田端駅のちょっと北、住所で言うところの荒川区西尾久。目の前が東京上野ラインの線路に面していて地元民でもないとそうやすやすと行き当たるはずもないロケーションに、実は目を奪う眺めがあります。この通り。

卸も兼ねた専門店ならではの、眼前にどんどこ大量のところてんが並ぶさまは他に類を見ない圧巻の絵面。純然たるプレーンの味わいを基本に、加えて「梅じそ」、「中華」、さらには「黒蜜」も(!)。
スイーツとしてところてんを味わう。これ、小さい頃夢見た人も少なくないのでは。付属のちっちゃなスプーンで混ぜてすくえば、黒みがかった透明感が綺麗のなんの。
スイーツとしてところてんを味わう。これ、小さい頃夢見た人も少なくないのでは。付属のちっちゃなスプーンで混ぜてすくえば、黒みがかった透明感が綺麗のなんの。

そのままするするとすすれば、そのクリスタルなもの、蜜の優しい甘さとともに口中を潤し、温度がどうというのではなく、涼やかきもちよい味わい。ムードをさえぎる臭みとも無縁の中をひと噛み、またひと噛み。ライトな歯応えののち、つるりと喉もとを通りすぎゆくまでの全てにおいて、なんともシズル溢れるおいしさでしょう。黒蜜ところてん万歳。

戦後の傷跡もいまだ生々しい昭和24(1949)年に、今まさに店舗兼工場が立つこの場所で始められた山内商店。
当初、地域の飲食店や小中学校などを対象に販売はもっぱら卸のみだったのが、現三代目・山内茂さんが8年前にこの仕事を継いだのちほどなくして直売スペースを設け商品も多数開発。今やそのおいしさは地域を超えてより広範にわたって評判を獲得するに至りました。
当初、地域の飲食店や小中学校などを対象に販売はもっぱら卸のみだったのが、現三代目・山内茂さんが8年前にこの仕事を継いだのちほどなくして直売スペースを設け商品も多数開発。今やそのおいしさは地域を超えてより広範にわたって評判を獲得するに至りました。


種類豊富なあんみつは、フルーツ系やチョコクッキーなど、あんこが苦手な人でも色々楽しめる。
4種類のところてんのほかにも、寒天を使って供される10種類ものあんみつ、氷を載せていっそうおいしい刺身こんにゃく、それに白滝などなど。全24種類にも渡るそれら商品ラインナップが、二十年以上バリ島に通うサーフィン好きらしい南国テイストの直売ブースにて販売されています。
特に夕方など、「今日はアレ、まだある?」とか「おやつにあんみつ欲しくなって、来ちゃった」なんて立ち寄るお母さんやおじいちゃん、それにタクシーの運転手さんなどの姿がちらほら見られる店内です。
特に夕方など、「今日はアレ、まだある?」とか「おやつにあんみつ欲しくなって、来ちゃった」なんて立ち寄るお母さんやおじいちゃん、それにタクシーの運転手さんなどの姿がちらほら見られる店内です。

お店オリジナルの保冷バッグ。いってみれば常連さんの証拠かも(?)

食卓において絶大な存在感を放ち、きましたご馳走!とがっつくようなこともまずみられない食品なだけに、この山内商店のおいしさはそれを知ったあらゆる人の食の経験値を少なからず上書きするものでしょう。
全商品に通じる「臭みがほとんど無くて、その分歯ごたえが気持ちよく感じられる」ところとか、こんにゃくの「気泡のつぶつぶのおかげで調理時に味がよく染みてくれる」ところとか、安価だし色々買ってみるが吉、と声を大にして伝えたいです。
おいしくモゴモゴ食べるうちに満腹感も得られれば、お通じだって良好に。
全商品に通じる「臭みがほとんど無くて、その分歯ごたえが気持ちよく感じられる」ところとか、こんにゃくの「気泡のつぶつぶのおかげで調理時に味がよく染みてくれる」ところとか、安価だし色々買ってみるが吉、と声を大にして伝えたいです。
おいしくモゴモゴ食べるうちに満腹感も得られれば、お通じだって良好に。

こんにゃくなら、粉を練る機械に、昔ながらの空気がよく混じってくれるものを。全自動機械による量産アプローチでは実現不可能な味。

二代目の父が15年前に倒れたのを機に、いちどはお店をたたむ話も持ち上がったこともあった山内商店。ことしめでたく満70年を迎えることができたのも、あんみつのバリエーションとして最近また「梅はちみつ」なんていう新手の美味を開発してみせる茂さんの継続的な創意工夫のたまもののはずです。
ちなみにこの店内、工場で発生するこんにゃく独特の臭いを抑えるべく、香木を削っていぶしているという事ですが、その香りがまたココナッツみたいで純粋にアロマとしてイケているというか、内装の雰囲気に実にお似合い。寒くなるこれからの季節でも、ココで買い物するときはとりあえずこころ穏やか。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)
ちなみにこの店内、工場で発生するこんにゃく独特の臭いを抑えるべく、香木を削っていぶしているという事ですが、その香りがまたココナッツみたいで純粋にアロマとしてイケているというか、内装の雰囲気に実にお似合い。寒くなるこれからの季節でも、ココで買い物するときはとりあえずこころ穏やか。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)