ちくわ。 おでかけ情報

ひとしきり、降り積もるのを見届けて。砂時計専門店「Sablier de Verrier」

good mornings

公開日 2021年3月13日

ここは職人作の砂時計を扱う小さなお店。台座部分の造形やイラストは各種作家が手掛けたものだったりして、純粋な実用性に限定されない魅力を宿したものばかりが店内には並んでいます。

エリア
谷根千
日暮里駅
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閉じ込められたガラスの中、砂は底へと降り積もり、音も聞こえないかすかさ。そしていつしか事切れたようにその動きも止まる。

見届けたこちらの心に生じるつかのまの余韻。これまた妙に味わい深いものです。
世が大航海時代ならいざ知らず、スマホひとつで時間計測も事足りる今においてなお、あえて砂時計を使いながらお茶をいれたり、バスタイムを過ごす人がいます。お気に入りの音楽なら、ストリーミングでは飽き足らずわざわざレコードを買い針を落として聴きたいというのと同じで、利便性と引き換えに失われた風情や色気というものに、私たちは少なからず飢えているようです。

谷中ぎんざ商店街の表通りから一本外れた路地に構える小さなお店「Sablier de Verrier(サブリエ・ド・ヴェリエ)」。砂時計のガラス職人、というフランス語の店名で、職人手作りの各種砂時計という取り扱い商品からして、落ち着きあるこの界隈によくお似合いです。
自然砂、ガラスビーズ、マイクロビーズといった着色の施された各種砂(時間の正確性のためその粒も細かい。ラメ入りのものも)、ガラス管という機能の核をなす部分を専門職人が手がけるほか、台座などを造形作家が担当しているものもあって、

・その形をきのこに見立てたもの

・上下逆さまにして使うから、ということでさかさ言葉を書き入れたもの

・台座にはスワロフスキーで星が埋め込まれた星座絵、砂は蓄光で暗闇のなか青白く光るというスペイシーなもの

・砂が砂鉄。台座に敷かれた磁石の作用でウニの成長を眺めているような気分になるもの

・大粒の青色に対し小粒の黄色。落ちた先で2色が次第に分離していくもの

…等々、静かで優しくもどこか情感に訴えてくるような作品も数多いのです。

カップラーメンのふたを抑えて一人二役。勿論3分計

台座のLEDの光が弾け飛ぶ砂を照らす15分計も

また砂を自ら持ち込んでのオーダーメイドもここでは可能で、旅先で集めた砂から自分だけの一品が作られる例も少なくないようです。九十九里の砂浜でもサハラ砂漠でも、訪れた土地のかけらごと閉じ込めてしまえば、日に日に薄れてゆきかねない大切な記憶も鮮明なままでいてくれそう。

夢の舞台・甲子園で敗退し、現場を後にする球児たちがかき集めた砂を手に来訪する母親もまたいたりするのだとか。

南極を含む世界各地の砂。過去にオーダーされたもの

パンがだいすき。将来はパン屋さんになりたい。そう思い描く少女と全く同じ理由で砂時計のお店を始めた和田朱美(あけみ)さん。学生、またその後数年間の会社員時代を問わず、その理想は絶えず頭の片隅でくすぶり続けていたもよう。

いまの谷中に先立ち名古屋市の同じく寺町・覚王山(かくおうざん)に店舗を構えていた頃から数え、このユニークなお店も去年を以て記念すべき四半世紀の節目を迎えています。

現在一時的に休止中も、数席のカウンターで喫茶も可

言わずもがな和田さん自身は熱心な砂時計コレクター。その手元には、小学校低学年のときに手にして盛んにもてあそぶも、いつしか行き別れになったといういきさつのある一品が置かれています。現在に至る彼女の原点を作っている、初めて買ってもらった砂時計です。
3分計、4分計、5分計の三つがひと組みになっているこれは、とうの昔に失くして久しく、メーカー側も生産停止してしまい買い直すことも叶わなかったもの。ぬいぐるみのようにどこにでも持ち歩き、お父さんがひとたびトイレに入れば再び外に出るまでの時間を計ってみたり。何かにつけてこれで時間を計っては面白がっていたと言います。

「あれと同じものをどこかで誰かが持っていたりしないかな……。どうにかしてまたお目にかかれたら」と何年も前からことあるごとに回顧していたところ、そのことを憶えていた業界内の知り合いの工場担当者から「もしかしてこれ?」と見せてくれた商品箱がまさにヒット。コロナで一時的に生産量が著しく減少、ヒマですることもないからと倉庫内を抜本的に整理していると、和田さんの語る特徴に合致するものがたった一個だけ奥の方から出てきたという、なんとも幸運な再会を果たしています。
砂時計自体に宿る一種の物語性はものづくりに携わる人の心もやはり惹きつけるらしく、定期で開催する『砂時計展』でも、回を重ねるたびに、人づてに知り合った新たな絵描きや造形作家の作品が登場しています。砂時計が生活を、宇宙を、果たしてどのように結びうるか。それぞれに豊穣な世界観に触れられるお楽しみは年に一度限りです。

かと思えば、常日頃より筋トレに勤しんでいると思しきマッチョな男性が、ワークアウトの合間のインターバルを計るべく「30秒計、ありませんか」と店を訪れるようなことも。用途は何も純然たるリラックスタイムに限らないのです。
(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

サブリエ・ド・ヴェリエ

住所
東京都台東区谷中3-9-18
電話番号
03-5842-1400
営業時間
11:00~19:00
定休日
不定休
平均予算
[夜]~¥999 [昼]~¥999
最終更新日:2021.4.17
データ提供:食べログ
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