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まちになじんだ、淡く優しい99歳の水色 | 根津教会

good mornings

公開日 2018年11月24日

根津といえば根津神社。といった具合に何かと和なイメージの強いこの界隈ですが、駅から神社に至る通り道からごく近い場所には古めかしくも優しい外観の教会もあって、見逃せません。

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外を歩いても、ラジオを聞いても、巷は何かとジングルベル。一年も終わりに近づくタイミングであるのもあいまって、年末総決算的なクライマックス感と共に味わうのが、言わずもがな、日本の年中行事としてのクリスマスです。
がしかし、いつか観た洋画のワンシーンのように、電飾きらびやかな特大ツリーよりもサンタクロースよりもまず、家庭や教会で過ごす姿のおごそかさ。クリスマスはもともとキリストの生誕を祝う記念日だったのだとふと思い出させる光景が、こんな、何の変哲もない根津の路地にひそんでいます。

根津教会は、来年でちょうど100年を迎える木造建築。淡く優しい水色の壁に、赤レンガでできた塀と門柱。全体として柔和で味わい深い雰囲気をまとっていて、何はともあれ、一世紀という時間の長さに思いを馳せたくなります。
関東大震災も東京大空襲も免れ、今なおその姿をとどめる礼拝堂は国の有形文化財。その内部もまた、この時代の木造西洋館ならではのピュアな趣き深さに包まれています。

説教壇を建物のかどの部分に置き、それに相対する長椅子を扇型に配することで、より「会衆」(聴衆)に説法が届き、より十字架への視線が集まるようにという設計がなされているのですが、これはメソジスト系キリスト教会の建築の特徴なのだそう。
窓から差し込む光の柔らかさには、単なる穏やかさを超えて希望の気配すら感じとられるかのよう。神という目に見えない存在を信仰するクリスチャンにとって、このような場所に定期的に身を置くことがどれだけ大きなことを意味するのか、少なからず理解できるような気が。

心の安寧と生きる希望が、見た目的なものも含めて「実感として得られる」場。そういうよすがとしての礼拝堂、ということなのかと思います。
天井の明かりの装飾は、オリエンタル感のある唐草模様。教会の牧師である齋藤さんによると、この建築に関わった中心人物は外国人宣教師だったのでは、とのことですが、こういう細かな部分がローカライズされていたりするのも興味深いところ。
人というのは何かしらこだわってみたくなるもの、らしいです。

会衆が座る長椅子の、背もたれを支える箇所にも百年の歴史。ほぞとほぞ穴の接合部が、空きが生じては新しい木片でそれを埋めて、という補修を適宜繰り返しているのがわかります。おじいさんの古時計的なしみじみ感。
こういった要素のいちいちに覚える、「長い年月を経て、今ここにある」感。神社仏閣ならいざ知らず、教会というピュアな西洋建築は見慣れないぶん、経年変化を目の当たりにして抱く感慨もどこか新鮮です。

老朽化に加え信徒が増えて集会所が手狭になったこともあり、この建物は2009年に大規模な再生工事が行われ、今に至っています。当時牧師を務めていた鍋谷氏の編纂による、一連の経過の詳細を記した本も出版されており、その一大プロジェクトぶりが伺えます。
これを経て、道路に面する礼拝堂のその奥、路地からは目にすることのない部分が奥に伸びるかたちでスペース拡張されるなどしたのが現在の教会施設。そのいちばん主要な変化といえるのがこの「新」集会室が設けられたことです。
天井にいくつか伺えるアーチが船の竜骨部分を、窓側にあるステンドグラスが波をそれぞれ象徴しているという「ノアの箱舟」をテーマにしたこんなデザインも、教会ならでは。

礼拝や賛美歌などの各種集会の後にここで食事会を催すのも恒例のようで、「同じ釜の飯を食う」者同士として持つ共同体意識も、こんな造りであればこそいっそう強まるのでしょう。
とても家族的、かつ外部にもよく開かれているとの評判の根津教会。根津神社で毎年5月に開催されるつつじ祭りでは、この界隈の各所で関連マーケットが出店する中、この教会内でも古本バザーが開かれ多くの来客で賑わうというのも、谷根千的です。

さらには年に一度の「教会コンサート」(2月)ならびにあの立川一門の出演による「教会寄席」(10月)まで。

取り立てて観光名所に仕立てられるわけでもなく、週末には通りで礼拝堂をスケッチしたり写真に収める人の姿も散見されるような「ごく自然にそこにある」さまは、日本という国における教会やキリスト教の立ち位置を考えれば、これは貴重といってよい眺めかと。
グルメに恋にプレゼントに、アッパーで高揚感あふれるクリスマスも単純に楽しいでしょう。けれど、真摯な祈りをこの日にこそ一層捧げるキリスト教のこころに触れることで、世界に多数のクリスチャンを抱える現代の世界への興味も、そして間も無く新年を無事迎えられるありがたみも、じわり高まってくるはず。
(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

根津教会

住所
東京都文京区根津1-19-6
電話番号
03-3821-6342
最終更新日:2018.11.26
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