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都会のさなかに、360年続く組紐(くみひも)の美 | 有職組紐 道明

good mornings

公開日 2019年9月4日

東照宮など江戸古来の歴史に触れられる上野公園。そこから少しだけ南をゆけばこんどは組紐(くみひも)ひと筋367年のお店も。数ある商品が職人達によってまさにこの場で作られ、体験の機会も提供されています。

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絹や金糸をこまやかに組み込んで作る組紐(くみひも)。繊細な染め色とともに巧みにかたちづくられる柄で世界的にも独自の発達を遂げた日本の紐ですが、その一大発信地が不忍池のすぐ南、夜も盛んに華やぐ街の一角に、実はあります。

有職組紐 道明(ゆうそくくみひも どうみょう)。創業1652年、十代に渡って続くお店です。

店頭の麗しの姿は、まさにこの場でつくられるもの

戸を開ければ、浮世絵に描かれた呉服屋さんを思わせる座売りスタイル。「有職組紐 道明」1階の店舗空間には土間(という響きもなつかし)からおよそ35センチの高さにある畳が3.5畳。その上、小さくとも所狭しと職人技術の結晶が並びます。柄と色の宇宙みたい。
近しくも確かな個体差の認められる(つまり個々にしっかり作り分けられている)色という色。模様にも西大寺、三井寺、中尊寺といった由緒正しきお寺それぞれに代々伝わる模様があるそうで。

もとは、刀のさやにつける下緒(さげお)、それに鎧兜といった装身具として。また経典などの巻き物を縛ってまとめるものとして。裾野広く細部に至るまでこだわりを見せる日本人らしく、サイズそのものは小さいながらも、組紐には文物の美的価値も高める大きな役割が担わされていたようです。

現代ならではというネクタイは、織物にはないテクスチャー感。

その技術と多様性は鎌倉、室町、江戸と時代を下るごとにいっそう度合いを増して今に引き継がれ、着物の帯締めなど装いの場でその彩りを発揮しています。

こういった手の込んだアイテムのひとつひとつは、意外にも、このビルの上階で一貫して生産されています。糸を染める段階に始まる、知られざる上野のまちの手工業がこんなところに。
糸を染料につける染色作業では、手元に置いた過去作を見本に、それとにらめっこしつつ。どこまでも数値化できなさそうなこのアナログ力の光る作業の結果が、店頭で目にする驚きの繊細さを持つグラデーションです。

糸を干して乾かした次には、ぴんと張ったまま糸を巻き取る作業を。後の作業で糸を一本ずつ取りやすくようにするべく整理する段階です。テンションのかかった絹糸の光沢がなんともきれい。

絡まぬように注意を払いつつ、右のトンボから左の小枠(こわく)へと。

こういったことを済ませたその次に来るのが、とても複雑なあやとりの作業。

座して高台と呼ばれる専用の作業台に向かい合い、所定の色および数の糸を所定の場所にセットした上で、織物を織るように紐を「組む」のです。
右側の手前からa番目の糸をb番目の糸の下にくぐらせて、c番目に移動したら、竹のヘラを使いキュッと目を詰めて、ということを、対象とする糸をつど変わりつつ繰り返し行います。
ボタンの掛け違えのようなことになっては大変なので細心の注意を払いつつ。

柄や太さによって綾取りの順序は個々に異なるので、楽譜のように記されたレシピ「綾書(あやがき)」と逐次照らし合わせつつ進められます。模様の複雑さによっては、その道40年のベテランの腕前を以ってしても一日でわずか数センチの長さしか進められないという、非常に手間のかかる作業です。

縦糸と横糸を交差させる「織り」と異なり、この「組み」作業によって仕上がるのは斜め線同士が交差してできる、ひし形の連続。伸縮性にも富むのもこのためです。

組紐を体験する機会も

このような組紐について気軽に体験したり、座学も含めた教室の機会が用意されているあたりは、さすがの360年企業。この教室、神楽坂でも有数の趣深さをほこる兵庫横丁沿いにある同社のギャラリー「DOMYO神楽坂ギャラリー」にて実施されています。
初めてという人向けのコースは、もっともシンプルな組み方「奈良組(ならぐみ)」でブレスレットやネックレスなどを作るというもの。

使用する作業台「丸台」に対して紐がXの文字を描くように張り巡らされたようすは、それだけで凛とした美しさ。この位置を組み替える操作をするだけで、下の方から模様を描いた紐が出てくるとは、なかなか新鮮でしょう。
おもりによって自然にテンションがかかった状態の紐を、順番を間違えずに交差させていくのには、初めて靴紐の結び方を覚えるときのような難しさも。いちど手の動きを流れとして掴んでしまえばスイスイ行けるはずなのですが。

回数を重ね時間をかけるなら帯締めづくりにもトライできるので、着付けを嗜む人など、どうでしょう。組紐の世界がたどる千数百年もの時間の流れに初めて身を寄せる感覚には、なんというか、日本人度がアップしたような気分を覚えるものと思います。

(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

有職組紐 道明 本店

住所
東京都台東区上野2-11-1
電話番号
03-3831-3773
営業時間
月曜~土曜 10:30〜18:30 日曜・祝日 10:30〜17:00
最終更新日:2019.8.7
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