ちくわ。 おでかけ情報

シェフに何もかも委ねてこそわかる、中国料理の奥深さ | 龍口酒家

good mornings

公開日 2018年11月4日

幡ヶ谷駅の改札を出てすぐの地下街にある中国料理の名店「龍口酒家(ロンコウチュウチャ)」。その真髄は、予算感をシェフに伝えてあとはおまかせ、というディナータイムにこそあります。

幡ヶ谷駅
カテゴリ
デート
一人で
友達と一緒
グルメ
街を知る
幡ヶ谷駅でただひとつの改札を出て左をゆけば出くわす地下街は、駅直結とあって雨にも濡れずとても便利。「幡ヶ谷ゴールデンセンター」という名前からして既に懐かし感満載のこの通りですが、古くから続けられている個人のお店も多く、なかなかに味わい深いです。
そんな一角に店を構える「龍口酒家」。この場所で23年、さらにその前は蒲田でも13年間続けられていたというお店です。

お店の窓からは漢方の食材と思しきものも色々と目に入ってきては、とんでもなく歴史の長い中国の食文化ならではの、深い深い部分にまで通じていそうなお店であることが察せられることでしょう。
お昼どきに気軽にランチするだけでも、いわゆる中華料理のステレオタイプとは違い、胃もたれすることもなく、むしろ食べ物が胃へとすうっと優しくおさまってくれるような感覚があって、「このお店、普通とはちょっと違うぞ」と気づくところなのですが、その本領がいかんなく発揮されるのはやっぱりディナータイム。
なんとユニークなことに、このお店のディナーは基本的にすべてがお任せ。予算感だけを先に伝えておいて、あとはシェフが一体どんな料理を手がけてくれるのか、ひと皿ひと皿とのご対面を楽しみにして待つ。そんなスタイルが貫かれているのです。

どんな内容なのかわからないのは心もとない。そう感じられる人もいるかもしれませんが、例えばその一例はドドンとこんな具合。
*前菜には、自家製鶏ハム、ミョウガ、自家製チャーシュー、さらにクラゲまで。クラゲの肉厚でこりりこりりとした噛み応えに驚き。

*海老の生胡椒炒めも、黒というより緑色が目立つ生胡椒のプチプチ感と辛みだけではない生野菜的な味わい深さ。それに大きな海老がまた、その歯ごたえに「プリプリ」という表現を再発見するような思い。

*素揚げした上海蟹の蟹みそ和え。味が濃くまろやか。蟹本体はよくよく噛めば殻ごと食べれてしまう柔らかさ。「花捲(ホアジュン)」という包(パオ)を蟹みそにつけて食べるのも美味。養殖の技術もまだなく一年中蟹が食べられるようになる前のこと、上海蟹シーズン(10-11月)が来たらこれをたらふく食べることをモチベーションに、上海の人たちは一年間真面目に働いていたものなのだそう。しゃぶり尽くしたい。

*食感・味わいがとも爽やかな、黄ニラの炒め。

*クロレラの色味が映える里麺(リーメン)は、コシが強くて喉越しもいい。チャーシュー、ネギ、ザーサイのアクセント。

…豪勢にもほどがある品々ですが、目安としては7〜8品でひとり当たりおよそ五千円ほど(ドリンク別)。ランチ同様、胃に優しい味わい。ゆえに想像以上にばくばく食べれてしまうのです。
ほとんどの場合、一度の食事で一人あたり9品ほども平らげていくというのも決して不思議ではない、この胃への快適な納まり心地。シェフの石橋さんが「医食同源」の考えを重んじ日々これを実践しているのを、お腹で感じることしきりです。

もともと体が強い方ではなかったという石橋さん。料理人としての勉強も兼ね中国各地を旅する経験をかねてから重ねてきた彼ですが、ある時旅先で弱っていたところを、友人の中国人がすすめる漢方薬によって健康を瞬く間に取り戻したという鮮烈な体験を経て、以来、漢方や薬膳、薬酒といった分野にもまたがって、ますますの研鑽を重ねるようになりました。
例えば酔拳しかり、酒をめぐって中国の文化を探るのも相当に深そうで興味そそられるところですが、手始めにこのお店の薬酒に挑戦してみるのも良いでしょう。
この三種類。左から
*赤いのは、筍花酒(しゅんかしゅ)。タケノコにできる菌が入っているもの。腰痛、肩こり、痛風、腱鞘炎に。

*黄色い八珍酒(ぱっちんしゅ)は、スッポン、蛇、朝鮮人参などのエキスが入ったもの。風邪の時、体力が落ちているときの滋養強壮に。

*黒いのは蟻酒(ぎしゅ)。中国の長白山に生息するありんこがすり潰されて上にぷかぷか浮いています。白酒本来の甘さに蟻酸(ぎさん)が出す酸っぱさが混ざり、またアリのプチプチとした食感も含めてキウイのお酒を飲んでいるよう。血液の病気に。

これら全て、白酒(パイチュー)に漬け込まれたもの。51度という高いアルコール度数が、血中をいち早く駆け巡ってからだ全体に行き渡り、素早く効能を発揮することにつながっているのだそう。なるほどです。

四千年とも五千年とも言われる時間が育んだ中国の食文化に魅せられ、日々実践を重ねる石橋さんですが、厨房で見せるその手さばきは一挙一動が素早く、めくるめくような動き。切る。揚げる。炒める。煮る。焼く。なんでもござれです。
客席からは伺いようがないのですが、厨房では日夜こんな手わざが展開されているのです。

お目当てのエビチリを食べて幸せ、などという満足感とは根本的に違う、もっとずっと大きなスケールの満ち足りた気持ちは、石橋さんに導かれるがままに楽しむこのお店ならでは。未知なる世界のなんと深いことでしょう。ここのお任せディナー、実に発見に満ちています。
ちなみに毎月第2、第4水曜日には石橋さんの奥さんがピアノ演奏を従えて歌うジャズを聴ける機会も。食に音楽に、ゆうに30年以上続くプロの妙技を一度に味わえる夜なんて、さぞかしオツでしょうね。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

龍口酒家 本店 (ロンコウチュウチャ)

住所
東京都渋谷区幡ケ谷1-3-1 幡ヶ谷ゴールデンセンター B1F
電話番号
03-5388-8178
営業時間
11:30~14:15 17:30~21:40(L.O.)
定休日
月曜日 他、月一回火曜日
平均予算
【夜】¥6,000~¥7,999 【昼】 ~¥999
最終更新日:2018.8.3
大きな地図で見る

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。