東京都心にいながらにして満喫できる夏があります。「コンクリートジャングル」だなんて軽んじて、夏の楽しみをもっぱら郊外・地方・国外に求めてばかり、なんてとてももったいない。そう考えるに十分なイベントごとが、河川敷の花火大会や盆踊りに限らず、よく探せばいろいろあります。

御茶ノ水と秋葉原の間、神田淡路町にある複合施設ワテラスで過去数年来開催されている「WATERRASの夏祭り」もまた、ぜひ知っておきたい都会ならではのイベントのひとつ。オフィスワーカーも住民も学生も、新旧問わず様々な在住/在勤市民が日頃から交わる複合施設らしく、独自の魅力のある催しです。

ゴールデンウィークに突入するタイミングで開催される「JAZZ AUDITORIA」がいちばんの盛り上がりを見せるワテラスですが、この夏祭りも年を追うごとに充実度が高まってきています。今年は7月19日(木)と20日(金)の二日間、いわき市やスパリゾートハワイアンズなどとの共催により、南国ハワイのムードに親しめるステージの数々、それに「常磐もの」として知られるいわき自慢の味覚といったfromいわき系コンテンツを大体的にフィーチャーするかたちで開催されたのでした。
いわきといえばとっさにイメージする人も多いであろうスパリゾートハワイアンズ。「常磐ハワイアンセンター」時代から数えて半世紀以上にもなるこのスポット自慢のフラダンスやファイヤーダンスが今回のお祭りでは披露され、辺りの空気をハワイアンでポリネシアンな色に染め上げました。
いわきといえばとっさにイメージする人も多いであろうスパリゾートハワイアンズ。「常磐ハワイアンセンター」時代から数えて半世紀以上にもなるこのスポット自慢のフラダンスやファイヤーダンスが今回のお祭りでは披露され、辺りの空気をハワイアンでポリネシアンな色に染め上げました。

映画「フラガール」、それに震災復興の過程を通じて、今や日本全国にその存在を知られることになったハワイアンズダンシングチームが魅せるステージショーの甘美なことといったら。
どうしてこんなにもというくらい、スウィートな笑みを浮かべて揺れる・踊るダンサーたちなのです。
どうしてこんなにもというくらい、スウィートな笑みを浮かべて揺れる・踊るダンサーたちなのです。

子どもたちがフラを教わる体験コーナーでは、題材に用いられた曲中の動きひとつひとつについて、「仲間への呼びかけ」、「魚」、「網を引っ張る動き」、「海の波」など、個々の振り付けが何を表しているのかを優しく解説しながらレクチャー。子どもたちが動きを覚えていく様子をほほえましく思いつつ、曲に込められた一連のストーリーを観客の方もしかと味わえたのでした。

ハワイアンズ以外にもスラックキーギターの演奏などなど、ハワイ感漂う音楽で賑わいを見せたステージのかたわら、屋台は屋台でいわきの良さに触れられる味覚が登場。震災以前から築地を含む市場関係者の間で「常磐もの」と呼ばれ高く評価されていた、いわき沿岸で獲れる各種海産物ですが、例えばこの「さんまのポーポー焼き」もその好例。

さんまのすり身に味噌、ねぎ、しょうがなどを混ぜてハンバーグのように焼いていただくのですが、思いの外ジューシーなのはやはりさんま自体の脂のノリが違うから、なのでしょう。漁師が船上でこれを調理するときに、さんまの脂が火に落ち炎が立った様子を「ポーポー」と表現したなど、そのネーミングの由来にも諸説ある名前ですが、とりあえず響きが素朴キャッチー感ただよう微笑ましさ。

他にウニ焼きなどもあって磯の香りでかぐわしい中、アツアツのをハフハフ言いながら、地酒とともに舌鼓を打つ人たちが多数。なかなかの贅沢ではありませんか。
そんなかたちで今年ならではのスペシャル感があった「ワテラスの夏祭り」。ですがもうひとつ、人情・情緒といった神田が昔から持っている地域コミュニティの力を重んじ、それを大事に引き継ぐワテラスらしく、地域のひとの輪が光るコンテンツも持ち合わせているのが特筆すべきところ。
そんなかたちで今年ならではのスペシャル感があった「ワテラスの夏祭り」。ですがもうひとつ、人情・情緒といった神田が昔から持っている地域コミュニティの力を重んじ、それを大事に引き継ぐワテラスらしく、地域のひとの輪が光るコンテンツも持ち合わせているのが特筆すべきところ。

ワテラス内のマンションに住まいつつ、ここ神田淡路町のまちづくりにアツくコミットする学生たちの存在は、この地域の人的つながりのリッチさを示す典型例。今回の夏祭りで彼ら「ワテラススチューデント」がつくりあげたのは、20日(金)1日限りの小学校、名付けて「ワテラススクール」。地域の小さな子どもたちに対して、ものづくりなどの遊びの機会を提供するプログラムです。

ワテラススチューデント達による念の入った準備の甲斐あって、この日ワテラスの1〜2Fには、うちわづくりやハワイアンソープづくりといったものづくり体験に親しむ子ども達が多数。青いTシャツを来たスチューデント達が、何を使ってどうするかを手取り足取り子ども達にやさしく教えるその光景は、まさしく世代を超えたふれあいの姿そのものでした。

このほか、けしピンリーグなるものも。これはプレイヤー同士、互いの消しゴムを机の上でデコピンの要領ではね飛ばし、場外(机の外)に追いやった方が勝ち、というシンプルな遊び。もはや年の差関係なく、みんなが夢中になっているようすにご注目です。

様々な遊びを通して、地域の小さな子ども達の心には、「お父さんでもお母さんでもないけれど、他にも頼れるひとが身の回りにいるんだ」ということが記憶としてしっかり刻まれたはず。神田のまちの絆はきょう一日を通じてまた一段と強まったことでしょう。

夜7時を回った会場はスーツ姿の人から子どもまで、様々な属性の人々が行き交うにぎやかさ。多様な関係性の中で人と人同士が関わりあう、そんな街づくりを推進する神田淡路町らしい光景と言えますが、この日のような大イベントの時にこそ、それがいちばん目に見えてわかるのかもしれません。
いずれにせよ、東京という街にどことなく無機質なものを感じている人がいるとしたら、いやいや、味気なさとはほど遠いこんな素敵な催しだってあるある!と知ってほしいところです。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)
いずれにせよ、東京という街にどことなく無機質なものを感じている人がいるとしたら、いやいや、味気なさとはほど遠いこんな素敵な催しだってあるある!と知ってほしいところです。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)
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