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神保町の愛すべき小道「さらみひょうぞう」って? シャンソン流れる名喫茶店、『ラドリオ』

神田神保町の裏道にひっそりと看板を出している喫茶店「ラドリオ」。1949年創業のこの喫茶店は、日本で初めてウインナーコーヒーを出した場所としても有名。シャンソンが流れるまったりムードのなか、創業68年になるラドリオの話、名物だった初代ママの話など、店長の池本奈美さんに聞いてきました。

公開日 2017年5月15日

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神保町駅
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good mornings
神保町の愛すべき小道「さらみひょうぞう」って? シャンソン流れる名喫茶店、『ラドリオ』

文化人が集まる山小屋風の喫茶店

本の街・神保町と喫茶店の相性は最高にいい。この街に集まる人にとって喫茶店は、本を探し歩いて疲れた時にほっと一息つく休憩所であって、ようやく出会えた一冊をすぐに開いて読めるリビングのような存在でもあるし、時には仲間と熱い議論を交わすサロンにもなる。
靖国通り沿いにある書泉グランデの裏道に佇む「ラドリオ」も、1949年の創業からずっとこの街と人を見つめ続けてきた喫茶店。扉や煉瓦壁の外観は古くて重厚で「自分なんかが入って良いのかな?」なんて気持ちになるけれど、中に入るとなんだか温かい、懐の深い雰囲気が漂っている。
「創業当時、こういった山小屋風の内装が流行っていたんだそうです。ご近所の『さぼうる』さんもそうなのですが、柱や煉瓦を使ったハーフティンバー方式と言う様式で造られています。装飾がとても細かくて、カウンターの中の作り付けの木製の扉や、棚の縁などにも凝った飾り彫りがしてあります。外国人のお客様も、“beautiful!”と言って、写真を撮っていかれますね」と話すのは、ここで働いて10年になるという店長の池本奈美さん。10年でもすごいなと思ってしまうけれど、ラドリオはなにせ創業68年目。長年この店に通う常連さんが、池本さんにとって神保町の大先輩だ。
「学生の頃から来ていたというお客さんもいらっしゃいますし、昔のラドリオのことや、街のことをいつも教えてもらっています。ラドリオはもともと洋書屋さんをやっていたオーナーが、文化人が集まって話せる場所を作りたくて開いた店。昔は作家さんや詩人さん、うちのマッチ箱の絵を描いてくれた彫刻家の本郷新さんなどのたまり場だったそうです。」

作家の逢坂剛さんがラドリオで直木賞の連絡待ちをしたというのは有名な話。ここで受賞の電話を受けた逢坂さんは、その場でワインを開けてみんなにふるまったんだそう。そういった先人たちが過ごした時間のすべてが壁や柱に染み込んで、この“古き良き”空気ができている。それが、ラドリオの一番の魅力なのではないかなと思う。

初代・愛子ママとウインナーコーヒー

ラドリオの店内にシャンソンがかかっているのは、初代ママ“愛子さん”の影響。愛子さんの引退後は別の音楽を流すこともあったが、池本さんが店長になってからはまたシャンソンを流している。
「平成10年くらいに愛子さんは引退されたのですが、いまも彼女を訪ねてくる方が多く、すごい方だったんだなって思います。一度、愛子さんが70代の時に特集されたドキュメンタリー番組を見たのですが、可愛らしい少女のような可憐な方で。皆さんの憧れの存在だったんじゃないかなって思います。」

そんな愛子さんが始めたのが、コーヒーにボリュームたっぷりのホイップクリームを浮かべたウインナーコーヒー。
今ではほかの店で見ることも多いが、日本ではラドリオが一番最初に出し始めたと言われている。その理由も、とっても神保町らしいものだった。
「お話に夢中になったり、本を読んだりするお客さんが多いので、コーヒーが冷めちゃうんですね。だからホイップクリームで蓋をして、冷めにくくしようという愛子さんのアイデアだったそうです。今ではうちに来るほとんどのお客さんが注文する名物メニューになっています。」

そのほか、ランチメニューで人気なのがナポリタン。喫茶店好きとして知られ数々の著書も出版している難波里奈さんが、「東京で一番おいしい」と言ったことで人気に火が付いたそう。池本さんいわく、一般的なナポリタンよりも麺が硬めで、タバスコと黒胡椒を効かせたピリッとスパイシーな大人の味がクセになるんだとか。

姉妹店・ミロンガも連なる「さらみひょうぞう」よ永遠に

ラドリオのはす向かいには、同じオーナーが開いたタンゴ喫茶「 ミロンガ・ヌオーバ 」がある。神保町駅から「さぼうる」、「ラドリオ」、「ミロンガ」、居酒屋の「兵六」、「三省堂」と連なるこの小道は、神保町の昔の姿を残す愛すべき小道。ある作家はこの小道のことを、店の頭文字を取って“さらみひょうぞう”と呼んだとか。

「ミロンガはコーヒーもペーパードリップだし、BGMはレコードでスピーカーも良いものを使っているので、うちよりも洗練されている気がします(笑)。とっても良いお店ですよ。神保町はずいぶんと開発が進んで、個人経営の喫茶店もずいぶん少なくなりました。ビルも多いし、人の流れも変わりましたが、この小道はうまい具合に時代から取り残された感じが良いですよね。本当はここもビルを建てたほうがいいんでしょうけど…なるべく、残っていったらいいなと思います」と話す池本さん。街の思い出を記憶が詰まった大切な小道。街がどんなに変わっても、ここに戻れば懐かしい神保町に会えるのだ。
(文:井上麻子)
(撮影:丸山智衣)

ラドリオ

住所
東京都千代田区神田神保町1-3
電話番号
03-3295-4788
営業時間
月~金 11:00~22:30、土日 12:00~19:00
定休日
祝日、年末年始
平均予算
~¥999
最終更新日:2017.5.8
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※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。

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