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木製家具の手仕事の極み。職人から学ぶ本格教室も | ACROGE FURNITURE

good mornings

公開日 2020年11月14日

もとより素材としての暖かみがある、木製家具。神楽坂の住宅街に構えるこの工房では木製オーダーメイド家具の制作や修理、また日頃それに勤しむ職人達から教わる木工教室も開講。彼らの姿勢やこころざし相応に内容も本格的です。

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衣服やコンビニで手にする商品など、安価でありながら質も言うほど悪くないものが身近となったいま。手仕事を武器とする職人が、かける手間暇と経済的メリットをよりシビアな目線で天秤にかけ、自分が生み出せる価値について厳しく自問することが求められるのは、家具の世界も同様です。

オーダーメイド家具、またカトラリーなどの木製アイテムを手がけるかたわら、木を扱う手仕事ならではの喜びを普及・共有できる機会も兼ね木工教室を開講するACROGE FURNITURE(アクロージュ ファニチャー)。月に2度、4時間のレッスンのために遠方から片道2時間以上をかけ敢えてこの教室へ通う人も少なくないそのわけは、代表・岸邦明さんの一職人としての姿勢・こだわりに垣間見ることができます。
木材調達にあたっては製材前の丸太の状態で仕入れ。制作依頼を受けての顧客との打ち合わせでも、小さく切り分けられた状態ではなくあえて大きな一枚板のままを提示。木としての元の姿が肌感覚で想像しやすいよう配慮しつつ、木目の好み等を踏まえ個々のパーツをどこから切り出すかピンポイントで決めていく。それほどまでの丁寧さ。

無垢材ならではの生き生きとした風合いを持ち、すべてのパーツを可能な限りひとつの板から切り出すことで、その色味や質感にも優れた統一感が。しかも木目の目流れ・目切れも含めた左右対称感まで意識するという。

結果そうして出来上がる一品に備わるのは、小手先で勝負していては到底望めない、芯の部分から風格を感じさせる美しさです。
椅子を一例にとれば、その背もたれは、背すじをピンと伸ばしフォーマルに腰掛ければ下側で、まただらんとルーズにもたれれば今度は上側で、といずれの場合にも心地よく身体をあずけられるだけの器用さ。

また触れ心地よい座面・肘掛けも、見る角度によって優美にもシャープにも映る多面的な形状であるなど。さりげなく自然なたたずまいは、あくまで機能美と視覚美が溶け合うようにして収まった成果です。
量産を前提とする現場からは生まれ得ないこのような椅子や机ほか家具、それに小物なども配された工房内ギャラリースペースでは、オーディオスピーカーの良さも発見できるのですが、それもまた合板を用いるオーディオメーカーのものとは違い無垢材だから。鼓膜に届く弦楽器の音が妙に心地よく、なんだかとても楽器本来の鳴りをしているのです。

木は暖かみがあってよいとは言うけれど、ここにあるのはソファに沈みゆく安らぎをひとり心の中で覚えるかのような、ごく穏やかな幸せ。
身体の奥底からじんと伝わるようなものばかりを手がける工房であるからして、岸さん一同が木工教室を通じて伝えたいものもやはり、時間をいとわずものづくりと向き合ってはじめて得られる類のもの。

極論、質を問わなければ専用機械のスイッチを押せば大方出来上がってしまうところを、ここのレッスンでは例えばティッシュケースひとつを完成させるのにおよそ一年を費やすことも。DIYで間に合わせのものをつくるのではなく、良質な素材を元手に、現役の家具職人じきじきに、木と対話しながら、探るように手を動かしてひとつのモノを作り上げていく時間こそ、贅沢で尊い。

目の前のものに埋没することでいっとき、忙しい日常を忘れ去ることもできる。そんな大切な気分転換の機会でもあります。
このような教室をかれこれ15年ほど続けてきた岸さんですが、ビギナーへの間口を広げるために彼が独自に工夫してきたことがひとつ。かんなといった道具のメンテナンス = 砥入れ(といれ)を身に付けさせるタイミングのことです。

道具の刃がしかるべきコンディションにない限り、姿勢や力の込め方がどれだけ正しくとも工作がはかどらないことから、教室の戸を叩いた者は最初の二年ほどをひたすら砥入れの修練に捧げ、自前で道具をメンテナンスできるようにする、というのが長らく続いてきた木工業界の常套。この間、木には全く触れないまま。
「本題に入るまでの期間が長過ぎては、せっかく持ってもらえた興味もすぐに薄れてしまう」と危ぶんだ岸さんは教室を開いて早々にこの慣習をやめ、代わりに教室側でベストコンディションに仕立てた道具を常に用意するように。

習いたての段階から木を扱ってもらうことで生徒たち個々の胸の中に芽生えた夢を膨らませてもらいつつ、希望者に対して別途砥入れ(といれ)のレッスンも行うというアプローチが今も続けられています。
全国を見渡せばゆうに数百を数える木工教室でも、ACROGE FURNITUREの生徒数は多く、在籍者数は現在250名ほど。緊急事態宣言がなされた一時期の落ち込みを経てコロナ突入前の水準へと回復して見せているあたりも、この教室で得られるものに大きく魅せられ、そう簡単には手放せないと考える人が多いからだとしても、まったく不思議ではありません。


(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

ACROGE FURNITURE

住所
東京都新宿区築地町6番地 北星ビル2階
電話番号
03-6265-0241
営業時間
9:00~18:00
最終更新日:2020.10.16
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