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花緒をすげてあつらえる一足に、宿場町・品川の面影 | 丸屋履物店

good mornings

公開日 2020年8月29日

江戸時代に始まり155年続く丸屋履物店が店を構えるのは旧東海道沿い。下駄・草履・雪駄といった和装履物の買い物が立地や家屋のたたずまいなど歴史に根ざした味わい深さと共に楽しめます。

北品川駅
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道幅が何やらこぢんまりとした北品川商店街。それもそのはず、この道は世にクルマというものが登場する以前から江戸とはるばる京都・大坂を結んでいた旧東海道。かつて天下の大動脈として、人が盛んに往来していたのです。

江戸から数えて最初の宿場町、品川。旅籠屋で旅の疲れを癒すだけでなく、乗馬での移動ならここで新たな馬への乗り換えも。そのような中継地点であったことが商店街最寄りの駅・新馬場(しんばんば)という駅名からもうかがわれます。
賑やかなりし往年の品川宿には、下駄や草履を扱う履物屋もまた多数。明治になって特権身分を失った士族が生計のためにと始めた商売の種類も、この辺りでは飲食店等より履物屋の方がずっと多かったようです。

そんな当時の雰囲気を、界隈でも群を抜いて色濃く残しているのが幕末期の慶応元年以来155年続く丸屋履物店。商品といい景観といい履物、ひいては和の装いの良さというものが肌身から伝わってくるようなお店です。

黒っぽく色づけされ竹皮の質感も際立つ「烏表(からすおもて)」の雪駄

やんごとなき大正建築で東日本大震災はもちろん、関東大震災をも生き延びて今なお健在という家屋に並ぶ、男物・女物の下駄、草履、雪駄の数々。日常づかいに適した6千円台のベーシックなものからに、津軽塗、会津塗、螺鈿(らでん)など施された豪華な数万円万単位のものまで。

下駄なら硬さや軽さ、耐久性から国内随一という会津桐が素材に使われるなど、一堂に会するこれら品物の質としての確かさが、棚全体から香り高く立ち上ってくるかのよう。

表面を砥の粉(とのこ)で磨いたり、焼いたり、漆塗りしたりと仕上げ方により質感や色合いにバリエーション

「合い目」は、ひとつの切り株から左右となり合わせの状態で切り出されたもの。ガチャンコすればピタリとあう年輪。硬さや重さの究極の左右対称を実現するための、最もぜいたくな方法

店頭には一部既製品も並ぶものの、足を載せる「台」、足指にひっかける「花緒(はなお)」をそれぞれ選び、目の前でそれらの取り付け作業(曰く、花緒に台を「すげる」。)をしてもらうことで自分だけの一足が完成、というのが和装履物店本来の買い物の流れ。

無地、縞模様、とんぼ柄、千鳥柄と種類豊富で最も個性の発揮しやすい花緒は、どれにするかが楽しい悩みどころ。織物ゆえ使い続けるうちにすり減ってきたなら、台はそのままに別途花緒のみをすげ代え、つまり新調します。

瓢箪(ひょうたん)、花吹雪ほか、鹿の皮に漆で繊細な柄模様があしらわれた「印伝革」の花緒も

こういった対応が可能なお店は今や和装履物店の中でもわずか。時代が下るにつれ消費者の和装離れが進み、下駄・草履づくりに関わる職人、またそれに必要な専門道具の作り手などが等しく減少の一途を辿っているからです。

丸屋の五代目・準一さんが店頭でお客の選んだ花緒をすげる姿も、彼の世代を最後に当たり前の光景ではなくなってしまったもの。本家から譲り受けた200年以上現役の仕事道具しかり、この店はその営まれる光景自体がぜひ目に焼き付けておきたい、貴重なものなのです。

畳表と裏革を針と糸で縫い合わせる

社長としての立場を既に引き継ぎ済みという息子の六代目・英臣さんは、花緒をすげるのはもちろん、花緒、雪駄の畳表(たたみおもて。直接足を乗せる部分)などを自作にて調達し始めているなど、時代の変化のただ中で今後のあるべき姿を模索中です。

和装の履物に不慣れな方。二枚刃の下駄など特にうまく歩けるかどうか、ちょっと心配になるかもですが、重心をかかとでなく前の方にスライドするだけで下駄が前傾して、普通に歩けます。このとき身体がバランスをとろうとするため背筋もおのずとスッと伸び、良い姿勢になり、ふくらはぎも鍛えられます。
重心を前に、と心得て履けば、道ゆく人も振り向く和装美人、和装美男子。意外にもそれは足元から作られるのでした。


(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

丸屋履物店

住所
東京都品川区北品川2丁目3−7
電話番号
03-3471-3964
営業時間
9:00~19:00
定休日
日曜
最終更新日:2020.8.13
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