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ビジネス街の片隅に集う、心ゆさぶるヒップな感性。「TETOKA」

good mornings

公開日 2018年6月29日

基本、古めのオフィスビル。駅周辺はアフター5のサラリーマン御用達のお店でたくさん。そんな神田駅界隈の落ち着いた光景の中にも、予定調和な世界とはおよそ無縁の、感性くすぐられる場所があること、あなたは知っているでしょうか。

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秋葉原や神保町といったキャラの立った街とは異なり、神田駅周辺は絵に描いたような昔ながらのサラリーマンの日常がよく似合う場所。常識的に考えれば、目新しい何かを求めてここにやってくるなんて「場違い」と言われかねないこの界隈ですが、今やそうではないのです。
なぜなら、それはストリートやクラブといった草の根の現場から生まれる、時代を切り開くような力強くてあたらしい感性に出会える場所・TETOKA(手と花)があるから。

2013年のオープン以来ここでは、美術や音楽といった分野にまたがるようにして、作品の展示やDJイベント、それに骨董市や古本市に至るまで、いろいろな催しが開かれては現代の好き者たちを惹きつけ続けています。
そんな既存の枠に当てはまらないTETOKAのことを強いて形容するなら、「オルタナティブスペース」。その名も風流な「楽道庵」という建物の1Fにあるこの空間が、元は40年ほども前にさかのぼる駐車場兼・紙保管用の倉庫だったというのも、新しい文化が醸成される場として実に「らしさ」を感じます。
お店の店主で、自身も絵を描く小林千絵子さんは、にこやかで笑顔の絶えないひと。ともすればクールに澄まし顔で「いい感じにやってるんで、よければどうぞ」と内心呟いていそうなだけの人も多いこの手の空間で、人一倍にこやかで、物腰柔らかく、とても親しみやすい彼女の存在がこのスペースを特別なものにしています。つられてこちらも口角が上がってくるのです。
骨董も、古本も、タロットカードも、それにちょっとした昭和の古いおもちゃなんかまで、心に引っかかったモノをノンジャンルに蒐集するのが大好き、そんな彼女のコレクションが方々で目につく店内。キッチンでドリンクやフードをこしらえるその背中側も陽気でカオスなことになっています。

このとき開催されていたのは、フランス人作家によるソロの個展「Systèmes(システム)」。アルファベット全26文字のそれぞれに対応したピースで構成される作品群、それに先週クラブでのライブペインティングで作ったばかりという出来立てのコラージュアート(それも、彼がメンターと仰ぐかの伊藤桂司氏との共同作業で!)、またアートブックも置かれています。
これらの作品を手がけたアレックス・べシキアン(Alex Besikian)さん。Lex(de Kalhex)名義でのトラックメイキング/ラップといった音楽活動を中心に、ドローイング作品やZINE(ジン。少部数で流通する手作り感のある冊子)なども制作しています。
過去にリリースしたアルバムタイトルの中には「Satori」と命名されたものもあるほど、日本文化やその精神性に強い関心を寄せる彼。ビートメイカーとしてのその作風も、まるで深い闇の中で、かすかに光るダイヤモンドを手のひらで転がしているような、そんな美しさを内包した曲が多いです。
https://soundcloud.com/lex-de-kalhex
彼がTETOKAを訪れるのは2年ぶり。前回来日時にここを訪れ、小林さんやその他仲間たちとも親交を深めたことが、今回のドローイングアーティストとしての初の個展開催に結実したというのも素敵な話です。2週間にわたる開催期間中、青山や中目黒のクラブでもライブ出演/新作リリースパーティーを行うなどしたものの、在廊中のリラックスした表情からは、やはりここが日本のホーム、と彼が思う気持ちが見てとれます。

展覧最終日のクロージングパーティーまで、ここを拠点にしつつ、予定の空いた日には日本の友達と連れ立って千石のそば屋さんに行ったり、谷中を散歩したりと、充実した時間を過ごした模様です。
作家が創り出す作品というのは、いわばひとつの小宇宙。本国フランスで注目が高まっているこのアーティストの手になるものを前に、当の作り手から直々に語ってもらうことで、表現の核心というか「目には見えない、大事なもの」により触れられるような気がします。今回の個展に限らず、そんな醍醐味をTETOKAでは是非味わいたいものです。

絵であれ音楽であれ骨董であれ、何気無い会話のふとしたことから、互いの愛好するものにニッチな部分で共通項が見つかり、思いがけず会話に花が咲くこともしょっちゅう。鑑賞者や作家などといった立場を超えて、「これいいよね」を共有できることの嬉しさといったら、かけがえがありません。
月イチで行われる「神田蚤の市」「神田古本市」といったイベントも、その奇をてらわないネーミングセンスが絶妙というか、楽道庵というこの建物やそれを取り巻く周囲の「昔ながら」の景観に妙にハマっていて、地域恒例の文化行事として根付く日もそう遠くなさそうな。そんな気がしてきます。

どこの馬の骨か知らないけれどそれぞれに歴史を背負っていそうな小さなモノたちを、興味の赴くままに手にとって眺めてみたり、各自自分でZINEづくりに取り組んで、完成したものを販売してみたり。想像すること、発想を自由にして遊んでみる楽しさを久しく忘れかけていた大人たちにもおすすめしたい、TETOKAです。
初めて来る人は、店頭の軒先に立つこの像を目指すと良いでしょう。都内広しといえども、鼻血を出しているのはここだけだと思います。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

手と花(TETOKA)

住所
東京都千代田区神田司町2-16楽道庵1階
電話番号
03-5577-5309
営業時間
16:00〜23:00
定休日
水曜日 ※イベントの日は、営業時間・定休日に変更あり
最終更新日:2017.5.22
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。

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