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あなうつくし、絹より出づる花鳥風月。つまみかんざしの「イシダ商店」

good mornings

公開日 2021年5月8日

成人式や七五三での和装に用いられるつまみかんざし。明治から続く職人家系の石田毅司(つよし)さんは高田馬場の自宅工房でこれを制作しています。現場の手前にはごく小さな博物館スペースも設けられており、毎週水・土限定にて公開中。

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絹糸でつくる平織物・羽二重(はぶたえ)は薄く軽やかにしてつややか。その質感は和装にみとめられる美しさのベースをなすものです。金属、べっ甲、珊瑚玉など素材も様々なかんざしの中でも装飾性の強いつまみかんざしは、この羽二重のきれをつまんでたたんだ一片を多数組み合わせることでできています。

普段着としての洋服の普及が進んだ昭和40年代以降、成人式や七五三の機会を除いてかんざしの出番は少なくなってしまったものの、百貨店の呉服売り場、和小物店、展示会以外にも職人の作品が間近で見られるちょっとしたスポットが実はあります。高田馬場のつまみかんざし博物館です。
イシダ商店の三代目・石田毅司(つよし)さんの手になる作品の一例がこの通り、自宅工房の手前のワンスペース限りとごく小さいながらお目見えしています。オープンは毎週水・土の午前10時から午後5時まで。ごく滑らかな絹の繊維をたどり細部へ細部へとつい目が行ってしまうあたりが、盆栽を見るときにも似た引力を覚える世界です。

花や草木ほか、あらゆる自然の風物を題材に作られるつまみかんざし。全国を通じて今や15人にも満たない数の職人のひとりである石田さんは、明治に祖父の代が始めて以来の技術を今に受け継ぎ、日々制作を続けています。
タテヨコおよそ2センチ大に切り分けた羽二重をピンセットでつまんでたたんで、丸みを帯びた「丸つまみ」へ、あるいは尖った「角(かく)つまみ」へ。これら二種の加工が施された布きれが完成物のいってみれば細胞にあたる部分であって、これを多数寄せ集め・組み合わせることによってあるときは花に、ある時は鳥になったりするのです。

正方形を半分に折って三角形に。そこから再度半分に

板に糊を薄くのばし、つまんだ布を並べて糊を染み込ませる

段ボール紙と針金で作った「台紙」に糊の染み込んだ布をつけて花をつくる

舞妓さんや七五三を連想させるこんなストレートな愛らしさの一品こそなじみ深いものの、工房内には「つまみかんざし歳時記」とでも呼ぶべきふたつの作品群も大切に保管されており、つまみかんざしに出来うることの全てがこれを以って示されているかのような多彩な美しさを備えています。

睦月(一月)から師走(十二月)まで、各月に特有のモチーフが息を呑むような造形美へと昇華された12点がふたセット。先代である父・健次さんが40年近く前に手掛けた一式、そして後年毅司さんが手掛けたもう一式からなります。

睦月(一月)の松

如月(二月)の梅つくし

神無月(十月)の菊。以上三点、健次さんの作

草木染めされた生地の色味の繊細さ。また、よらずに仕上げられひときわ輝きある極天糸(ごくてんいと)を針金に巻きつけて作る各種パーツの芸の細かさも。

結果、できるカタチは変幻自在にしてかくも美しいのです。

毅司さんの歳時記から。白鶴はサイズの小さなきれを多用していればこその見栄え

あやめ。染色の妙

つまみに限らずあらゆる工程が自前なだけに、ひとりの仕事師の着想から技術までが純度高く結晶を結ぶのが、つまみかんざしの世界。

8月から11月初旬までの七五三、その後の成人式や卒業式などに限らず、より裾野ひろくその美しさを目にし、これが認知される機会が増えることを願ってやみません。


(文:古谷大典)
(写真:小島沙緒理)

イシダ商店

住所
東京都新宿区高田馬場4-23-28 ヒルズ ISHIDA 401号
電話番号
03-3361-3083
最終更新日:2021.4.14
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