんなことが日常的に行われている、いわば、みんなのよき遊び場なのです。
この日行われたイベントは、宮崎県諸塚(もろつか)村がテーマ。お店の身内の人が、移住した宮崎の村から久しぶりに帰省してくるというので、現地の美味しい食材を使った料理、それに音楽もいろいろ交えて楽しい一晩にしてしまおう、という企画です。

テラスで炭火焼きされているのは、現地の野山に住む鹿の肉。いわゆるジビエです。だから肉の味わいは、その季節ごとに鹿が食べてきたものによって大きく変わる、なんて小話を聞きつつ、そよ風に吹かれながらほおばる鹿肉バーベキューは、その味わい深さもひとしお。
他に、葉山椒と実山椒の麻婆茄子、ふきのおひたし、山菜入りたけのこご飯、鶏と山菜のガーリック炒めをワンプレートにしたものも。村で育まれた食材をふんだんに使った、この日限りのスペシャルメニューです。
そして夜8時をまわった頃に始まりだした、各種音楽の出し物。お店のホールスタッフであり、詩吟部を率いるみちるさんが、詩吟を朗々と聴かせ、会の始まりを告げます。
西洋音楽に聞き慣れた耳には新鮮な声の響きといい、腹に手をやる凛としたその姿勢といい、心あらわれるような思いです。

そもそも、それまでお店の仕事をしていたスタッフさんが、おもむろに店の真ん中にやってきてパフォーマンスしてしまうあたり、このお店が店/客という区分け意識よりも、むしろ一緒に同じ時間を過ごす仲間として事が運んでいるようで、「人の輪」というものを強く感じさせるところ。
この夜は「海藻姉妹」の3人による演奏も。先立って行われたヨーロッパ公演を経ての凱旋ミニライブ的な位置付けで、昭和歌謡やオリジナル曲「うなぎまつり」など、エモーショナルかつ高速テンポでも一糸乱れぬ超絶技巧を繰り広げました。3人(わかめ、めかぶ、こんぶ)はともに近隣の東京藝大出身。だからこの場所での演奏はある意味お膝元感があるのです。
他に、毎週火曜の夜にここに集う「ウクレレ部」が登場して、日頃の練習の成果を披露する時間帯も。「ちょうどウクレレやってみたいなと思っていたところに、この場所に出会った」という人も複数。みんなして演奏するその表情は、緊張などとはおよそ無縁の、ただただ無邪気に「今・このとき」を楽しむ気持ちそのもの。
観る側もみんなで手拍子したり、合唱したり。あふれんばかりの心地よいバイブスが店内にみなぎっていくのがわかります。言葉もわからない香港からのお客さんも含め、その場の全員が一緒になって楽しむ様子は、ちょっと感動を覚えるくらい(このお店では、日中谷中を散策してきた外国人観光客が通りがかりにここに立ち寄り、楽しい時間を共にすることもしょっちゅうなのです)。
初めて来た人でも、思いがけずいろんな人と大家族的に楽しめてしまう、そんなあたたかみのある社交の場。もともと東京の西側で育ったというお店の大野義高さんは「この空気感は、地域の商店会や町内会といい、この地域に昔から伝わる、ひととひと同士の気持ちの良い関係性があってこそ」と言います。

単純に店づくりがどうだからといったことには還元しきれそうにないこの空間の魅力ですが、少なくとも地域としての人的なつながりがそこにある。そのことは確かなようです。
お店の周囲の景観も含め、よい意味で東京離れしたレイドバック感。ほんの1ミリくらいの勇気さえあれば、すんなり溶け込み楽しめる懐の広さ。そんな素敵な「さんさき坂カフェ」に、心からの乾杯を!
(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

さんさき坂カフェ

住所
東京都台東区谷中5-4-14 穴田ビル1階
電話番号
03-3822-0527
営業時間
月~土・祝 11:00~0:00 日 11:00~19:00
最終更新日:2018.6.21
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。