南向きの部屋にしか訪れない、昼どきの幸せがあります。たとえいっときわずかでも陽が射し込むときの、あの無条件の期待と高揚感。
ゆたかな陽光を予感させる部屋は、それだけでただただ素晴らしいものです。
ゆたかな陽光を予感させる部屋は、それだけでただただ素晴らしいものです。

ここは玉川上水緑道からもすぐ、静かな住宅街のさなかに立つ「西参道テラス」の1階にあるStyle-Hug Gallery(スタイルハグギャラリー)。
外観的な佇まいこそさりげなくも、実は世界三大デザイン賞のひとつ・iF(アイエフ)DESIGN AWARD 2019で栄えある金賞を受賞している注目の集合住宅。その一室が、この、器をはじめ生活美をかたちづくるものたちの在りかであるギャラリー空間です。
外観的な佇まいこそさりげなくも、実は世界三大デザイン賞のひとつ・iF(アイエフ)DESIGN AWARD 2019で栄えある金賞を受賞している注目の集合住宅。その一室が、この、器をはじめ生活美をかたちづくるものたちの在りかであるギャラリー空間です。


独特の選択眼のもと、「これは」という作家の作品を空間全体に配して8日ほどの会期で開催する展示会の数は、年を通じ計20回ほど。
訪れるそのつど、個々の作品に備わっているのは優しくもこちらの目を離そうとしない、引力めいた魅力。世情や世代を反映した作家的動機や志向を教われば、より感慨深く、心もざわつく。
眼に映る美しさの背後には、どうもそれなりの深い何かが決まってあるようだと、ここでは知ることになるのです。
訪れるそのつど、個々の作品に備わっているのは優しくもこちらの目を離そうとしない、引力めいた魅力。世情や世代を反映した作家的動機や志向を教われば、より感慨深く、心もざわつく。
眼に映る美しさの背後には、どうもそれなりの深い何かが決まってあるようだと、ここでは知ることになるのです。

この場を営む尾関倫衣(のりえ)さんは、出身がインテリアデザイン。フリーで家具のデザインを手がける日々の中で必然的に器への興味も抱くようになり、当時友人が神宮前二丁目に構えていた小さな本屋の、そのまた小さなテーブルの上で小規模な展示を催すようになったのが、今に至るストーリーのはじまり。

必ずしも世に知られていない職人や作家による一品、その潜在的な優れた価値がもっと知られさえすれば、安定的に買い手がついて制作も継続でき、その技術や作風も途絶えることがなかったはずなのに。そんな口惜しい事例も少なくない現状を受けて、何かできることはという使命感混じりのパッションとともに始めた展示は、やがて自身のデザイン事務所の一部をその場に割り当て拡大展開することに。
2007年、かくして原宿のマンションの一室に立ち上がったStyle-Hug Galleryは、ことし一月からはこの真新しい環境下、その変わらぬ目のたしかさで発信を続けています。
2007年、かくして原宿のマンションの一室に立ち上がったStyle-Hug Galleryは、ことし一月からはこの真新しい環境下、その変わらぬ目のたしかさで発信を続けています。

このほど7月6日から13日にかけて開催された「棚橋祐介展」では、多治見で活動する当作家の作品群、点数にしておよそ450もの数が一同に並びました。
ひとつ、それらに特徴的なのは、栃の渋(しぶ)を使って染められたごく繊細な貫入(かんにゅう)の模様。一見フランスのアンティークのようでありながら、シンプルな線描がそれだけで立派にデザインたりえているあたり、確かな日本的感性をうかがうことができます。
ひとつ、それらに特徴的なのは、栃の渋(しぶ)を使って染められたごく繊細な貫入(かんにゅう)の模様。一見フランスのアンティークのようでありながら、シンプルな線描がそれだけで立派にデザインたりえているあたり、確かな日本的感性をうかがうことができます。

異なるルーツに根ざした文化や感性にさらされつつ、それらをひとつのかたちあるものへと綺麗に着地させるそのさまには、同時代を生きる日本人として示唆的なものを感じはしませんでしょうか。
このような展示会の合間を縫って、外部の講師を招き催されるワークショップも豊富。日本漆を用いた本格的な「金継教室」、季節ごとの「花しつらい教室」、「日本茶こよみ」、フレグランスの教室「香譜(こうふ)アトリエ」ほか多岐に渡ります。
時間をかけて育まれた二十四節気の知恵などを学び、その上で自ら手を動かす一連の過程で得るのは、目に見えないものも多分に含んだ、とてもリッチな何か。目利きとしてすこぶる評価の高い尾関さん自らが「本気で進んで知りたい、触れてみたい」という本気度相応の収穫があるはずです。
このような展示会の合間を縫って、外部の講師を招き催されるワークショップも豊富。日本漆を用いた本格的な「金継教室」、季節ごとの「花しつらい教室」、「日本茶こよみ」、フレグランスの教室「香譜(こうふ)アトリエ」ほか多岐に渡ります。
時間をかけて育まれた二十四節気の知恵などを学び、その上で自ら手を動かす一連の過程で得るのは、目に見えないものも多分に含んだ、とてもリッチな何か。目利きとしてすこぶる評価の高い尾関さん自らが「本気で進んで知りたい、触れてみたい」という本気度相応の収穫があるはずです。

「香譜アトリエ」では、ミント、シナモン、クローブを用いた100%自然香料の香水づくりも。
作家と二人三脚して綿密に企画を練られて開催される展示会やワークショップ。それが功を奏してということも大いにあってでしょう、のち数年かけて作家が広く名を馳せるに至ったケースも多数です。
「作家さん本人の頑張りに並走させてもらうようにして息長く取り組んで、あるときそれが確かに実ったと確信できるときは、純粋にとても嬉しい」という尾関さん。彼女が作家に働きかけ製品を企画・製作することもかれこれ15年近く前からコンスタントに続けられており、それらをアーカイブ的にまとめた一冊の本が著されてもいます。
「作家さん本人の頑張りに並走させてもらうようにして息長く取り組んで、あるときそれが確かに実ったと確信できるときは、純粋にとても嬉しい」という尾関さん。彼女が作家に働きかけ製品を企画・製作することもかれこれ15年近く前からコンスタントに続けられており、それらをアーカイブ的にまとめた一冊の本が著されてもいます。

使い勝手などのいわゆる「用の美」についても。方や、心が上向く美しいすがたかたちのことも。
生活文化の優れた理解者である彼女が持つその目とこころざしには、作り手たちとここを訪れる人たちと、あらゆる角度から信頼が寄せられています。
(文:古谷大典)
(写真:奥陽子)
生活文化の優れた理解者である彼女が持つその目とこころざしには、作り手たちとここを訪れる人たちと、あらゆる角度から信頼が寄せられています。
(文:古谷大典)
(写真:奥陽子)
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