神様になったような気分で俯瞰してみる楽しさ。目玉だけを動かし見渡す世界。
生き写しのごとく精巧というか、その場にいる"はずの"人の気配すらぷんぷん漂い、まるで白昼夢を見ているかのようです。
生き写しのごとく精巧というか、その場にいる"はずの"人の気配すらぷんぷん漂い、まるで白昼夢を見ているかのようです。

作り手の気持ちがモノの一点一点の帯びる光沢に乗って輝くような、まぶしさ。そんなただならぬ作品の数々は国内外の一部愛好家達をして「ミニチュアの世界を変えた」とまで言わしめるほどですが、素人ながらにただ無言でうなずくのみ。
キッチンまわりや酒場など飲食店の光景が多いのですが、それぞれがおいしそ過ぎます。
キッチンまわりや酒場など飲食店の光景が多いのですが、それぞれがおいしそ過ぎます。



ミニチュアやドールハウス(=ミニチュアサイズの家。ヨーロッパ発祥)の工房兼ショップ・ミニ厨房庵は、河合さん一家により営まれるお店。
父・行雄さんの先代が金属プレス加工の「河合工業所」を立ち上げはじまったその稼業は、20年ほど前から、屋号はそのままにこのようなミニチュア・ドールハウス制作へと意外な転換を果たして、今に至っています。
父・行雄さんの先代が金属プレス加工の「河合工業所」を立ち上げはじまったその稼業は、20年ほど前から、屋号はそのままにこのようなミニチュア・ドールハウス制作へと意外な転換を果たして、今に至っています。

行雄さん(中央)が金属を扱う一方で、朝子さん(左)・娘のあさみさん(右)は木工や粘土類を。
母・朝子さんがかねてから趣味で続けていたドールハウスづくりのパーツには、長年培った加工技術が活きるステンレス等の金属部品もたくさん。それもあって醸し出される独特のリアリズムが諸作品の大きな魅力のひとつとして、広く国内外に多数のファンを生んでいます。
店舗奥、プレス加工業の時代から変わらない工場で行う作業のようすや店内の作品群を見たいと、遠くヨーロッパやアメリカからやってくる人も珍しくないもよう。そのほとんどが海外で行われたドールハウス業界の見本市や展覧会への出品を通じ、この店のことを知った人たちです。
店舗奥、プレス加工業の時代から変わらない工場で行う作業のようすや店内の作品群を見たいと、遠くヨーロッパやアメリカからやってくる人も珍しくないもよう。そのほとんどが海外で行われたドールハウス業界の見本市や展覧会への出品を通じ、この店のことを知った人たちです。

11年ほど前に米国シカゴで行われたドールハウスショーを皮切りに、ロンドンで、バーミンガムで、と同様の機会を重ねるごとにその知名度は着実に高まり、企業からの発注案件も多数。
近年でもオーストリアのPuppen haus museum博物館から、企画展の展示物としてのミニチュアを製作するにあたり、金属まわりのパーツを全て依頼されるなどしています。
近年でもオーストリアのPuppen haus museum博物館から、企画展の展示物としてのミニチュアを製作するにあたり、金属まわりのパーツを全て依頼されるなどしています。


他方で、荒川区内のベテラン女医さんが営む歯科医院からの依頼で、待合室に飾るオブジェとしてのミニチュア診察室も手がけていたり。テレビのコマーシャルに使うセットの発注なども。
地元からも世界からも、ラブコールはあらゆるタイプのニーズから舞い込んでいます。
地元からも世界からも、ラブコールはあらゆるタイプのニーズから舞い込んでいます。

愛好家が自作するセットに付け加えられるよう、バラ売りも。
行雄さんが青年時代を通じて憧れた50〜60年代のアメリカのダイナーやハンバーガーショップ。看板建築の中華屋さん。デリカテッセン。『美女と野獣』の劇中のワンシーン。かのバンダイとコラボしてつくったというジャズバーでのバンド演奏のようす。
さながら、方々でパラレルワールドが展開されているかのような店内。
ときに1ミリ以下のこまかな寸法をめぐり喧々諤々(けんけんがくがく)と議論を戦わせたりもしつつ、一家三人、万事息の合った制作進行ができるからこその、このお店、このミニチュア世界の境地があるような気がします。
さながら、方々でパラレルワールドが展開されているかのような店内。
ときに1ミリ以下のこまかな寸法をめぐり喧々諤々(けんけんがくがく)と議論を戦わせたりもしつつ、一家三人、万事息の合った制作進行ができるからこその、このお店、このミニチュア世界の境地があるような気がします。

「全てを同じ縮尺にするのではなく、要所要所をデフォルメさせることでそれらしく見えてくる」だなんて、意外。
ちなみに体験(所要時間1時間〜、費用は1,500円から)を通じ、その制作がどんなかを肌身で感じることも可能なので、レジンや歯ブラシなど色々な素材・道具を元手にラーメンやピザを作ってみるのもいいかも。
未就学児でも高齢者でも、また経験者向けのレベルアップしたものまでいろいろ用意されているとのことで、誰でも楽しく「へい一丁上がり」できそうです。
未就学児でも高齢者でも、また経験者向けのレベルアップしたものまでいろいろ用意されているとのことで、誰でも楽しく「へい一丁上がり」できそうです。

いつか見た映画のワンシーンのようだとか、一種のデジャブ感覚を覚えるミニ厨房庵。夢とロマンのなんたるかを、数ある情熱の結晶が雄弁に物語る場所。
非常にさりげないその外観からはまったく想像のつかない世界へ飛んでいけるのを、どうぞお楽しみに。
非常にさりげないその外観からはまったく想像のつかない世界へ飛んでいけるのを、どうぞお楽しみに。

(文:古谷大典)
(写真:奥陽子)
(写真:奥陽子)
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