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光源寺「ほおずき千成り市」の、うつくしいまでの手作りぶり

good mornings

公開日 2018年8月2日

毎年7月9日・10日に、本駒込駅近くの光源寺(文京区向ヶ丘二丁目)で開かれるこのほおずき市は、界隈のお店や大学ほか、様々な人々が主体的に手を取り合って作り上げる、絵に描いたようなうつくしさの縁日と言えるでしょう。

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谷根千らしい町並みをかたちづくるもののひとつ、お寺。歩いていてふと遠くを見れば、大概どこかしらに黒い屋根瓦の光沢を目にする、そんな住宅街の町並みは遠く本駒込駅や白山駅のあたりまで続きます。
高さ6メートル以上もの大きさの駒込大観音(おおがんのん)で知られる光源寺は、境内の一部がちょっとした公園となっていてぶらんこもあったりと、地域に開かれた素敵なお寺。ここで毎年7月9日・10日に催される「ほおずき千成り市」は、お寺と地域とその他有志がゼロベースで作り上げる感じが実にハートフルです。
この日にお参りすれば四万六千日ぶんのご利益が得られるということで、広く全国で開催されるほおずき市ですが、ここ光源寺の縁日で驚くのは、境内のちょっとした緑空間に過ぎない公園部分が、普段のようすからは全く想像ができないほど密度濃く賑やかな姿に変貌すること。

お店の人は趣味が高じた素人で変にプロっぽくないからか、不思議と息苦しさとは無縁で、何はともあれ気軽に入って見て回りたくなる雰囲気の境内です。
奥にある観音堂も、この二日間だけはガラス戸が全開され、その黄金ぶりを一年でいちばんよく味わえるようになっています。元は300年以上前の元禄年間にさかのぼる(戦時の空襲で消失したのち、1993年に再建)というヒストリー豊かな観音さま、まぶしいです。
決して広大とは言えない境内に、およそ50もの店が出る縁日は、テキ屋ではなく、この地域の様々な人が各自「できること」「やりたいこと」を出し合って作り上げられているのがとてもユニーク。

食べ物を出す屋台の一角にあるのは、千駄木の古書店が手がけるオリジナル料理「エスニック鳥かけご飯」、福島から駆けつけたおこわ作りの名人による「千成りおこわ」、近隣の養護学校の先生が作る「ラッキー焼きそば」などなど、手作り感あふれる料理ばかり。
会社帰りにこの屋台に立ち寄ることを楽しみにしている在住・在勤の会社員も多いもよう。

食べ物以外にも、ほおずきや風鈴はもちろん、各種手作り小物や肩もみ屋、包丁研ぎ、てぬぐいなどなど、目移りする楽しさがあたり一帯に広がる屋台です。
子どもの熱い視線を集め続けていた、あめ細工の屋台も。
そんな賑わいのかたわら、広場の奥では四万六千日法要や奉納パフォーマンスも。お母さんと子ども向けのフラダンス、ホーンがこだまするラテンジャズのステージがあったほか、伝統芸能的なコミックソングに踊りや切り絵芸も織り交ぜ、世界のどこにもない唯一無二のステージを披露した集団「亀楽(かめがく)」も見ものでした。
三味線やアコーディオンの調べをバックに、とても穏やかな歌い口の一方で、大人も戸惑うパンチの効いた歌詞の曲など、実にインパクト大で記憶に残るステージ。やんごとなき観音堂のふもとで、コミカルで愉快・痛快な音楽が展開されるおおらかさがまた魅力です。

また店を手伝う学生の姿をよく見かけるのも、この縁日らしい光景。近隣の東洋大学で行われる授業の一環としてのこの地域ボランティア活動では、二十人の学生たちがお寺や地域の人と協働し、午前は設営、午後は駐輪場でママチャリの誘導をするのですが、住職の奥さん・富士子さんらがお昼に手の込んだ料理でもてなすのが恒例です。
気持ちのこもったご飯を頬張りながらこうして語らうなど、学生同士、それに様々な世代の人たちとが仲間になり一体感を味わう。縁日そのものはもちろん、それを準備してつくりあげる側の連帯や充足感も大切にするお寺としての尊いポリシーが伺えます。

このように、地域とともに縁日を手がけていくようになったのは2001年頃から。その後、東日本大震災の復興支援で「谷根千・駒込・光源寺隊」として駆けつけたいわき市の避難所で、帰り際に貸した鍋や釜などの調理道具を、ふた月後の縁日の前日に、(深刻なモノ不足にもかかわらず)諸々すべて避難所から車を飛ばして返しに来てくれたことも、縁日と災害復興はリンクできると改めて気づくきっかけになったそうです。
光源寺の住職・島田昭博(しょうはく)さんは、奥さんの富士子さん共々、被災地でのそのような心動かされる経験を経て、地域と地域をこえた人のつながりを大事にした縁日作りを一層推し進め、今に至っています。

その気持ちは確実に出店者にも伝わっているようで、中にはこのまちを離れてもなお、この縁日に参加し続けているというケースも。
長野県松本市のカフェ「ヤマベボッサ」は、引っ越しでここを離れる2016年までは上野桜木町でブラジル音楽などが楽しめる古民家カフェのはしり「谷中ボッサ」として営業していたお店。この縁日ならではの、地域の人が手弁当でつくりあげる楽しさが高じて、引っ越し後もこうして変わらず、つごう十年以上にも渡って出店し続けています。

今お店が居を構える松本の伊織(いおり)霊水の湧き水で淹れた「酵素水出しアイスティー」など、今のボッサだからこそできるとっておきドリンクを引っさげて里帰りしたその姿は、かつてお店に親しんだファンにはとても嬉しいものだったはず。
観光地のド定番のような大きなお寺のお祭りにも、近所の公園の盆踊りにもない、本来の趣旨に近くて、より顔の見える、よりピュアな縁日。お寺と出店者/出演者と来場者の三位一体感が感じられる幸せをそのままに、日が暮れ夜が訪れます。

(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

光源寺 駒込大観音

住所
東京都文京区向丘2-38-22
電話番号
03-3821-1188
最終更新日:2018.5.22
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。