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鶯谷駅を降りて、最高級の「もちもち」を。| 月光

good mornings

公開日 2018年11月5日

台東区根岸の、お餅と日本茶がいただけるお店「月光」は、手しごとできめ細かくつきあげられたお餅の美味しさが大変に際立っています。噛むことの幸せ、ここに極まれり、です。

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もっちりとか、もちもちとか、よく言いますが、あの日本語は言わずもがな、ズバリお餅から派生したのだろうと思うのですが、そんな言わば弾力感の代表選手が最高においしいお店があると聞けば、一体どんな具合にもちもちなのか、つい思い巡らせずにはいられないでしょう。
鶯谷駅から歩いて5分ほどのところにある「月光」のお餅は、とてもきめが細かくよく伸びる上にコシもしっかりしていて格別の食感。お米本来の自然な甘みが穏やかに残る余韻がまたとても良いです。
その魅力をスタンダードに味わうなら、こちら「どんぶり餅」はおすすめのひとつ(こちらは小。大の場合はお餅5つ)。

自家製めんつゆに浸かった、そのまるまるとした白く柔らかいものを、生わさび、もみのり・いりごま、辛み大根おろしの四種の薬味とともに味わう。ときおり、暖かいほうじ茶で喉元を潤してはほっとひといき。店内の空気と一体化したような心の安らぎが得られます。

主役たるお餅のなんと伸びやかなこと、試しに箸で真ん中あたりをつまんで持ち上げてみれば、15秒から20秒ほどもかけて少しずつ少しずつ、スローモーションを見ているように伸びてくれます。そのあまりのゆっくりさ加減に目が離せません。
もちろん甘味としていただけるメニューも。この季節(およそ10-11月頃)であれば「紫いもぜんざい」なんていうものも登場します。去年初めてメニューに仲間入りして大いに好評を博した、期間限定のぜんざい。深みのある紫いもペーストに、ほうじ茶アイスを溶かして混ぜれば美味なるマイルドさ(ため息)。
後味にヘビーなものが残らない、このいさぎよい甘み。お餅の焼き跡、そして小ぶりのさつまいもの色味といい、実に「秋」してます。

他にも夏のほうじ茶かき氷、お正月シーズンのお雑煮(さといものクオリティにも注目!らしい)といった具合に、期間限定メニューで四季折々に楽しめるのも覚えておきたいところです。
こんな特別な喫茶時間を日々提供しているのは、店主の堀口智一(ともかず)さん。荒川区らしい昭和レトロ感で知られる商店街「ジョイフル三ノ輪」の一角にお店をオープンした2004年からの12年間で確固たる評判を築き、二年前からはここ台東区根岸の地に移り、相変わらずの、本当にこのお店にしかない味わいでファンを魅了し続けています。
そのお餅づくりは、正午からのオープンに合わせ午前中から始まります。青森県は五所川原産の「あかりもち」を使い、その豊かな甘みが最大限に生きるよう入念にふかした餅米をつく作業から。
頭部のあたりまでやや振り上げた 3キログラムの杵を、膝を上手に使い体重を重心移動させて落とすこと約15回。バラついた米粒を濡らしたしゃもじで寄せ直す「返し」の作業を挟みつつ、また杵つきを15回ほど、という作業をしばし繰り返します。

お祝いの席などに出向き、芝居仕立ての餅つきパフォーマンスをしてみせる集団・祝組(いわいぐみ)の門を叩いて学んだという、その体の使い方。力任せにやっていては足腰が疲弊してしまい日々継続することも望めないというこの作業、彼がそれをこなせるのも確かな技術を体得しているからこそなのでしょう。
自らが心を込めて手がけたものだからこそ、自信を持って提供できる。かつてサラリーマンとして大きな組織の中のいち社員として働いていた頃には得られなかった自負の気持ちと満足感を、もしかしたら一番感じているかもしれない瞬間です。

ベチベチからペチペチへと、杵つきの音の質感にわずかながらも変化が生まれ、米粒のかたちも相応にだんだんと原型をとどめなくなっていきます。「返し」の作業もしゃもじから素手に切り替え、引っ張ったり伸ばしたり。どこかしらムラになってしまっている箇所をこの段階で見つけて均一にしていくのです。
最初から最後まで、つごう約20分。こうしてつきあがったお餅は、絵に描いたようなもちぷよ感。見た目にもつるつるでなんだかかわいらしくさえ思えてくるのは、「もち肌」なんて言葉すらある日本語を話す者としての性でしょうか。
片栗粉をまぶしたまな板の上に広がる、ぷよぷよとした白い大きなもの。手を離せば少し時間をかけてだらんと広がるさまも、やっぱりキュートというほかありません。
これが、小気味よいリズムで回転させるような手つきで綺麗に丸くもぎ取られていき、最終的には60〜70ほどもの小さな、テーブルでご対面するあのサイズのお餅になるのです。
これまでの人生経験から想像されるもちもち感を、鮮やかに上書きしてみせる月光のお餅。とっておきの和な食体験をさせてあげようと、外国人の友人を連れてやってくるお客さんもまま見られるとのことですが、実になるほど。
かつてあの正岡子規が晩年を過ごしたという根岸のまちですが、もし子規が今生きていたら、月光のお餅からどんな一句をひねり出していたでしょうか。
(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

月光

住所
東京都台東区根岸3-7-18エルアルカサル鶯谷1F
電話番号
03-5849-4569
営業時間
平日 12:00〜19:30(LO 19:00) 土日祝 12:00〜19:00(LO 18:30)
定休日
水曜日
平均予算
~¥999
最終更新日:2018.9.4
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。