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自然よカムバック。「幻のはちみつ」も魅力の在来種養蜂 | 中延日本蜜蜂保存会

good mornings

公開日 2020年11月3日

品川区中延のNPOが地域で取り組むニホンミツバチの養蜂。一部で絶滅も危惧されるこの在来種が年単位の時間をかけて巣に蓄えたはちみつを取り出す様子を見学し、また試食できるイベントが年に 1、2回ほど開催されます。

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品川区中延には、その名に思わず足元もうずく商店街・なかのぶスキップロードがありまして、そこではちょっと意外なNPOが事務所を構えており、聞き捨てならないオリジナル食品が販売されています。

それは、はちみつ。私たちが普段味わうセイヨウミツバチ由来のではなく、国内で飼育される割合がわずか5%というレアな在来種・ニホンミツバチの作るはちみつです。NPO法人 中延日本蜜蜂保存会は商店街の屋上、また地域の古刹・法蓮寺のみどり深い境内でその養蜂に取り組んでいます。
「幻のはちみつ」とも称される、ニホンミツバチのつくる蜜。個体の数としての少なさに加え、一匹あたりの採取可能な量自体がごく限られているからです。

産業としての効率性から品種改良がなされ半ば家畜化したセイヨウミツバチと比較すると、そのナチュラルな習性によって集められる蜜の量はわずか十分の一。巣箱を開け巣から蜜をとりだす「搾蜜(さくみつ)」の作業も、一定量の多さを期待する限り、ゆうに一年以上の期間手をつけずじっくり寝かせなければなりません。
中延日本蜜蜂保存会ではそんな貴重な搾蜜作業を直に見て、そのとれたてのはちみつが試食できるイベントが開催されており、解禁日のボジョレーヌーボーよろしく、年単位の長さで寝かせに寝かせた末ようやくご対面できるというニホンミツバチのスウィートな旨みに、うっとりと浸ることができます。

ピアノ線で糸ノコのように切って天井板をオープン。この時は一年半ぶりのご開帳

多くて1万5千匹ほどと大ファミリーのニホンミツバチが日々出入りする巣箱は、おせちを入れるお重のような縦積み型の形状。これまた都度中身を確認できるセイヨウミツバチの巣箱とは勝手が異なり、下手に開けてみて仮に巣が大きくなかった場合など、機嫌を損ねた彼女ら(働き蜂はみなメスなので。)が新天地を求めどこかよその巣へと大挙して移動してしまうリスクもあり、おいそれと気軽に中身を確認するわけにはいきません。

ましてや大家族でただひとり卵を産み続ける女王蜂は、いなくなってしまうと次の世代が途絶えてしまうという、種の保存にとってきわめて重要な存在。にもかかわらずニホンミツバチのそれは働き蜂と見た目で確実に判別するのが現場では難しく、その道を五年十年と歩む養蜂のプロをして「巣の中のどこにいるのか、正確にはほとんどわからない」と言わしめるほど。

取り扱いを困難にするそんな種々な特徴には、ちょっと神秘の匂いもします。

保存会の理事長・青木さん(右)。この活動の一方で地域の高齢者扶助を推進する「NPO法人 街のお助け隊コンセルジュ」理事長も兼任と実にアクティブ

飼い慣らされたあまり、もはや人の世話なしには生きられないセイヨウミツバチと対照的に、あくまで野生がベースの彼ら。その生態はいまだ謎のベールに包まれた部分が少なくなく、人工的に個体数を増やす試みも日本全国を通じ成功事例がゼロという状態が続いています。

でもそれだけに、というべきか、彼らが集めてきた蜜はふだんスーパーで手にするはちみつとは全く異質のおいしさ。質感サラサラ、また喉越しや余韻もどすんとしておらずむしろライト。香りも含め重層的なフローラルさが確かにみとめられ、なるほどこれは百花蜜(ひゃっかみつ)と呼ばれるだけあります。

「そのままで味わうのが一番。あとハーゲンダッツのバニラ味やブルーチーズにかけてもすごくいい」と青木さん

現場から戻り、ミツバチ博士こと金濱さんが生態についてレクチャー

実は、アカシアなど特定の花の蜜ばかり集めるセイヨウミツバチに対し、ニホンミツバチはあらゆる花から蜜を集めてくるという特徴があって、ここ中延なら「林試の森」(品川区と目黒区との区境にある広大な緑空間)とか中延三丁目あたりの民家の庭とか、巣から半径2キロという狭い行動範囲のなか彼らは種々様々な花を訪ねては採蜜してくるのです。結果、寄せ集められたはちみつは地域に咲くありとあらゆる花の蜜を凝縮したものに。

蜜蝋(みつろう)で出来ていて栄養価も高いと言われる巣ごと、食べておいしい、中延ローカルの味。

市販のセイヨウミツバチのはちみつ(左上)と比較しつつ

かつては人工分蜂に挑戦も。いと古風な命名の歴代女王蜂

昨今の酷暑も台風の強大化も、自然の一部としての分際をわきまえるのを長らく忘れてしまった人類への報いとみなすべきもの。

周囲の環境が良好であることの目安となる「指標昆虫」としてのニホンミツバチ、その営みに触れることをきっかけに都会人が自然との共生について見つめ直せたら、と青木さんらは地域に対しこのような機会を提供しています。
一匹のニホンミツバチが一生に集める量はわずか小さじ一杯分というだけに、労働の成果の貴重な分け前にあずかるこちらとしては心して味わいたいものです。大地のめぐみが濃縮還元された、数えきれない花の味がするぜいたくなブレンドはちみつ。

ちなみに会ではイベント時に限らず普段から事務所でこのはちみつが販売されているので、駅を降りたら各人スキップの上お立ち寄りを(笑)


(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

中延日本蜜蜂保存会

住所
東京都品川区中延3-7-9 白凰荘101
電話番号
080-5892-0039
最終更新日:2020.10.15
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