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音のインテリアにも。耳を澄ませ聴き入りたい砂張の音色 | 柏木美術鋳物研究所

good mornings

公開日 2020年3月31日

ここは風鈴や鈴、おりんといった鳴物(なりもの)をメインとする鋳物の工房兼販売所。江戸時代、大名に同行し小田原に越してきたという長い伝統を持つ職人家系の手業が生んだ諸作品を目にすることができます。

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小田原
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かまぼこは言うに及ばず、干物、塩辛、梅干し、また木工その他の産業も発達していた小田原。市内に点在する店舗や工房およそ20カ所は該当産業の歴史を今に伝える「街かど博物館」としても機能しており、気軽に訪れることができます。

小田原駅から徒歩15分ほど、中町にある柏木美術鋳物研究所もそのひとつ。鋳物を手がける職人の工房では別室にて展示施設も併設されていて、その名も「砂張(さはり)ギャラリー鳴物館」というものです。
銅と錫(すず)の合金・青銅の中でも、配合が特殊な「砂張(さはり)」、またそれ以外に真鍮(しんちゅう。銅と亜鉛の合金)を素材としてつくられる風鈴、鈴、おりんといった「鳴物(なりもの)」が、この工房がメインに手がけているもの。

そっと揺らして(あるいは、ものによっては叩いて)得られる音色は聞き慣れないほどよく澄んでいて、特に砂張製はひときわ音の伸びる、か細くも芯のある余韻が心地よいです。目を閉じ、音がゆっくり減衰していくのを最後まで聞き届けたくなるような。

かき氷が恋しくなってくる音。典型的な真鍮製よりも砂張製の方が人気が高いというのも、ここならでは。

おりんはみな砂張製。その素材自体は普通の青銅より色白いものの、独特のコーティングにより美しい黒光りを放っている。

風鈴よりサイズの大きい、喚鐘(かんしょう)。

上半分にうずくまる猫、下半分に"まよけ"とある「猫鈴」は、和雑貨店でも取り扱いの多い人気アイテム。

「鈴虫」「松虫」など虫の音を模した風鈴、富士山や小田原ちょうちんをかたどった風鈴、また花器、茶器、水滴といった伝統的な嗜みごとに用いる道具類やストラップ等の小物も。

心静まるその音色は、コンピュータ制御で金属の配合や型の形状を寸分違わず仕上げてもなお再現不可能で、始まりから終わりまでの各プロセスにおいて職人的な見極めがあってはじめて実現できるという、実に繊細なもののよう(ここには聴き比べ用の欠損品のサンプルも置かれていて、どこか少しでもひびや欠けが入ると途端に響きを失ってしまうことがよくわかるのです)。
現代表・柏木照之さんが受け継ぐ技術は元をたどればごく昔にまでさかのぼり、この柏木一族、江戸時代の1686年に小田原に越してくる以前から大名・大久保氏お抱えの職人として、肥前唐津や下総佐倉で鋳物業に従事してきたという過去を持ちます。

近代以降も、旧日本海軍の軍楽隊が用いたシンバル、国会議事堂で議長が鳴らす鐘、映画『赤ひげ』製作時に監督・黒澤明が求めた風鈴など、一級のクオリティが求められる現場の数々でその作品は登場。知られざるも輝かしいその実績は、小田原および西湘地域で大昔から続くこの鋳物工房の存在意義をより大きなものにしています。

炉の中は1,000℃以上。溶け混ざった銅と亜鉛(=真鍮)を必要な量だけ小分けにしていく作業。

そもそもが素材としてもろい砂張。新たにイチから型をつくる場合など、一度完成させないことには実際の響きも確かめられない中で音の良し悪しを見当つけながら作業を進めるというのも、非常に大変なこと。他では見られないこの砂張製風鈴(=「御殿風鈴」)が生む余韻のゆたかさは、一族代々の技術の蓄積が可能にした、言ってみれば音のインテリアです。

姿かたちを見るのではなく、聴いてこそその本領が発揮される伝統工芸品というのも、なかなか珍しいとは思いませんか。
おりんも、鳴らし方次第では心地よい周波を辺り一帯どこまでもループさせるような音響を出すこともできて、本来的な仏具としての用途に限りません。瞑想を誘います。
(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

柏木美術鋳物研究所

住所
神奈川県小田原市中町3-1-22
電話番号
0465-22-4328
営業時間
9:00~17:00
定休日
第2・4・5土曜日、日曜日、祭日
最終更新日:2020.3.24
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