代官山的なファンシーなイメージにもよくなじむ名前とはある意味裏腹に、そうそう他ではお目にかかれない代物を多数扱うお店があります。
JOHNNYJUMPUP(ジョニージャンプアップ)。マトリョーシカ、それにソビエト連邦・ロシアのビンテージ雑貨が充実の品揃えを見せるココは、ひろく大きく、近いようでヨーロッパ側となるとやっぱり遠い、そんなかの国の民俗的感性に触れられる場所。
JOHNNYJUMPUP(ジョニージャンプアップ)。マトリョーシカ、それにソビエト連邦・ロシアのビンテージ雑貨が充実の品揃えを見せるココは、ひろく大きく、近いようでヨーロッパ側となるとやっぱり遠い、そんなかの国の民俗的感性に触れられる場所。


筆頭格はマトリョーシカ。ロシアな何かと言えばピロシキにも負けないくらいその名の挙がるアレです。
開けても開けても出てくるのが毎度同じ顔で肩透かしを喰らうのとは違い、ここにあるものは開けるたびに違う顔ぶれが登場し、全て出揃えばおのずとそこにひとつの世界が現れるものばかり。マトリョーシカとは本来そういったテーマ性に根ざす民芸品であり、無限ループを思わせるタイプのものは、入れ子構造となっているのを記号的に楽しんでもらうだけの、旅行客相手のお土産品にしかないのだそう。
開けても開けても出てくるのが毎度同じ顔で肩透かしを喰らうのとは違い、ここにあるものは開けるたびに違う顔ぶれが登場し、全て出揃えばおのずとそこにひとつの世界が現れるものばかり。マトリョーシカとは本来そういったテーマ性に根ざす民芸品であり、無限ループを思わせるタイプのものは、入れ子構造となっているのを記号的に楽しんでもらうだけの、旅行客相手のお土産品にしかないのだそう。

曲面に対しこんなにもきれいに描けるとは、お見事
「地球は青かった」のガガーリンやチトフ、テレシコワといった宇宙飛行士の面々でソビエト宇宙開発の栄光を表したもの、父 > 母 > 兄 > 妹 と順に登場していわゆる「古き良き家族」像を描くものと、テーマはさまざま。
ここに揃うマトリョーシカは全て古今の現地作家による手作りで、ずらりと並ぶ作品一同をひとしきり眺めてみれば、作家ごとの個性もそうですが、全体に共通するロシアの良心のようなものが、じわり伝わってきます。
ここに揃うマトリョーシカは全て古今の現地作家による手作りで、ずらりと並ぶ作品一同をひとしきり眺めてみれば、作家ごとの個性もそうですが、全体に共通するロシアの良心のようなものが、じわり伝わってきます。

ほか人形もので似たところでは、いわゆる起き上がりこぼし・ローリーポーリーのロシア版である「二ヴァリャーシカ」なども。
店を営む髙橋拓也さん・山本香菜さんのふたりは、夫婦にして洋服の趣味などで通じた高校以来の同好の士。1998年に始めたこのショップでは服飾雑貨と並行し早くからマトリョーシカも扱っていたところ、やがてズブズブとその魅力にはまり込み、気に入ったそのほかのロシア雑貨もいっぱいという現在の品揃えを見るに至っています。
店を営む髙橋拓也さん・山本香菜さんのふたりは、夫婦にして洋服の趣味などで通じた高校以来の同好の士。1998年に始めたこのショップでは服飾雑貨と並行し早くからマトリョーシカも扱っていたところ、やがてズブズブとその魅力にはまり込み、気に入ったそのほかのロシア雑貨もいっぱいという現在の品揃えを見るに至っています。

年3回ほどの出張買付けではモスクワを拠点にあちこちの街で蚤の市とか郊外の作家アトリエに出向いたり、またそれ以外になじみの作家から届けられる機会も。仕入れの機会は何かと多く、この手を愛好する人にしてみれば「今度は〇〇が入荷した」やら何やらで年間を通じ余念なくマークすることが必要となりそうです。
ちなみに香菜さんが抱えるぬいぐるみは、なんとロシア版「くまのプーさん」(対して拓也さんのは親友ピグレット)。半世紀前に作られたアニメでもいぶし銀のダミ声を聞かせるなど、イギリス発の原作からは、ディズニーのご存知黄色いプーさんとは全く異なる方向での進化が、ロシアの地で遂げられています。
ちなみに香菜さんが抱えるぬいぐるみは、なんとロシア版「くまのプーさん」(対して拓也さんのは親友ピグレット)。半世紀前に作られたアニメでもいぶし銀のダミ声を聞かせるなど、イギリス発の原作からは、ディズニーのご存知黄色いプーさんとは全く異なる方向での進化が、ロシアの地で遂げられています。

クマ本来の色をかえって思い知らされる

米ソ冷戦時代、共産主義陣営という「向こう側」の世界であったソ連で人々はどんな気持ちで暮らしていたのか。当時に限らず今なおよく知られていないその辺りの実態が、こうしたキャラクターなりアイテムなりが持つ雰囲気からひも解ける点も、このお店のみどころと言えます。
広告的、というかむやみに消費をかき立てるようなある種のとげとげしさやキメキメ感もなく、イラストには動植物や自然をモチーフにしたものも多数。地に足のついた幸せな気分を誘うものがこの時代たしかに尊ばれていたようで、なんだかホッとさせられます。
広告的、というかむやみに消費をかき立てるようなある種のとげとげしさやキメキメ感もなく、イラストには動植物や自然をモチーフにしたものも多数。地に足のついた幸せな気分を誘うものがこの時代たしかに尊ばれていたようで、なんだかホッとさせられます。

童話『ナイチンゲール』の挿し絵。子ども向け絵本の芸術的価値が一躍高まった時期の作品がソビエト時代に復刻されたもの

1980年モスクワオリンピックのマスコット「こぐまのミーシャ」。しなった腰つきがなんとも

『チポリーノの冒険』などソビエト時代のアニメDVD

チェブラーシカから絵皿からマグカップからピンバッジからイヤリングまで、さまざまなアイテムを見て回るさなかに流れてくるBGMは、当時の現地アニメのテーマソングなど。これがまたジャズもボサノヴァも独自に昇華した古き良きイタリア映画音楽のようで、それでいて家庭の台所の匂いも漂ってきそうな、子どもの耳にも決して違和感のない機能的に優秀なナンバーだったりします。
古くて新しい音楽の調べに心躍らせつつ、ソ連・ロシア育ちの感性に触れられるひととき。じつに豊かなひとときです。
古くて新しい音楽の調べに心躍らせつつ、ソ連・ロシア育ちの感性に触れられるひととき。じつに豊かなひとときです。

(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)
(写真:小島沙緒理)
AJOHNNYJUMPUP(ジョニージャンプアップ)
- 住所
- 東京都渋谷区代官山町18-31F
- 電話番号
- 03-5458-1302
- 営業時間
- 12:00~20:00
- 定休日
- 不定休
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