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お江戸風情、自分の力で醸し出そう。「泪橋 大嶋屋」の提灯(ちょうちん)文字入れ体験

good mornings

公開日 2019年7月1日

荒川区なら、伝統工芸に触れられる機会も比較的身近。南千住では提灯(ちょうちん)に文字を書き入れる「提灯文字」体験に、100年以上に渡り受け継がれる高度な技術を有する職人のもと、取り組むことができます。

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江戸期にさかのぼる伝統的なものを含め、ものづくりの担い手も数多く住まい、職住隣り合わせの生活を送る荒川区。区内には、そんな彼らのものづくりに触れる機会も実は数多く見つかります。

例えば、南千住は泪橋(なみだばし)交差点にほど近い「泪橋 大嶋屋」で日常的に催される体験の機会もそのひとつ。まっさらな提灯(ちょうちん)に文字や絵を書き入れるのを代々の生業とする職人一家の仕事場にお邪魔し、その制作をコンパクトなかたちで体験できるというものです。
大通り沿いの戸をガラガラと開ければ、土間越しの高い床。戸を隔てそのすぐ隣でまちの日常が営まれる、そんな環境で日々手元・筆先に心を込め仕事に勤しむこちら村田さん親子が、ここの三代目・四代目です。
曲面であり細かな凸凹も多数という、一貫して難所だらけのフィールドに綺麗な手書き文字を(たまに絵も)施して見せる父・修一さん。その、素っ気ないようで実は温かい見守りサポートのもと、サイズの小さな提灯に自分の好きなひと文字ふた文字、書き入れてみるというのがここで体験できることです。

所要時間の60〜90分にわたり、かたわらから終始こちらの手元を見ていてくれる、口調も穏やかなるわが師匠…!
手始めは下書き。修一さんからいただく実寸サイズのお手本を手元に、それをチラチラとみながら和紙に引くはじめての線描。あくまで目視で見当をつけつつ、少しずつ書き進めます。

セオリーよりは実践こそがモノをいう提灯文字の世界は、まっすぐうつくしく縦線を引くことすらちょっとやそっとではままならない難しさ。表面の内側で横方向に張り巡らされた針金(に和紙がコーティングされたもの)が作りだす線、そして縦方向にわずかに透けて見える中心線をガイドラインとするわけですが、これがなかなかにハードルの高い模写なのです。
太い江戸文字ということもあって、いまのこの線が何の字のどの部分をなすものなのか、度々わからなくなる。そんな「木を見て森を見ず」な自分でいいのかなと思いつつ手を動かし続けることしばし、師匠の足跡を追うような気持ちで模写した文字が一応のかたちを得れば、第一段階クリアです。ホッ。

続いて鉛筆を筆に持ち替えての着色作業。まずは下書きをなぞって文字の外枠線を書くのですが、消しゴムという修正も効かないだけに、ここからが言ってみればちょっとした背水の陣と言えましょう。
無言で指先に精神を集中させるべき、一筆入魂タイム。

こうしてひとたび外枠がキマりさえすれば、ちょっと安心して中身を着色していけるというもの。青に紫にピンクにオレンジに、ビビッドなカラーからお好みを選んで、塗り絵間隔で筆を進めれば出来上がりです。
最後、左下にハンコみたいに朱色の印を書いてみればグッと増してくる「これ、自分の」感。蛇腹部分をたたんで、持ち手部分に当たる「弓」と一緒に紙箱に収められ、これを持ち帰るという流れです。

こだわりの程度はさておき、何かしら自分好みで選んだ文字がこうして完成した様子には、それが文字としてもつ字義通りの意味を読み取る以上に、どこか鏡で自分を見ているかのような心のざわつきを覚えたり。性格が丁寧か雑かという単純なものにはとどまらない、これはちょっとした自分振り返り時間です。

とりあえず、多少の線のガタガタや色ムラもちょっと距離を離して見れば割と気にならないので、書のたしなみに自身のない人でも、どうぞ。

四代目の健一郎さん。次々に仕上げるその速さが。

三代目の肩書きを得てあと4年で半世紀を数える修一さん、またそもそもが大正2年に始まり今年で107年を迎える「泪橋 大嶋屋」。その手がける文字を載せた提灯や行灯(あんどん)は三社祭をはじめとするお祭り、あるいは歌舞伎の舞台の小道具としても、各種現場に凛とした雰囲気を吹き込み続けてきました。

四代にまたがるその歩みの現場で、と思うと心なしかキリリと引き締まるもののある、こんな体験のひとときは荒川のまち、江戸文化、ひいては日本のリアルな姿を五感で知る良い機会となるはず。
この提灯文字入れ体験、要事前予約、お値段税込み2,400円(学生1,800円)になります。

(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

泪橋 大嶋屋提灯店

住所
東京都荒川区南千住2-29-6
電話番号
03-3801-4757
最終更新日:2019.7.10
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