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杉並区きってのケヤキの大木のそばで。市井のカフェ「アトリエ・カノン」

good mornings

公開日 2020年5月10日

杉並区西荻北の住宅街にあるこのカフェ兼レンタルスペースは、三世代にわたりまさにこの場所に住む店主・山中さんが営むお店。店の目の前に立つ大木「トトロの樹」は、その保全に尽力した彼女らのおかげで今なお元気な姿を見せています。

西荻窪駅
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中央線沿線は住民の人口が多い一方で、公園の緑はというとむしろ少ないイメージが。でも個々に目を向けると、興味深い経緯を辿ってきたものもいくつかあるのです。

西荻窪駅の北西、民家が広範囲にわたって続く界隈では地面が起伏がちなところもあって、路地からふいに遠く向こうが望めたりもするのですが、にょきっと背高いケヤキの大木が見つかればそれはこの地域のランドマーク。通称「トトロの樹」と呼ばれる、地域住民にはなじみ深い存在です。
スケール大きく枝葉のひろがりに鼓舞されるような、あるいは慰められるような、ただそこにあるだけで見る者に穏やかなインパクトを与えるこのケヤキ。樹齢推定200年かそれ以上とあって何世代にわたる地域の人と春夏秋冬を共にしてきたものの、実は今世紀に入ってからは危うく伐採の憂き目に遭いかけたことも。
道路を挟んで向かいにあるカフェ兼レンタルスペース、アトリエ・カノンを営む山中啓倭子(けいこ)さんは、ケヤキを伐採から守るべく活動しこれを食い止めた中心人物のひとり。生前の祖母が約100年前に横浜から越してきて以来、三代にわたりこの店がある家屋で暮らしてきただけに「ケヤキを切る前提でマンションの建設計画が進んでいるらしい」とたまたま地元客から教わったときはまさに青天の霹靂。

長らく飯場小屋に囲まれその全容こそ拝められなかったけど、自分が生まれついてこの方ずっと見守ってくれているケヤキ。これは何とかして伐採を回避させたいと、店をハブとしてつながる近隣の同志たちと共に即座に動き出しました。2008年の春のことです。

右手奥の建物1階に、カノン

店主としていつも通りに店を営むかたわら、駅前で署名活動にも取り組んだり、つてをたどり区議員にはたらきかけたり、また通りがかりに初めてこの木を目にしたとおぼしき人を見つければ、大人でも子どもでもすすんで話しかけその価値を伝えてみたり。行政も絡みいっそう複雑な土地相続をめぐる権利関係の中、開発を止めてもらうべく休む間も惜しんで精力的に動きつづけるようすには、周囲から「お願いだから寝てくれ」と心配の声が挙がったほど。

3ヶ月ほどの間で集めた約8,600人分の署名を区長に手渡した結果、検討と協議の末に杉並区がおよそ4億2千万円でこの土地を買い取ることに。そうして木とそのごく周辺が公園として整備され2010年にめでたくオープン。以来、市民の憩いの場として親しまれています。

ケヤキの保全運動を後世に語り継ぐべく、絵本も刊行

のち2013年には大型台風で幹が割れ全体の半分が立ち枯れてしまうも、ここでもまた山中さんらが区のチームや有志の樹木再生士と協働。

懸命なケアの甲斐あって無事再生したケヤキは4年前にみごと区の景観重要樹木第1号として指定されるまでとなり、これは杉並の郷土史に名を残す意義深い成果と言えます。

水を加えず野菜の水分だけでつくるカレーは人気メニュー。毎月第3木曜には単品500円で提供する「チャリティカレー」として、売り上げが福島と熊本の復興支援の寄付に回される

駅前の賑わいを離れた静かな住宅街で、近場に暮らす人々が気軽に立ち寄る「市井(しせい)のカフェ空間」という趣のアトリエ・カノン。2001年にはじめられた当初からコミュニティの場としての性格を備えてはいたものの、トトロの樹の保護活動の一件が山中さんや常連客ら同志の連帯感をいっそう高めることに。

特技など、各自持てるものを互いのため世のために活かしながら関わりあって生きる。そんな文化的な集いとしての色彩を強め、それが今の「ミイセ(みんなでいきるせかい)」というボランティア団体としての活動へとつながっています。

公園内の落ち葉を集め腐葉土をつくる取り組みも

「才能企画」と称しミイセでこれまでに編まれてきたものは、店内でのケヤキ写真展や朗読劇・バンド演奏などの文化祭にとどまらず、縁が縁を呼びつながった韓国・ソウルのブックカフェとの間でのコラボメニュー展開なども。3.11以降は杉並区の姉妹都市であり奇しくもそのシンボルツリーがケヤキであるという南相馬市へ様々な手段で支援の手を差し伸べてもいます。近い将来もそばなどの現地物産を店内で取り扱う計画でいるなど、その内容は息長くあくまで継続的です。
ケヤキの保全その他、諸々の活動で山中さん一同が傾ける熱意は、経済的な価値で計ることこそ難しくてもかけがえのないあらゆるものを、きちんと大切にしなければという精神の賜物。その拠点でもあるこのカフェが帯びている空気もやはり、肩書きなど関係なくあらゆる人に優しい、公共的なものです。

(文:古谷大典)
(写真:丸山智衣)

Atelier Kanon

住所
東京都杉並区西荻北4-15-13
電話番号
03-5938-1870
営業時間
11:30~19:00
定休日
木曜日
平均予算
[昼]¥1,000~¥1,999
最終更新日:2020.6.7
データ提供:食べログ
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