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目を見張る一枚絵ができる多色摺り体験も。「木版館」にはカナダ出身職人のまことの絵心が

good mornings

公開日 2019年8月30日

浮世絵など、日本に古くから伝わる木版画の世界。カナダ出身の彫師・摺師であるデービッドさんが開いたこの施設では、私たちが知っているようで知らないそのこころに本格的かつ客観的に触れることができるでしょう。

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美味しいこと、楽しいことがわんさかてんこ盛りの浅草中心部。まちがそのままテーマパークといった様相を見せるこのエリアではありますが、こと和の文物を扱うお店だと客層のメインターゲットを外国人観光客に据えていることも多数。日本人、ましてや東京在住の人にとってみればちょっと物足りないかも、なんてこともままあるでしょう。

しかしそこで高を括ることなかれ。こんな驚くべきケースも実はありました。
大きなバレンが目印の「木版館」は、遠く青梅の地に工房を構え、長年に渡り伝統木版画を制作し続けてきたある男性が開いたお店。

インターネットでの通販、また工房から制作のようすをYouTubeやTwitchで動画配信するうちに海外を中心にファンも増え、5年前には初の実店舗をここ浅草六区通りにオープン。細長い店舗スペースの一角には作業場も設け、すでに彼を知る人はもちろん、そうでない人も浮世絵に代表される日本の伝統木版画に親しめる場となっています。

江戸期の諸作品の復興版、それにオリジナル作品なども多数。

作業場にいるのはもちろん、この場の主(ぬし)たるデービッド・ブル(David Bull)さん。青梅の工房とここを往復しつつ、常日頃よりストイックなまでの情熱を胸に制作に励んでいます。
浮世絵に魅せられた彼が全くつてのないまま日本にやって来たのは、1985年のこと。イギリスに生まれ、のち幼少期に移り住んだカナダ国内を転々としていた20代のあるとき、とある飲食店でふと見つけた作品にすっかり魅了されてしまうや否や、頼れる師匠もお手本がないのもお構いなしに、現地でひとり木版画の制作に取り組み始めたのでした。全くの独学です。

絵師が手がけた絵を元手に、木を彫って版下を作る。色を付ける。和紙をあてがってバレンでこする。これを色の数だけ繰り返すごく単純な工程を経てできる印刷物が、絵画作品に劣らない奥深さを備えている不思議。彫り方ほかその美しさを支えるだけの技法には、自分だけではどうにも見つけられない部分もあると思うなり、即日本に渡り、その道の職人に頼み込んで作業を間近で観察させてもらったことも。以後、日本に居を定め探求を続けることになります。
必要とあらば、ためらうことなくどんどん先を進む。そんな北米らしいフロンティアスピリッツの持ち主がこれほどまでに情熱を寄せ、その半生を捧げるに至った日本の伝統木版画とは。

彼のこれまでの足跡を思うにつけ、日本に生まれ日本に暮らす私たちの方こそ、手に取る一枚一枚、真新しい心で味わってみたくなるはずです。

4人とも皆さんご存知の、あの。目を見張るアレンジは他にも多数。

彼の作品のみならず、彫師(ほりし)として、摺師(すりし)として彼が腕を動かすようすを直に見れるとあって、来店者の9割を占める外国人の中には「浅草に行くなら是非ここに!」と喜び勇んで来訪する彼のファンが少なくありません。

また、彼らに限らず日本人でも取り組んだことのない人がほとんどでは、という伝統木版画の体験も出来ます。所要時間はおよそ1時間で、料金は税別2,000円。

スタッフの方たちに(ときにはデービッドさんも交えつつ)教わりながら、版に色をつけ、バレンでこすって、という作業に取り組むことができます。ワンドリンクいただけるブレイクタイムも。
青や黄色といった色ごとに用意された版の上を、はけを走らせるようにして絵の具を塗る。のち、ずれないように正しく紙をあてがったその上をバレンでこすり、色を定着させる。

黄色、青色、黒と順を追うごとに、一枚の紙が一段階また一段階と階段を登るように完成に近づいていきます。

左右両端に付けられた「見当」という目印にしっかり合わせて。「見当違い」も「見当をつける」も実はこの木版画用語がルーツという驚き。

版木には堅い山桜の木。凹んだ部分にバレンが落ちてしまわないよう、バレンは小さな円を描くように。素人目にはまったく予想もつかない色味のぼかしなどがいったいどうやってかたちになるのかが、作業のなかで、じわりじわりと明るみになってきます。

江戸時代にほぼ確立されていたであろうメソッドのあれこれに、先人の知恵のすごさを思いつつ完成するのは、A4ほどの大きさの絵。ぺろっとその姿があらわになります。
ちなみに同じ版を使ってもデービッドさんの手にかかれば、この通り。さすがのマスター、色のムラなく鮮やかなるその出来栄えがお見事です。
一度に最大4、5人で同時進行できるので、一つの作品をつくって互いに見せ合う「プリントパーティー」なんかもよさそう。うなぎの寝床みたいに細長く広がる店内のいちばん奥で、外の喧騒もどこ吹く風の風流なひとときが過ごせます。

(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

木版館浅草店

住所
東京都台東区浅草1-41-8
電話番号
070-5011-1418
営業時間
10:00〜17:30
定休日
火曜日
最終更新日:2019.8.26
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