ちくわ。 おでかけ情報

喉もと過ぎて、こころ安らぐほんとの喫茶|喫茶おとら

good mornings

公開日 2018年10月12日

平穏な町並みが広がる文京区。東京の中心部に位置していながら繁華街と呼べるようなエリアもほぼなく、住民の落ち着きある暮らしが日々営まれる、そんなこの地域らしい喫茶空間が白山駅近くにあります。

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人通りもまばらで、これといった特徴も特に見つからない町の風景。

無理に背伸びした華美さとも無縁で、多少の年月を重ね気持ち安らぐ程度のわずかな生活臭があるだけというそのようすは、歩行者やドライバーの目を引こうとする看板の文字や色が何かとうるさかったりするこのご時世、かえって貴重に思われるほど。
そよ風に運ばれてきたキンモクセイの香りにふと秋の到来を思ったりする、そんな季節の移ろいを感じ取るアンテナも、こういう(ある種)地味な町でこそピンと立ってくれるように思います。

白山駅と本駒込駅の間にあって人の往来が盛んな白山上交差点は、五叉路。その中でもお店の数も人通りもダントツに少なく、スルーされがちな南側に延びる道路沿いにある「喫茶おとら」。
ロケーションゆえに気づかない人も多そうなここのお店のお楽しみは、喫茶という体験そのものにあります。ゆらゆらと温かいお茶をカップに注いで、かき混ぜ冷まして、やけどしないようにおそるおそるすすって、喉もと通り過ぎてほっとする。そういう時間。

目の前の味わい深い飲み物とともにしばし時を過ごすうちに、「喫茶」の本質というか、必ずしもよく知られていないその本当の良さ(と言い切って良いのかアレですが)が、じわじわと感じられてくるのです。
紅茶専門のお店と聞けば、ロココ調の室内装飾とかクリノリンスカートをはいた淑女とか、「大英帝国市民のティータイム」的なものをイメージしてしまうところ。けれどもおとらの店内に横たわっているのは、同時代的なシンプルさとどこか素朴さを残した和の趣きが、微妙なさじ加減で融合したような独特な雰囲気です。

そんな環境のもとでこそ、変な先入観や堅苦しさに邪魔されることなく、ニュートラルな気持ちで喫茶に親しむことができるような気が。このお店はその貴重な玄関口であると思います。
一番大きな囲みのテーブルが、実はかつて蔵の扉だったものであったりと(側面を見ると、確かに引いて開けるための溝が走っているのです)、古材が使われている箇所もいくつかある店内。

内装の白と茶の色味が印象的なごくシンプルな空間で、囲みテーブルの真ん中に並ぶ数十冊の本の佇まいには、それだけで「どうぞご自由に(お読みください)」というメッセージが無言のうちに伝わってきます。それとない感じが実に奥ゆかしいです。

アートや音楽、猫やペンギンといった動物のこと、心なごむ絵本、そしてもちろん紅茶や喫茶に関する書籍も。
図書館などと違って物量に圧倒されない、この「かたわらに転がっている」くらいの気軽な環境の方が、未知なる世界とのよりよい巡り会いがあるような気がしませんか。
そしてリラックスタイムのいちばんの主役・紅茶です。

店主の夏目さん曰く、紅茶は食べ物と一緒に味わってこそ。本来、ティーフード(あえてこういう言葉を使ってみたい)とセットで味わうものなのだそうで。
スコーンこそはティーフードの王道。これにレモンカード(左側の黄色の濃い方。ジャムのよう。)とクロテッドクリーム(右。乳脂肪分がなんと63%と濃厚。)の両方を塗って、甘いのとまろやか濃厚なのを同時に味わうのです。

こちらにやってくる直前から、深く・かぐわしい香りを漂わせる紅茶。これを口に含み味わった後で、テイスティーなスコーンをひと口すればお茶の渋みがパッと中和され、口の中はすっきりさわやかに。

その一方でスコーンのパサパサとした粉っぽさが口の中の水気を奪ってしまうので、またも水分を欲して紅茶をすすってしまう(動物性脂肪分を大いに含むクリームのまったり濃ゆい感じも、このとき紅茶のタンニンがきれいに洗い流してくれる)。

こんな具合にすすって・食べての循環モードのスイッチが入れば、それが繰り返されるうちにいつしかおのずと心穏やかになってくる、そういうひとときがイギリスで生まれた「ティータイム」という営みなのですね。なるほどすばらしい。
店主・夏目さんの目利きが光る紅茶やフレーバーティーの各種ラインナップは、そもそもお茶なので見た目で比較することもほとんどできるわけもなく、メニューを眺めては一層迷ってしまうところ。

「マスカットのフレーバーティーってどんなんだろう」と想像を膨らませつつ迷う時間もそれはそれで良いのですが。あらかじめお店HP内でチェックしておくのも良いかもしれません。
http://www.o-track.com/tea.html

またお昼どきにはフードメニューを一緒に楽しむことも可。トーストやサンドウィッチやカレー、それに夏目さんがある時台湾で開眼して始めた、お店オリジナルのルーローハンも。
こと外来文化の作法に関しては「かくあるべし」という教条主義的な匂いがしないでもないこの日本で、こんな具合に肩の力が抜けられる環境でイギリス生まれのティータイムの本質に触れられるなんて、なかなかないことなのでは。

「(喫茶って)なんとなくシニアっぽくていまいちピンとこない」という人ならなおのこと、ここでいちど一服してみてはどうでしょう。

(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

喫茶 おとら

住所
東京都文京区向丘1-9-18
電話番号
03-3815-7288
営業時間
9:00~20:00(L.O.19:30)
平均予算
¥1,000~¥1,999
最終更新日:2018.9.4
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。