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囲碁・将棋の一手に最上級の品格を与える品々。創業大正元年の「中村碁盤店」

good mornings

公開日 2020年10月4日

かの忠臣蔵にもゆかりある現・新橋4丁目の一画で営まれるこちらの老舗碁盤店。取り扱う碁盤や将棋盤、また碁石や将棋駒等には、職人技や材料の希少性に裏打ちされた一級品ならではの美しさがあります。

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古き良きサラリーマンの、アフターファイブの舞台たる光景は今も健在の新橋。駅を降り立ち繁華街の一帯を抜けてもなお、街の景観は新旧オフィスビルの立ち並ぶビジネスタウン然としたままです。

でも目をこらせば伝統的な産業等に関わる老舗もひょんなところから顔を覗かせていたりします。かの『忠臣蔵』にゆかりある土地の一画に構えられ、その歴史もそろそろあと一、二年で丸110年に届こうかという中村碁盤店もそんな一例です。
藤井二冠を筆頭に若手ライジングスターの登場も重なる近年、改めて見直されている将棋と囲碁。

ルールを覚えるのも今ひとつおぼつかない子どもから「久しく触っていないけど、ちょっとまた興味がよみがえってきたかも」なんていう大人まで、永きに渡りシーンを支えてきたこんなお店のこともぜひ知っておいて損ではないでしょう。
大正元年に今と同じ港区新橋4丁目31番7号ではじめられた中村碁盤店は、今日に至るまで碁盤、将棋盤や駒台、碁石や将棋駒などの付属品一式を取り扱っているお店。入門者向けの普及品から一流の高級品までがここにはあります。

三代目・中村英信(ひでのぶ)さんが先代の父、初代の祖父ゆずりの技術をもって削り出し、仕上げる高級碁盤や将棋盤は切れ味鋭い刀のようなシャープさで、はた目から眺めるだに、プロ同士の対局現場の静けさに包まれたあの緊張感がふと思い出されるかのようです。

盤の側面に走る年輪に注目。切り株ひとつから2個分しかとれない贅沢な切り出し方ならでは

「対局中、外野は口を出すな」ということで盤の足元にあしらわれているのは、クチナシの実

お値段なんと1,000万円というこちらの碁盤。生育スピードが遅く最低でも樹齢500年を要するカヤの木、それもマグロで言えば大トロにあたる部分から贅沢に切り出されたものということで高級盤の中でも特上に位置付けられる一品です。使い込むほどにその色味や光沢の重厚感も増していくのもカヤならでは。

芸の細かい装飾が施された盤の足元もさることながら、対局の舞台そのものである盤上の罫線こそは、しじゅう真剣な眼差しが注がれるだけに決して違和感を感じさせないまっすぐな線描でなければならない部分。仮にミスした場合の後戻りも極めて面倒なのだそうで、こういった数々の点でのクオリティがその値段に反映されています。

皮革裁断用の包丁の持ち手を独自に改造。これを使い漆の線を引く

中村さん自らが手がける盤も盤なら、将棋駒や碁石といった他から取り寄せられるモノだってやはり相応の質です。将棋駒なら例えばひとセット50万円ほどにもなるモノまであって、これは「王将」「飛車」といった文字を単に駒の表面に書くのでなく、文字部分をいちど掘り出し、そこに漆を盛って乾かしたのちにはじめて文字入れされるという手の込みよう。

はねやはらいなど一画一画に立体感と風格が備わります。
碁石の方でも白黒あわせ全361個からなるひとセットがお値段、仰天の1600万円なんてものまであり、これは原材料の希少性に大きく由来しているとのこと。

黒は那智黒(なちぐろ)という石、白は日向産ハマグリの貝殻から作られているものの、後者の方で碁石を作るだけの大きなハマグリが今やすっかりなくなってしまったため(なのでここ数十年来はメキシコ産が主流)、市場価格もそのぶん余計に引き上げられているようです。
日本のみならず漢字文化圏全体で古くから親しまれてきた囲碁や将棋。深い精神性を象徴するかのようなその格調高い雰囲気は、これらトップレベルの高級品のクオリティには実によく現れています。

現代の囲碁・将棋文化を支える役目を担うこんな中村碁盤店ですが、その敷地は、実はかの『忠臣蔵』でも描かれた浅野内匠頭(たくみのかみ)が切腹を遂げた現場とされる場所でもあります。

関東大震災直後に撮影された、通称「お化けイチョウ」(左の写真)

位置的に当時これを目の当たりにしていたはずの大きな「お化けイチョウ」がかつてここにはあって、関東大震災で焼けてしまったもののの、その切り株だけを残してこれを祀るお稲荷様が後年設けられるなど、歴史にゆかり深いスポットなのです。

細長い店内の奥で今も時を刻む掛け時計だって、中村さんのおじいさんである初代が商売を始める前(つまり明治時代)に購入した船来品の宝物。関東大震災はおろか太平洋戦争さえも疎開させて生き延びた、まさしく「おじいさんの古時計」です。
(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

中村碁盤店

住所
東京都港区新橋4-31-7
電話番号
03-3434-1564
最終更新日:2020.9.16
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