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ショールームが見渡す限りの優美さ。和紙・襖紙の版元和紙問屋「東京松屋」

good mornings

公開日 2020年11月23日

襖(ふすま)紙やインテリア和紙を扱うこのお店は、元禄の世から330年続く大変な老舗。近代的なビルの4フロアにまたがってショールーム・ショップ、また庭園ホールも設けられており、江戸からかみ・手漉き和紙が持つ奥深く多様な魅力に触れることができます。

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上野と浅草、ふたつの繁華街をまっすぐ東西に結ぶ浅草通りは、仏壇・仏具のお店がひしめく一大目抜き通り。江戸市中を広範囲に焼き尽くした「明暦の大火」を経て、幕府の都市計画によって数あるお寺がこの一帯に集うことになったという、そんな寺町としての名残りが今なお見られます。

通りの北側に店を構える東京松屋。ここもまたその一件ありきの今のこの住所なのであって、そのショールーム兼ショップには徳川家の菩提寺として栄えたあの寛永寺御用達というのもなるほどうなずける、美しい和紙や襖紙の数々があります。柄と色味と質感と、数えきれないバリエーションで織りなされる美のかたちが柔らかな光のもとに集うそのようすだに、実にお見事。

引手も。明治以降、日本刀の飾り金具から引手の金具職人への転向もあったという

襖紙業界全体を通じてもこのようなショールームを設けているところは他になく、色味や質感等々、個々の商品が空間という文脈において放つ雰囲気が、ビルの1階〜4階からなる広い空間ゆえ具体的に想像できるのがここならでは。

また600もの展示パネルなど版元問屋としての広範な品揃えの一方で、その紙の大部分を占める、模様や絵も多彩な「江戸からかみ」を手がける職人たちを束ね、制作自体にも大きく携わっています。

縁起よい七宝がランダムに配された「飛び七宝」柄

江戸からかみの原点は北宋時代の中国。のち技法そのものも継承されぬままやがて跡形もなく消えてしまった本国とは対照的に、輸入した側の日本においてそれは、平安期からの長い時の中で発展を遂げることになります。

当初は、貴族が和歌をしたためて詠むというのがもっぱらの用途。ほどなくして国産が始まり室町期に京都で襖として活用され始めたのを機に、活用の場は室内空間全体へと進出。江戸時代に入り量産が可能になると一般庶民の暮らしにもすっかり馴染み深いものとなりました(なお東京松屋が興ったのも元禄三年、つまり1690年のこと。もはや生き字引です)。

徳川吉宗の治世として知られる享保年間の時点で既に、その図案のバラエティは相当数を数えていたことが「享保千型」という当時の言葉にも現れています。

5年前に第18代松屋利兵衛を襲名した、伴利兵衛代表

平面的な図柄の一方で、その上にまぶされた雲母(きら)の輝きは、真珠にも似た柔らさ。見る角度により光沢が変化しては不思議な時空感覚をもよおし、西洋絵画の遠近法ともまた違うスケールの奥行きがショールームでは感じられることでしょう。

2階奥、目に優しく奥行きあるしつらえの一例

普及していた時代からみてもアナログ寄りというイメージが強い和紙の世界ですが、実は機能的でエコフレンドリーな点も数多いという利点があります。もともとが木の皮の繊維から出来ており製品化された状態でも細胞が呼吸し続けるため、辺りが乾燥していれば水分を吐き出し、湿潤であれば逆にこれを吸い取るのです。空気中の有害物質も同様に吸着。

またからかみの絵の具に用いられるのが布海苔(ふのり)やこんにゃく糊などすべて自然素材である点も、サステナビリティが求められる今これからの時代におのずとフィットしています。

1階には葉書、カード、ご祝儀袋からランチョンマットまで

3世紀以上にわたり寛永寺とあゆみを共にし、歴史的建造物や文化財の襖紙・壁紙復元の実物も一部店内に展示されていて、京都・桂離宮の松琴亭にある藍と白の市松復元襖を、また自衛隊の巡洋艦「鹿島」の貴賓室を飾る豪華絢爛な屏風も手掛けていて……、とそんな実績の数々にはつい敷居高いものを感じてしまいがち。ではあるもののしかし、気軽に押入れの襖2枚(一枚一万円)からの注文が可能です。十年の使用に耐えるその質を暮らしに取り入れることは減価償却的に考えてもけして遠い世界の話ではありません。

ちなみにこの建物、全部で5カ所も吹き抜けが設けられるなど、近代的なビルでありながら日本の風土に適合した風通しよく採光性に優れた設計がなされている点がまた要注目なのですが、貸しスペースとしての利用も多い4階フロアがその点で最も典型的。浅草通りを見下ろす開放的な庭園ホール、またそのすぐそばでは風流な集いの場にふさわしい和室スペースも。
このほか最大60人収容可能な多目的ホールなどもあって、いずれも晴れた日などくまなく心地よい光に恵まれ、よい居心地に。

茶道や花道といった和の嗜みごとを中心に、講演・実演の場所として、撮影スタジオとして、また立食パーティーや物販といった機会にもうってつけのこんな場が、稲荷町駅からわずか1分の立地にあります。
(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

東京松屋

住所
東京都台東区東上野6丁目1番3号 東京松屋 UNITY
電話番号
03-3842-3785
営業時間
9:00~17:00
定休日
日曜・祝日
最終更新日:2020.11.16
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