ちくわ。 おでかけ情報

炭火焙煎の珈琲とタンゴで哀愁に浸る。東京唯一のタンゴ喫茶、『ミロンガ・ヌオーバ』

神保町の裏道に佇む東京唯一のタンゴ喫茶。日本のタンゴ全盛期に誕生してから60年以上愛されるこの店には、おいしい炭火焙煎コーヒーと世界のビール、そして大きなスピーカーから流れる哀愁たっぷりのタンゴが響き渡る。とはいえ迎えてくれるのは気さくなスタッフと常連さん達。古き良き神保町の姿をいまに伝えてくれる、素敵な喫茶店なのだ。

公開日 2017年5月16日

カテゴリ
デート
一人で
友達と一緒
グルメ
街を知る
エリア
神保町駅
ライター
good mornings
炭火焙煎の珈琲とタンゴで哀愁に浸る。東京唯一のタンゴ喫茶、『ミロンガ・ヌオーバ』

大きな木のテーブルが常連さんの特等席

喫茶店「ラドリオ」の斜向いにある「ミロンガ・ヌオーバ」は1953年創業。ラドリオと同じオーナーが、タンゴ喫茶としてオープンした。“珈琲と世界のビール”と書かれたなんとも良い味の看板の下にある扉を開けると、木で出来た分厚い大テーブルがどーんと配置された、ゆったりと開けた空間が広がる。棚にはレコードが並べられ、アルデック社製の巨大なスピーカーから古いアルゼンチンタンゴが。迎えてくれた店主の浅見加代子さんは、とってもフレンドリーだ。
「この大きなテーブルは95年に改装した時に入れたもの。生木だったので、随分と味が出てきました。うちはカウンターがないんですが、常連さんはここの端っこに座って、キッチンにいるスタッフと話を楽しむ方が多いです。また、出版社が多いので打ち合わせに使ってもらったり。古いお客さんはもちろん、タンゴや音楽好きの方が国内外から来てくださったり、週末は観光客や若い方も多いですね。ビールも取り揃えているので、仕事帰りに一人で一杯飲み来てくださる方も増えました。私も自分の家の近所にミロンガがあったら良いのに…なんて思います(笑)」。
世界のビールは常時30種。また、コーヒーは炭火焙煎の豆を使って、一杯ずつペーパードリップで淹れる。最近は浅煎りの豆が主流になりつつあるけれど、ミロンガのコーヒーはしっかりとローストした味がして、後味はとてもすっきり。ドリップする時に使うケトルもなんだかレトロで、ムードにぴったりだ。
フードで人気なのは、「ピザ・ミロンガ」。ふんわりとした生地にトマトソース、サラミ、ゆで卵がのった、ザ・喫茶店のピザといった感じが存分に味わえる。

「タンゴは哀愁」、新しい音楽の扉が開くかも?

“タンゴ”と聞くとダンスのイメージが強く、情熱的な音楽なんだろうなと思っていたら浅見さんが「タンゴは哀愁です!」と一言。浅見さんはもともとシャンソンが好きだったが、リズムや国が違っても、その2つは雰囲気がよく似ているらしい。
「タンゴは“センティミエント(心・感情)”、心の歌なんです。もちろん情熱もあって明るい曲調もありますが、歌詞を見ていると『女にフラれた』『もう生きていけない』みたいな言葉が多くて、日本で言う所の演歌です。シャンソンに通じるところも多くて、シャンソン歌手がタンゴを歌うこともあるし、タンゴをシャンソンにしている曲もあるんです。だからどちらも好きという方も多いですよ。」
日本では1960年代に黄金期を迎えたタンゴ。当時からミロンガはタンゴ愛好家が集まる場所であり、著名な演奏家が訪れることもあったそう。その証拠に残されていたのが、明治大学タンゴ研究会が発行していた「FELICIA」という冊子。今で言うZINEのような感じで、ガリ版で刷られたページに手書き文字がびっしりと書かれている。
「明治大学や中央大学に当時はタンゴ研究会があって、そこの学生さんもよく訪れてくださっていたようです。今もここでOB会が開かれたりするのですが、結束力が本当に強い(笑)。当時はタンゴの生演奏が聴ける店や、うち以外にもタンゴ喫茶がたくさんあったほど、タンゴが流行していたそうです。昔ミロンガに通ってくださっていた方が、昔を懐かしんできてくださるのはもちろん、タンゴに関わる方が国内外から来てくださったり。“タンゴ”というキーワードで、いろいろな方がこの店に集まってきてくださるのは、うれしいですね。」
店でかけているタンゴのレコードは、常連さんがプレゼントしてくれたものもたくさんあり、なかには常連だったお客さんの遺族の方が「この店が好きだったので置いてください」と寄贈してくださることもあるのだとか。
店の端に、透明なケースに入ったいかにも高級そうな楽器を見つけた。これは、タンゴの花形であるバンドネオンだ。浅見さんいわくとても古くてレアなものなのだそうで、細かく入った螺鈿など装飾もとてもきれい。

「これもお客さんから寄贈していただいたもの。ドイツ製なんですが、戦前のものなので今はなかなかない見ることができません。音は鳴るのですが、調律にすごくお金がかかると言われて…ここで静かに置かせてもらっています(笑)。」

憧れのラドリオと神保町の思い出

ミロンガで働いて15年目になるという浅見さんは、実はもともとラドリオのスタッフだったそう。学生時代からよく通っていたこの街で、コーヒーを淹れる仕事がしたいと、憧れのラドリオの扉を叩いた。

「学生時代から本が好きで、神保町に通っていました。斜向いのラドリオはずっと憧れの店で、ちょうど仕事を探していたタイミングで求人の張り紙を見つけたので、その場で電話をかけた記憶があります(笑)。あの空間すべてが好きですね。」

「いまは従業員になっちゃったので、なかなかプライベートで行けなくなって少し悲しいですが、ミロンガの店長として、神保町を見守り続けられるのが幸せです。昔は土日の神保町って閑散としていたのですが、ビルが建って飲食店が増え、ずいぶんと街が変わりましたね。ミロンガもラドリオも、建物が心配なのですが、それが続く限りは、ずっと続いていけたらいいなと思います。」
そう語る浅見さんの言葉からは、神保町愛をしみじみ感じる。

お客さんもスタッフも、この街とお店を愛する人々が、次の世代にその魅力を伝えていってくれたらと思う。
(文:井上麻子)
(撮影:丸山智衣)

ミロンガ・ヌオーバ

住所
東京都千代田区神田神保町1-3
電話番号
03-3295-1716
営業時間
[月~金] 10:30~22:30(L.O.22:00) [土・日・祝] 11:30~19:00(L.O.18:30)
定休日
年末年始
平均予算
[夜]¥1,000~¥1,999[昼] ~¥999
最終更新日:2017.5.8
大きな地図で見る

※紹介されている情報は、記事公開当時の内容となります。
※飲食店情報の平均予算は、食べログの店舗基本情報を引用しています。

同じスポットが紹介されている別の記事