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マスターはお坊さん。迷える民にも気ままな飲んべえにも、すべからく仏縁のめぐみを | 中野・坊主バー

good mornings

公開日 2020年3月19日

煩悩うずまく中野の飲み屋街に、私たちが普段知るのとはだいぶ違う角度から仏道のこころに触れられる、有難いお店があります。カクテルの名前も例えば「色即是空」、だなんて!

中野駅
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焼き鳥、たらふく食べたい。朝まで呑んだくれたい。中野駅北口のブロードウェイのすぐそばに広がる飲み屋街では、今宵また幾多の酔いどれピープルが、もてる煩悩のまま、夜を遊び尽くさんとしています。

そんな界隈にあって一見かなり異色な「中野・坊主バー」。ここは、まさしくその名の通りお坊さんや尼さんがおあすバーでして、わずかに入り組んだ小路の奥に控える雑居ビル2階にそのお店はあります。
マスターの釈源光(しゃく げんこう)さんは、真宗大谷派瑞興寺の僧侶。恋や仕事はもちろん生老病死をめぐって苦しみあえぐ衆生は、カウンター越し、低音ボイスとともに届くその言葉によってある時は心洗われ、またある時は笑わされもするのです。

絶えず慌ただしく、あまりに競争激しく、何かをきっかけにすっかり意気消沈してしまいかねない、このいびつな時代。希望の光はもしかすると、スローなジャズボーカルに心落ち着かせつつ彼に悩みを打ち明け、言葉を交わす中でふと、訪れるのかもしれません。
経典を読み始めるがごとく手にとりパラパラと広げるオリジナルドリンクメニューには、12種類ものカクテル。その名も「一期一会」「愛別離苦」などといった具合で、漢字ならではのキリッとシャープなネーミングが、色味の美しさともども味への期待をいっそう加速させるはず。

と思えば裏面には「エロ坊主」なんて意外な名前のカクテルも見つかったり。そうです、ここはあくまでバーとして、お酒とともに語らい・笑い・楽しむ空間でもあるのです。

このほかフードメニューでは「永平寺胡麻豆腐」など。

黒と透明色の二層がコントラスト鮮やかな「色即是空(しきそくぜくう)」は、お店イチ押しの一品。かき混ぜれば即立ちのぼる、水墨画みたいな濃淡のグラデーション。均一になっていくまでの一部始終が美しいです。

仏教系大学の仏像研究会からお不動さまを頂いたり、かと思えばギターもあったりと、お店に寄せられる「お布施」の種類も実にさまざま。

50歳になってからお坊さんになったという釈さんは、元サラリーマン。訳も分からぬままひたすら前へとならう集団主義においそれとなじむことのできなかった性分ゆえ、小学生の頃から早くも生きにくさを抱えていたといいます。

生きるよすがを探し求めるなかで高校時代にはサルトルなどの西洋哲学にすっかり傾倒し、大学卒業後もパリのソルボンヌ大学に数年留学。長年憧れたフーコー自らが教鞭をとる授業で学ぶ興奮を味わうも、しだいに哲学が自分の欲していた救いになり得ないことを悟り失望感を高めていきます。

そんな折、とびきりのインテリだった当時のクラスメイト・ピエールくんとの会話の中で彼がふいに語った「仏教のある国、日本への羨望」。古来より自国で尊ばれてきた仏の教えがふいに気になり学び始め、帰国してのち大手ゼネコンなどでサラリーマン生活を送っていた間も、絶えず独学を続けてきたようです。
一夜にして数名の幼なじみの命を奪い、筆舌に尽くしがたい爪痕を住み慣れた神戸の街に残した、阪神淡路大震災。また相前後して複数の仕事仲間が飛び降り自殺と、ショッキングな出来事が度重なり世の諸行無常を感じ入ったことも。

そんな時期にたまたま訪れ、客として通うようになった大阪・千日前の坊主バー(現在は閉店)で彼は決定的に仏道に開眼し出家を決意、果たして僧侶となったのです。
「南無阿弥陀仏」と唱えさえすれば、極論、経典もお寺すらも必要ないと説く浄土真宗。日本初の坊主バーであった大阪・坊主バーのDNAを直に受け継ぐようにして釈さんが17年前にオープンしたこの店もまた、いわゆる普通のお寺同様、心の安寧と仏縁のありがたみを再発見できる、有難い場です。

オープンしている間、お店の門戸は文字通り、いつも開かれています。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

坊主バー 中野店

住所
東京都中野区中野 5-55-6 ワールド会館2F
電話番号
03-3385-5530
営業時間
[月・水~土] 18:00~翌3:00(LO翌2:30) [日] 18:00~翌1:00(LO翌0:30)
定休日
不定休 ※年末年始休みあり
平均予算
[夜]¥3,000~¥3,999
最終更新日:2020.9.18
データ提供:食べログ
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