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趣味のよさの粋は、原宿奥地のとあるカフェに | J-COOK

good mornings

公開日 2018年10月14日

ファッションや食のお店等々、時代の旬とそれを求める大衆的エネルギーが日本一密集する原宿・表参道。駅から遠く離れた外苑西通り沿いや神宮前二丁目方面まで行けばそのほとぼりも冷め、都会らしいセンスはそのままに、落ち着きある「素の原宿」がちらほら。

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竹下通りは、目を輝かせるティーンと外国人観光客がいっぱいで年中いも洗い状態の賑やかさ。すぐそばの表参道もまた、ケヤキ並木沿いに立ち並ぶハイブランドのビルやギャラリーの競演がクールかつ華々しく。

半世紀近くにわたり流行の発信地であり続けてきた街ならではの強いオーラをひしひしと感じる原宿・表参道界隈ですが、そのかなり奥、原宿・表参道・外苑前といった駅のいずれからも遠い住宅街のあたりまでくれば、そこには日常の落ち着きを取り戻した街の風景があります。
外苑西通りを千駄ヶ谷方面に下る途中に見つかる、起伏の激しい路地沿いの、歩道からだいぶ奥まったところにあるJ-COOK。自発的に、かつ注意深く探さない限り見つかりようもないこのカフェレストランは1987年のオープン以降、近隣の住民やクリエイター業の人達などが好んでやって来る、いわゆる「いいお店」です。

ファッションに食に、暮らしにまつわる諸々のセンスが磨かれる土地にあって、このお店で味わう食や居心地といったもろもろのよさには、「上質である」とか「趣味が良い」とかいうことの意味について深く考えさせられるものがあります。
朝からコーヒー1杯のために立ち寄れるカフェでもあり、スイーツは勿論ちゃんとした食事もできて、パーティーにもレパートリー豊富なメニューで対応できるレストランでもある、懐の広いこのお店。

日中、天井からは柔らかい陽光が差し込み、観葉植物のベンジャミンが微風にそよぐようすが目に優しく。屋内でありながらオープンカフェと同類の、すっきりとした心地よさ。空気が淀まず、なんとも軽いのです。
「ポット・ド・クレーム」(プリンのように蒸し焼きにしたカスタード)は、カフェタイムのお供にしたい定番のひとつ。天然のバニラビーンズを漬けたブランデーをボトルから注いでもらえば、その所作が醸し出す雰囲気も含めいっそう香り高くいただけるかと。
洋菓子だけでなくフランス料理の分野でも研鑽を重ねたシェフが手がける食事メニューは、カレーやスパゲッティ、ピラフ類を中心に多数。「ハンガリー風鶏肉カレー」、「あさつきとしめじのピラフ」、そしてそれ以外にも数多くのメニューがそれぞれにファンを抱えています。
さらにこれは、旅行で訪れたアメリカ・ニューオーリンズで食べて触発され、お店のキッチンにあるものだけでつくってみようと開発したオリジナルのガンボスープ。オクラとアサリが入っていてスパイスがほどよく効いていて…と聞くだけで、未体験の人にはきっと興味深く映ることでしょう。

メニューに仲間入りさせてからだいぶ経ったとある日、現地出身のアメリカ人もこれを食べてすっかり気に入ってくれたという、地元民のお墨付きも得た一品です。
驚くべきは、数多く揃うメニューのほとんどがオープン当時からずっと現役であり続けているということ。

31年という長い年月の中で時代の荒波に翻弄されることなく、あくまで自分の価値観や良心に照らして考え・行動し、「居心地の良い、気持ちの良い場所とは」とまっすぐに問い続けてきたこのお店の歩みを象徴するかのような不変ぶりです。

中尾さん夫妻がJ-COOKをオープンさせた1987年はバブル真っ盛りの頃。

良いものを提供しようと奮闘する自分たちのようなお店のことも、明らかにあまり力を入れずに高値で提供する他のお店のことも、流れるように入ってくるお金の使い途としてさしたる差はない、と同等に評価してしまう世間にとても危ういものを感じていた時期でした。
品質の実質はそのまま、なのに値段だけがどんどん高く設定されていく世の動向をよそ目に、自分たちが出すコーヒーは相も変わらず1杯350円。手間やその他もろもろを考えてもこれが妥当な値段だと思っていた奥さんの敦子さんですが、その考えに共感してもらえることはごくわずか。
自分を見失うことこそなかったけれど、絶対の確信が持てることなんてあるわけもなく、どこか心もとなさは残る。そんな中で自信をくれたのは、面と向かって口には出さずとも「こういうお店を探していた」とばかりに通い続けてくれた客が少なからずいたから。それも、店内でのひとときを過ごすさまがはたから見て妙に絵になる、さりげなくも素敵な振る舞いの客が。

しばらく経ってある時、眺めていた雑誌の中にふと見覚えのある顔が。印象に残ったあの客は当時頭角を現し始めたDCブランドの有名デザイナーだったのです。
これは、90年代中盤に竹下口の交差点にオープンしたオーバカナルが、そのオープンエアカフェというスタイルが斬新だと評され一時代を築くことになるよりも、ずっと前の話。

J-COOKの、言ってみれば「クローズド」エアカフェともいうべき風通しの良い雰囲気しかり、そんな空間のもとでいただく一品一品の味わいしかり、パリ帰りでのちに一躍その名をはせることになる有名デザイナーは、現地のカフェ文化にも通じる良さをこの店に感じ取ってか、気に入ってくれていたというわけです。

他にも同類のケースに遭遇すること多数、「良いものを良いとわかってくれるお客さんはちゃんと一定数いるのだから、メニューや価格設定、その他諸々についても、自分を信じて続けていこう」と大いに勇気づけられたという経験があって、30年後の今があります。
かつて、遠く西ドイツ・フランクフルトの日本総領事公邸に住み込みでパーティー用料理を提供する仕事に従事していた時期もある中尾さん夫妻。

スイスやフランスも含めたヨーロッパの都市空間におけるカフェの独特な立ち位置、そしてその良さを肌身で知る二人が、吸った息を吐くようにしてここ東京・原宿の街かどにつくったJ-COOKは、時代の浮き沈みを確かな感性の舵取りで乗り越え、今日も都会的洗練のただ中にあり続けています。
(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

J-COOK(ジェイ クック)

住所
東京都渋谷区神宮前3-36-26
電話番号
03-3402-0657
営業時間
[火~土] 8:00~22:00(L.O.21:30) [日] 11:00~18:00(L.O.17:30)
定休日
最終更新日:2018.9.4
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。