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至高の輝きをつくりだす職人一家に教わる。「日伸貴金属」の銀器制作体験

good mornings

公開日 2019年8月14日

黄綬褒章受賞の師匠・上川宗照とその三男一女、計5名の銀師(しろがねし)が製作に勤しむ「日伸貴金属」の工房。ここでは匠の手技が生み出す伝統工芸への理解を深めつつ、しおりや指輪やぐい呑みといった銀器製作に挑戦することができます。

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その手しごと、古くは元禄にさかのぼる職掌につき。
当時の文献にも記録が残され、300年以上の時を経て今なお受け継がれる銀師(しろがねし)の技術。

刀剣のつば、お神輿の飾り、装身具、食器類など、日本に古くから伝わる伝統的な道具には、高度な金属加工が施されていることが少なくありません。銀細工を手がける彼らの手わざの跡もまた同様。多岐に渡ります。

湯沸かし(タンパン古美仕上げ)

台東区三筋に工房を構える「有限会社 日伸貴金属」は、明治生まれの初代を継いだ二代目上川宗照(そうしょう)氏を筆頭に、その三男一女もみな銀師という職人一家が製作・販売を営む会社組織。

5年前には黄綬褒章を受章した名匠である宗照氏。その長男である善嗣(よしつぐ)さんも、銀師としては「上川宗伯(そうはく)」の名でかれこれ26年ほども銀器づくりを手がけています。
地域が誇る「東京銀器」ブランドの一役を担う存在であるのはもちろん、台東区内の高校に体験授業で出張したり、区が姉妹都市提携を結び30周年になるオーストリアのウィーン市へと、区の代表使節のひとりとして訪問したり。

ひとりの台東っ子として、地域ならびに職人の文化を重んじ、伝え続けています。

工房で設けられる製作体験は、そんな経験・実績ゆたかな善嗣さん達からじきじきに教わることができるという、実に貴重な機会です。

現場で目にする金槌や当てがねといった道具類は、それ自体が近隣に住む専門職人の技術なしにはできない特注ものばかり。彼らが廃業する例がたび重なる今となっては、満足のいく頑丈さや使い勝手を備えたこれら道具をイチから揃えることなど、とても望めない。そう聞けば、ここの景観をなすあらゆるディテールを注意深く目に焼き付けておきたくなるのでは。
体験で作ることのできる銀器には、「しおり」、「ぐい呑み」、そしてファッションギアとしてもロマンチックな贈りものとしても役立ちそうな「指輪」も。

完成品に比べやや小さな銀の輪っかを元手に、それを打ちつけ然るべきサイズにまで輪の大きさを広げたのち、お好みで模様をつけたら完成、という行程でつくります。

まず手始めにゲージに指を通し、全30種類の中からジャストなサイズを決めておきます。
ついでここからが本番。細長い棒状の「芯金(しんがね)」に素材となるリングを通し、それを小さめの金槌でトントンと叩いていきます。

上から下へ行くほど太さを増す芯金をこうして角度をつけて構えた上で、リングを叩けば、その輪の大きさが少しずつ少しずつ広がり、リングも下へとさがっていくのです。左手を少しずつ回して一周させつつまんべんなく。

定めたサイズに対応する目盛りのところまで、進めます。
意外にも、振りかざしてカーンカーンとやる必要は全くなく、とんとんと繊細に叩くだけで十分。銀はほんとうに柔らかいのだと実感するところです。金槌ごしに得られる、金属を「打ち伸ばす」という感覚はなかなかに新鮮。

叩くことで銀は強度を増すというのですが、鳴りの響きも確かに高く変化していくような。

所定のサイズまで広げられたなら、金槌の角の部分で叩いて槌目(つちめ)模様をつけていきます。
左上から右下への斜め線をつけながらリングを一周させるも、その逆にするも、両方合わせて罰点模様にするも、全てはお好み。まだら模様にすれば、乱反射してきらめきが増します。

繊細にトントンとするだけで十分なのはここでも変わらず。贈りたい人がいるアナタ、模様ともどもここが愛情の込めどころです。

それも済んだら磨きを入れます。クリーム状の研磨剤で20〜30秒ほども磨けば、見違えるほど光沢を帯びるように。最後の最後、上川さんの手により、ごく細かな凸凹をならすヤスリ磨きがなされればそれでめでたく完成。

磨き終えたものが左。打ちつける前の素材と比べれば、輪の大きさと輝きの差は明白。

金属の中でも最もよく反射するというシルバーならではのまぶしさ。歴史を通じてあらゆる文化で珍重されてきたこの貴金属のことが、自分で手を動かせば一層なじんできます。

江戸以来の伝統技術の一端を垣間見ることのできるこの工房ですが、当時に限らず、現代を生きる匠ならではという作品も。カップアイス用の純銀スプーンもその好例です。
握った瞬間、指の熱が即時にさじの部分にまで伝わるので、冷蔵庫から取り出したばかりのキンキンのやつをスムーズにサクッとすくうことができる優れモノ。あらゆる金属の中で最も熱伝導率にすぐれ、かつ抗菌作用もある銀の特徴が活かされた、まさしく「用の美」を兼ね備えた逸品です。

他にもバングルやブローチ、耳かき、コップ、クリスマスツリーなどなど「この時代に役に立つ銀器とは」と、工房が他でもない現代に即した動きを見せていることが、HPに掲載の諸作品にも見てとれるでしょう。
その功績が黄綬褒章というかたちで最大級に讃えられている師匠を筆頭に五人もの匠の仕事場であるこの工房、紛れもなく伝統文化の「息づく」場です。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

日伸貴金属

住所
東京都台東区三筋1-3-13 伊藤ビル1階
電話番号
03-5687-5585
営業時間
9:00~18:00 工房見学、体験教室は要予約
最終更新日:2019.8.5
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