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製本屋として半世紀「キョーダイ社」はいま、手づくり御朱印帳で人気

good mornings

公開日 2020年11月7日

二代目の若旦那が好奇心と共に作りはじめた和綴じ本・御朱印帳が人気を博すこちらの町工場。昔ながらの地場産業の現場からいま旬なものが飛び出すというこの一種のミクスチュア感覚にそそられはしませんか。

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犬も歩けば川に突き当たる、江東区深川エリア。水運が盛んだった頃に建てられた倉庫が「大きなアート作品も収容できるから」ということでギャラリーにリノベ転用されたり、またあるところでは焙煎所も備えた大きなハコのサードウェーブコーヒー店に生まれ変わったりと、清澄白河の街並みも川ありきの地域のなりわいがその足跡を今に残しているところがあります。
印刷や製本を手がける小さな工場も界隈には古くから数多くあって、大通りから一本中へと入ってゆくなり、搬出入する最中のフォークリフトを見かけることもまま。

駅の北側、小名木川が流れるすぐそばのキョーダイ社も家族・親族単位で営まれること 54年にもなる製本会社で、薬の効能書やお菓子のしおりなど判型の小さな紙をさらに小さく折り畳む「ミニ折」が強み。このほか印刷の済んだ大小様々な半完成品がここに持ち込まれては製本加工されていきます。
父親である初代が兄弟コンビで営むことに由来するという、54年前にしてはごくユニークなネーミングのなされたこの会社を継いだ二代目、小森豊章さん。

フォークリフトを乗りこなし専用の折り機をガンガンに稼働させたりという一方で、一点一点、繊細かつ器用な手仕事により完成させる、とあるものづくりにも日々取り組んでいて、これが全国にまたがってファンを抱えています。

それも、聞いて意外な「御朱印帳」。それから和綴じ本も。
時には着物の布地を再利用するなど、表紙の柄はひとつひとつ自前で見繕い調達するだけに一点もののアイテムも数多く、オンライン販売と共に実施される工場での店頭販売でも、日頃Instagramをめざとくチェックしている熱心なファンがお目当ての一品のため順番待ちするのが当たり前という。

土曜の朝もはよから購買意欲まんまんで工場のシャッターが開くのを待ちわびる人の列、なんていう光景も、月1ペースと限られた販売機会とはいえ相当なものです。

上段左端、ハワイの樹木・コアウッドを表紙に用いたものも

金墨(きんずみ)が映える黒和紙

和綴じ本も「四つ目綴じ」「麻の葉綴じ」など色々

御朱印帳ならぬ御「酒」印帳として、飲んで気に入った日本酒のラベルを貼り連ねてみたり、手形を定点観測的にとることで子どもの成長を綴る御「手」印帳の提案もしてみたりと、遊びごころ旺盛な若旦那。

また最近プッシュしている黒い和紙のものだと普通の黒色の墨では当然文字が見えず金墨で書いてもらうことが必要となってくるわけで、それに応じる神社やお寺を探し訪ねることもまた、御朱印ライフの楽しみなのだとか。

小森さんがこれらを手掛けるようになったきっかけは、地元の製本業界組合として参加していた江東区の区民まつりでの体験イベント。地域に住まう市民に伝統的な和綴じ製本に触れてもらう、というこの取り組みに組合員として携わる中、これをより本格的に推し進めてみたら、と趣味の範囲程度の気楽な試作からはじめ、やがてこれを商品化するまでになったのでした。
表紙、裏表紙といった外身にあたる部分は、図鑑などの上製本をつくるのと同じ要領で。折り加工の部分についても自前の折り機を適宜使い分ければすぐに上等なものが出来たけれど、なんといっても実際に筆で書いて頂く部分の和紙のセレクトがいちばん改良に難儀し続けてきたポイント。

地域の氏神さま・深川神明宮。またサーフィンでよく訪れる外房なら産業の神様を祀る館山・安房(あわ)神社など。かねてからお参りを重ねてきたこういった社寺で、試作品に朱印をしたためてみての感想を聞き出し続けるうちに見えてきたのは「筆の滑りがどうも今ひとつらしい」などという課題。解決のため、小森さんは試行錯誤を重ねました。

綺麗に書いて頂いたまでは良かったものの、乾くまでに時間がかかる、という難題も。
品質向上に向けての決して平坦ではない道のりを歩み続ける中で、昨年8月には和紙メーカーと協働してオリジナル特注和紙も完成。書いてよし・乾きもよし・裏写りもナシと過去作に比べ格段に高品質の御朱印帳のリリースと相成っています。

着物や材木を表紙に用いたリメイクものの面白さなども手伝ってその評判はここ1〜2年の間にとみに高まり、「祖母の形見を有効活用したい」という個人客、それに呉服店や骨董店からも生地を持ち込んでのオーダーメイド依頼が来たりする今日この頃です。

SNS上での認知の広がりも、今や遠く福岡や長崎の複数のお寺から製作依頼が舞い込むまでとなっています。
仏像ブームのケースと同様、今や幅広い年代に渡り市民権を得た感のある御朱印帳。和綴じ本の方もちょっと粋な嗜みごとなど色々活用できそうなので、例えば押し花にいかが。俳句にいかが。近くには松尾芭蕉の記念館だって、あります。


(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

キョーダイ社

住所
東京都江東区常盤2-1-2
電話番号
03-3631-8291
最終更新日:2020.10.16
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