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そのお野菜、武蔵野そだち。入植350年のパイオニア一族による「榎本正孝農園」野菜直売所

good mornings

公開日 2020年1月26日

三鷹駅北側、中央通り沿いにある榎本正孝さん宅の野菜直売所に並ぶのは、ここ武蔵野市の畑で一家が育てたフレッシュな野菜の数々。彼、江戸時代に現在の港区芝からこちらへと入植してきた、いわば武蔵野パイオニア一族の14代目でもあります。

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武蔵野市は都会と農が意外に近いまち。吉祥寺・三鷹・武蔵境といった駅の賑わいを離れた先、住宅街の一角で畑が広がっているのを目にすることもさほど珍しいことではなく、市内にある野菜直売所の数はいま現在なんと39を数えるほど。

地産地消、それに防災といった観点からも畑やみどりの保全に意欲的という、グリーンでアグリ(agriculture!)な自治体なのです。
江戸東京野菜のひとつ、ウド発祥の地も実は吉祥寺界隈。武蔵野市が、かたや大根で有名な練馬区とも北で接していることを思えば、それもなるほど。

野菜直売所の代表格として真っ先に挙げられるのは、市内中央の西久保に住む榎本正孝さん一家が自宅前で営む「榎本正孝農園」直売所。律儀に下の名前までつけているのは、この地域には榎本姓がたくさんいるから。
大根、白菜、長ねぎ、小松菜、人参、里芋。それに自家製のおしんこも。もろもろごろりと季節のお野菜、たたずんでいます。一家は隣の事務所や庭で作業していることも多いので、代金は小さな木箱の中へそっと入れておいて。

朝10時に始まって、お昼の手前と午後5時ごろが買い物客のピークタイム。商品がなくなり次第、終了です。
「小銭が面倒なので」と、100円・150円・200円といった50円単位での明朗会計。静寂のうちに済むことも多いこのほぼ無人販売の現場なだけに、野菜たちが持つ自然本来の個体差ともどもカタチの生命力、際立ちます……!

時は350年以上前の、町の大半さらに江戸城までもが焼けた明暦の大火。その反省から、火が燃え広がるのを防ぐための広場など「火除け地」がほどなくして各所に設けられるようになり、場所によってはそこの住民まるごと現在の山手線界隈から遠く離れた場所へと移住を余儀なくされるケースも。

当時、現在の港区芝・増上寺のあたりに住んでいた榎本さんの祖先もまたそのような経緯から、わずか15人ほどのメンツでここへとはるばる越してきたのでした。ひとっこひとりとして誰もいない、まさしくゼロからスタートだったもようです。

榎本正孝さん。町名の「西久保」もろともまるっと移住してからの14代目。

現在の町名「西久保」も、そんな地域のパイオニアである一族がこの土地を切り拓き・居を定めるにあたり前の住所からそのまま引き継いだ名前です(逆に港区には今やその町名は残っていません)。

近代になり武蔵野市の一部となるよりもはるか前から、おらがまち「西久保」でいのちのバトンをつなぎながら歩んできた一家の、その当代たる正孝さん。コミュニティセンターなどでの地域の歴史に関する講演を依頼されるのも、この地域、ひいては武蔵野市の今昔を誰よりも深く知っているから。

畑があるのは西久保からちょっと離れた武蔵境駅の南側。そこで収穫した野菜が自宅の軒先へと並べられる。

かつて竹やぶだったという正孝さん宅そばの景色のこと。戦前、中島飛行機の工場ができたことで住宅地が爆発的に増えまちも活気づいたこと。続いて戦時、空襲の際にはその軍事的重要性のため辺り一帯が集中砲火を浴び、自身も危うく命拾いしたこと。

いま近隣に自動車整備工場がいくつかあるのも、先代が中島飛行機で勤める中で培った技術が世代を経て今に受け継がれているから、などなど。その眼差しや口ぶり、身振りや手振りでまちの記憶の蓋をパカパカ開けてみせる、それはそれは貴重なまちの語り部です。

収穫する大根の数、1シーズンで4千本。かつて「大根大臣」の異名もとったらしい(笑)

また地震で水道がダメになった時への備えとして、数年前、東京都と武蔵野市からの依頼で直売所裏にあった井戸を再生したり。72メートルの深さから汲む水は地熱で「あったかく、冬場はありがたい」のだとか。もしも大きな地震が起きたとき、近隣住民はココ榎本(正孝)家の庭へ集合することになるそうで、実に頼もしい……。

知られざる東京の農のめぐみ。三鷹駅からの徒歩、あるいは吉祥寺駅からのバスでも、気軽にアクセスすることできます。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

榎本正孝農園

住所
東京都武蔵野市西久保2-3-12
電話番号
0422-51-1689
営業時間
10:00~17:00
最終更新日:2020.1.21
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